ページトップ
  • 昭和29年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第13 建設省|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの


(2087)−(2200) 公共事業に対する国庫負担金等の経理当を得ないもの

(組織)建設本省 (項)河川等災害復旧事業費 ほか8科目

 地方公共団体が施行した災害復旧等の工事に対する国庫負担金または国庫補助金(以下「国庫負担金」という。)は、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等の根拠法規に基いて交付されたものであるが、本院において全国の工事現場43,784箇所のうち青森県ほか10府県を除く35都道府県につき13.2%に相当する5,765箇所を実地に検査したところ、関係当局の指導監督の強化、事業主体の自覚によって不当事項は前年度に比べ相当減少してはいるが、なお、架空工事、二重査定、設計に対し工事の出来高が不足しているもの、設計が過大なもの、工事の施行が粗漏で補助の目的を達していないもの、災害復旧とは認められない改良工事を施行しているものなどがあり、国庫負担金を除外すべきことの判明したものが、北海道ほか31府県において、除外すべき額1工事10万円以上のものをあげると231工事86,698,522円に上っていて、これを事項別に分類して示すと次表のとおりである。

類別
道府県名
架空、二重査定、改良その他補助の対象としてはならない工事 工事の施行が粗漏で目的を達していないもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの 事業主体が正当な自己負担をしていないもの
類別
道府県名
工事の施行が粗漏なもの 工事の出来高が不足しているもの 工事の設計が過大なもの その他
工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額 工事数 金額

北海道



3

2,297,260

5

1,474,578





2

611,600



4

1,268,320

14

5,651,758

北海道
秋田〃 1 1,579,456 2 1,209,843 4 585,572



2 679,638



9 4,054,509 秋田〃
福島〃



1 141,333









1 141,333 福島〃
茨城〃



1 161,675









1 161,675 茨城〃
栃木〃



2 462,898









2 462,898 栃木〃
埼玉〃



1 120,000









1 120,000 埼玉〃
神奈川〃



1 274,500









1 274,500 神奈川〃
新潟〃

1 336,942 1 132,066



1 163,765

2 365,876 5 998,649 新潟〃
富山〃 1 579,082 1 293,776 2 488,223



2 694,044



6 2,055,125 富山〃
福井〃 1 856,766









1 217,686

2 1,074,452 福井〃
長野〃



3 647,142



2 363,924

1 182,091 6 1,193,157 長野〃
岐阜〃



1 160,765







1 243,455 2 404,220 岐阜〃
静岡〃



5 946,077



1 502,275

1 238,259 7 1,686,611 静岡〃
愛知〃 1 2,496,924

2 364,800



3 904,051



6 3,765,775 愛知〃
三重〃 1 192,780 1 7,027,200 1 226,113 1 839,563

2 220,801



6 8,506,457 三重〃
滋賀〃



4 1,338,648



1 186,400



5 1,525,048 滋賀〃
京都府 3 8,961,890

4 1,110,004







1 104,082 8 10,175,976 京都府
兵庫県













2 658,062 2 658,062 兵庫県
奈良〃 1 207,366







1 544,385

1 188,700 3 940,451 奈良〃
和歌山〃 4 2,480,095

3 942,081 1 420,500 2 5,149,505 7 4,183,599 1 383,553 2 419,729 20 13,979,062 和歌山〃
島根〃



3 411,978



2 323,482



5 735,460 島根〃
岡山〃





1 117,000





2 327,026 3 444,026 岡山〃
広島〃 3 670,748













3 670,748 広島〃
山口〃



2 513,318



3 2,796,434

9 3,606,086 14 6,915,838 山口〃
徳島〃 1 153,644







2 346,961



3 500,605 徳島〃
愛媛〃



5 788,420



14 4,002,491 2 727,260 14 2,416,111 35 7,934,282 愛媛〃
高知〃



1 115,326



1 121,600 1 537,805 2 289,379 5 1,064,110 高知〃
福岡〃



3 667,581



5 729,953 2 704,653 5 759,566 15 2,861,753 福岡〃
熊本〃



9 1,384,569



5 1,048,827



14 2,433,396 熊本〃
大分〃



3 657,026



4 804,194

4 690,672 11 2,151,892 大分〃
宮崎〃 3 396,198

1 330,666



2 358,399

2 267,094 8 1,352,357 宮崎〃
鹿児島〃

1 470,400 7 1,333,937









8 1,804,337 鹿児島〃
合計 20 18,574,949 9 11,635,421 75 15,779,296 3 1,377,063 2 5,149,505 62 19,586,823 7 2,570,957 53 12,024,508 231 86,698,522   計

