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  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第13 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 工事

工事費の積算当を得ないもの


(2085) 工事費の積算当を得ないもの

(組織)建設本省 (項) 鬼怒川外2河川総合開発事業費 ほか1科目

 東北地方建設局で、昭和28年4月から29年7月までの間に、随意契約により岩手県猿ヶ石川田瀬堰堤防水壁および監査廊排水孔のせん孔工事を5回に分けて社団法人日本産業再建技術協会に工事費合計22,828,000円(うち国0.7994負担18,248,703円、電源開発株式会社0.2006負担4,579,297円)で請け負わせたが、工事費の積算が適正を欠いたため約238万円高価になっている。右工事は、えん堤基礎部の漏水防水壁のせん孔等を行うもので、同協会に27年9月6,295,000円で請け負わせた工事に引続き施行したものであるが、これに要する電力および試すい機5馬力4台、給水ポンプ1台、労務者宿舎3むね(延60坪)を無償で提供し、試すい機の能力を1日8時間作業して4台で7.2メートル(1台当り1.8メートル)をせん孔することとして1メートル当り1,800円とし、また、この諸経費は21.62%から23.26%平均22.7%4,224,127円と積算し予定価格総額22,845,600円と定め前記のように契約したものである。

 しかし、本件工事は、同一工事を6回に分割して施行したもののうち第2回以降の分について同協会に請け負わせたものであるから、その契約にあたっては当然第1回の実績を勘案して工事費を積算すべきものと認められ、第1回工事施行の状況をみると同協会は請負額から1,259,000円を差し引いて5,036,000円で不二ボーリング株式会社に一括請負に付しており、また、契約上提出することとなっている作業報告による作業の実積をみても、試すい機の能力は1日8時間作業して4台で8.13メートルをせん孔し、労務者数においても設計で5,900名を要することとしたものは3,900名を使用したにすぎないものであるのに、これらを考慮しないで積算したため高価に失したものと認められる。
 いま、本件工事実施の状況をみると、第1回工事と同様に同協会はこれを不二ボーリング株式会社に契約金額から4,487,595円を控除して一括下請に付しており、また、下請者の実績についてみると、そのせん孔は1台1時間当り37センチメートルから60センチメートル程度であり、これを1日8時間作業として計算すると、試すい機4台で8.8メートル程度をせん孔していて、その経費は下請額の93%程度で完成している実情である。いま、このせん孔を8.5メートルとしてメートル当りの経費を計算すると1,660円で足りたものである。

 また、諸経費についてみると、本件工事は前記のように全く同種の一連工事であるから、電力、機械その他施設等を無償で提供し、しかも一括下請に付している事実および同協会の経営状況等を勘案して決定すべきであるのに、これらのことを考慮しないで平均22.7%としているが、いま、地理的条件その他の条件が類似している北海道における直轄工事の諸経費に比べると本件の場合は17%程度が適当と認められる。
 いま、仮に前記のように工事費をメートル当り1,660円とし、さらに純工事費に対する諸経費率を17%として算出すると工事費は合計20,447,000円となり、請負額22,828,000円に比べて約238万円は少なくとも節減することができた計算となる。