 この種不当事項については、従来検査報告において多数指摘したところであるが、本年度においても、市町村が施行した工事について全面的にその工事の実施状況と工事費精算額の当否を重点的に検査し、あわせて都道府県が施行した工事についても検査した結果、市町村が施行した工事においては、表面上は競争入札等により工事を実施設計額と同程度の額で請け負わせ施行したこととして国庫負担金の交付を受けているが、実際はこれより低額に請け負わせ施行し正当な自己負担をしていないものがあり、このように実際上の工事費が不当に少額となったため工事の出来高が不足したり、工事が粗漏で災害復旧の目的を達していないものもある。
 一方、実施設計が現地に適合せず、その結果積算が過大となっているのに同設計額をもって請け負わせたこととし、実際は国庫負担金相当額程度で工事を施行し自己負担を免かれているものも多い。ことに、高率の国庫負担率が適用された工事について、前記のように事業主体が正当な自己負担をしないばかりでなく、かえって国庫負担金に剰余を生じているものもある。また、県工事においては、直営で施行した工事の人夫賃等に付掛けして資金をねん出し他の工事費等に充てているもの、監督検収が不十分なため工事が粗漏となっているものが見受けられたのは遺憾である。

 なお、設計に対し工事の出来高が不足している場合に返納または減額に代えて手直しまたは補強工事をするとしているもののうちには、さらに検討すれば現在の出来形でも間に合いことさら手直しまたは補強工事をしないでも済むと認められるものもあるので、このような場合は、返納または減額させることが妥当と認められ、事後処理にあたっては適正を期するよう一層の配慮が望ましい。
 検査の結果明らかになった不当事項231工事のうち、国庫負担金を除外すべき額1工事20万円以上のものをあげると別表第7のとおり114件69,913,326円になっており、そのうち代表的な事例は次のとおりである(各項末尾の( )内の数字は別表第7に掲記した番号を示す。)。

(1) 秋田県が4,428,000円(国庫負担金3,214,728円)で施行した鹿角郡毛馬内町小坂川26年災害復旧は、護岸延長130メートルの根固木工沈床696平米に使用したコンクリートブロック1,566個を50センチメートル角、高さ50センチメートルまたは75センチメートル、配合比1:4:8で施行したこととしているが、実際は玉石を混入した著しく粗悪なコンクリ−トで施行しているため、全面的にき損しておりその一部は既に崩壊している。
 また、から石張396平米は控の不足している張石をその4割程度使用しているばかりでなく施行が粗雑で容易に抜き取れる状況である。(粗漏工事)(2098)

(2) 同県北秋田郡前田村が3,500,000円(国庫負担金2,334,500円)で施行した村道、湯の岱線湯の岱橋28年災害復旧は、28年4月の災害により流失した木橋の復旧について机上査定を受け幅員3.6メートル、延長74メートルの木橋を架設したものであるが、原形は幅員2.2メ−トル、延長38メートルの木橋にすぎなかったばかりでなく接続する道路の状況からみても原形復旧で足りたものである。(改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの)(2102)

(3) 富山県中新川郡上市町(旧白萩村)が622,000円(国庫負担金579,082円)で施行した村道東種千石線28年災害復旧は、道路延長18メートルに路側練石垣176平米を28年8月着工、9月完成したこととしていたが、実際は白萩村森林組合が農林省所管林道東種線27年災害復旧として800,000円で28年6月着工、29年1月完成したものであるのに、農林省所管工事の着手後である28年7月に同一箇所につき別途建設省所管工事として県知事あて着手承認申請を提出して、対象のない工事に対し国庫負担金の交付を受けたものである。(架空工事)(2111)

(4) 愛知県が施行した東春日井郡高蔵寺町庄内川24年災害復旧は、29年10月から30年3月までの間に、直営で延長142メートル、幅14メートルの練石張床固工を施行し、工事費23,499,202円(国庫負担金15,673,967円)を要したこととしているが、実際は19,755,687円で足りたものであるのに人夫賃に付掛けして3,743,515円をねん出し、うち490,216円を30年5月までの間に他の県直営の災害復旧工事、県労働者指導訓練所の人夫賃等に充て30年5月本院会計実地検査当時残金3,253,299円を預金で保有していたものである。(改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの)(2123)

(5) 三重県が7,200,000円(国庫負担金7,027,200円)で施行した阿山郡島ヶ原村木津川流域木戸川水源砂防堰堤28年災害復旧は、高さ13メートル、長さ43メートルのえん堤を玉石コンクリート1,512立米で施行したこととしているが、く体の内部は土砂または多量の粗石を混入した粗悪な粗石コンクリートで施行したもので工事が著しく粗漏となっている。(粗漏工事)(2129)

(6) 京都府が京都市天神川26年災害復旧を復旧費173,607,789円に助成費276,000,000円を合わせ天神川水系災害土木助成事業として総額449,607,789円で施行しているが、右災害復旧費のうち、護岸延長1,542メートルの練積石垣1,542平米、延長120メートルの擁壁継足コンクリート453立米および延長432メートルの裏法から積石垣1,512平米を施行することとしているのは、いずれも被災の事実が認められない箇所で、また、たい積土砂2,396立米は応急工事で施行済のものを積算しているなど工事費9,358,000円(国庫負担金6,241,786円)は国庫負担の対象とはならないものである。(改良工事その他国庫負担の対象としてはならないもの)(2132)

(7) 和歌山県伊都郡見好村(旧天野村)が5,165,000円(国庫負担金5,149,505円)で施行した村道新城志賀線28年災害復旧は、道路延長600メートルに路側石垣849平米および土留石垣418平米を控30センチメートルの野づら石で、胴込コンクリート126立米、裏込ぐり石380立米を施行したこととしているが、実際は築石として控の小さい軟岩を使用し、また、胴込コンクリートおよび裏込ぐり石の施行量も設計量の3分の1程度を施行したにすぎないなど工事の施行が粗漏で、復旧の目的を達しているとは認められない。
 なお、工事は国庫負担金を下回る3,090,000円で施行しており、同村はその負担したとしている15,495円を全く負担していないばかりでなく2,059,505円の剰余を生じ、この剰余金は村単独の工事費に充てている。(粗漏工事、事業主体負担不足)(2144、2145)

(8) 同県日高郡川中村が8,000,000円(国庫負担金7,968,000円)で施行した村道老星佐井線28年災害復旧は、道路延長372メートルの練積石垣1,658平米に裏込コンクリート271立米、裏込ぐり石695立米を施行したこととしているが、実際は裏込コンクリートは全く施行せず、裏込ぐり石は344立米を施行しただけで、また、石垣は法長が不足しているため1,599平米を施行したにすぎず工事費1,991,000円(国庫負担金1,983,036円)が出来高不足となっている。
 なお、工事は国庫負担金を下回る6,815,900円で施行しており、同村はその負担したとしている32,000円を全く負担していないばかりでなく1,152,100円の剰余を生じたこととなっている。 (出来高不足、事業主体負担不足)(2153)

(9) 山口県岩国市(旧通津村)が60,271,000円(国庫負担金58,825,091円)で施行した長野川26年災害復旧ほか3工事は、実際は国庫負担金を下回る56,231,000円で施行しており、事業主体はその負担したとしている1,445,909円を全く負担していないばかりでなく2,594,091円の剰余を生ずることとなっている。
 右工事のうち長野川26年災害復旧は、護岸延長2,128メートル、帯床工21箇所を復旧するもので、練積石垣2,539平米のうち699平米は胴込コンクリート104立米、帯床工は直高1.5メートルの玉石コンクリート289立米を施行したこととしているが、実際は胴込コンクリート34立米、帯床工直高1メートルで玉石コンクリート171立米程度を施行したにすぎないなど工事費640,000円が出来高不足となっている。(出来高不足、事業主体負担不足)(2163−2165)