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  • 昭和29年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 不当事項|
  • 工事

予定価格の積算が当を得ないためひいて工事費が高価となったと認められるもの


(2211)−(2213) 予定価格の積算が当を得ないためひいて工事費が高価となったと認められるもの

 日本国有鉄道において、土木、製作その他の工事を行う場合においては公開競争契約によらず指名競争契約または随意契約によることが多く、その契約も予定価格に近い価額で締結されているものが多い状況で、とくに適正な予定価格の算定が必要と認められるが、次のように作業の実態は握が十分でないなどのため実情に即した合理的な積算が行われず、ひいて契約金額が高価となっていると認められるものがある。

(西名古屋港水平引込式橋型起重機のすえ付工事費が高価と認められるもの)

(2211)  日本国有鉄道名古屋鉄道管理局で、昭和29年12月、随意契約により住友機械工業株式会社に名古屋港用品庫西名古屋港配炭所水平引込式橋型起重機新設その1工事を8,320,000円で請け負わせているが、予定価格の積算にあたり作業の実態は握が十分でなかったなどのため工事費が少なくとも約143万円高価となっているものと認められる。
 右工事は、29年3月、日本国有鉄道資材局が前記会社に85,155,600円で製作させ購入した3トンクラブバケット付水平引込式橋型起重機の西名古屋港10号地埠頭据付を同会社に請け負わせたもので、日本国有鉄道名古屋工場および旧札幌鉄道局が既往に実施した跨線テルファおよびマントロ式橋型起重機のすえ付工事費の積算内容を参考として予定価格を8,324,364円と積算しているが、予定価格の算定にあたり、本件すえ付作業の実態を十分は握することなく、また、工事施行者から見積内訳書を徴して積算資料とするなどの配意もなかったため、その積算は合理性のない過大なものとなっていて、次のとおり工事費が少なくとも約143万円は高価となっているものと認められる。

(1) 工事用電力を1日当り780キロワット時、工事期間100日で計78,000キロワット時、調整試験用電力を39,000キロワット時合計117,000キロワット時を要することとして、この料金相当額706,118円(一般経費23%を含む。)の電力費を積算しているが、工事のための電力使用はすえ付のための部材の引上げ、電気溶接等に使用するにすぎないものであるから、工事の全期間を通じ終日相当量を使用することとしているのは著しく作業の実情と相違するものである。現に、本件工事に使用した電力量は総量13,241キロワット時207,305円(一般経費23%を含む。)にすぎず、103,759キロワット時498,813円(一般経費23%を含む。)は過大な積算となっている。

(2) 工事所要人工の算定にあたり、すえ付作業所要人工5,293人のほかにこの宿泊料および旅費相当額1,056,004円(一般経費23%を含む。)の換算人工1,600人を計算して計6,893人を積算しているが、そのうち作業員の宿泊経費については、別途仮設費等でその所要額が積算されているのであるから、この換算人工1,421人に対する工賃相当額935,415円(一般経費23%を含む。)は積算の要がなかったものである。
 なお、直接作業人工として積算した5,293人工は、本件すえ付作業の実情に即した合理的な計算によって算出されたものではなく単なる推定によったものであるが、当局の調査による施行者の実績に比べその賃金差を考慮してもなお相当過大と認められ、妥当な積算ということはできない。 

(電車電動機車軸受金の製作費が高価と認められるもの)

(2212)  日本国有鉄道関東地方資材部で、昭和29年9月から30年2月までの間に、公開競争契約によりアロネット工業株式会社に電車電動機車軸受金830組を単価4,900円総額4,067,000円で製作(台金支給)させているが、予定価格の積算にあたり、材料所要量の計算を誤ったなどのため約64万円高価となっているものと認められる。
 右は、同地方資材部で支給した鉄製台金の内面に半田メッキした20メッシュ銅網5枚重ねを圧縮して取り付け、ホワイトメタルを2ミリメートルから2.5ミリメートルの厚さに鋳込んで車軸受金を製作させるもので、その予定価格の積算にあたり、材料費を1組当りホワイトメタル5.3キログラム1,351円、銅網幅3尺、長さ4.6尺1,361円としているが、ホワイトメタルの所要量を銅網および半田の体積と重複して計算したため1組当り1.35キログラム総計1,120キログラム価額331,443円が過大な積算となっており、また、銅網の所要量は工作上のロス30パーセント程度をみても1組当り10.5平方尺程度で足りるのにこれを13.8平方尺としたため1組当り3.3平方尺総計2,739平方尺価額313,491円が過大な積算となっている。

(根室本線軌条更換工事の工事費が高価と認められるもの)   

(2213)  日本国有鉄道釧路鉄道管理局で、昭和29年5月から30年2月までの間に、指名競争契約により北海道軌道施設工業株式会社に根室本線重軌条更換工事その2ほか3工事を総額20,868,782円で請け負わせ施行しているが、予定価格の積算が実情に沿わないため工事費が約390万円高価となっているものと認められる。
 右工事は、芽室、豊頃間41,830メートルの軌条更換およびその付帯作業を行うもので、この種工事については25年以降引続き前記会社に請け負わせ施行しているものであるが、予定価格の積算にあたり、日本国有鉄道施設局で作成した保線作業基準量をそのまま採用しているなどのため、次のとおり著しく過大な積算となっている。

(1) 軌条更換作業の所要人工の算定にあたり、同作業に含まれる12種目の作業の基準人工の合計をそのまま採用し、キロメートル当り線路工340人(人夫200人は線路工換算)としているが、前記保線作業基準量に定める各作業種目の基準人工は、各作業種目を単独に行う場合の所要人工であるから、本件軌条更換作業のように多種目の作業をあわせて一貫作業として行う場合には、右基準人工をそのまま採用することは適当でなく、作業の実情を十分考慮して所要人工を算定する必要があるもので、現に、日本国有鉄道旭川鉄道管理局等で行なった軌条更換作業の所要人工に比べその賃金差を考慮しても著しく過大となっている。
 いま、仮に所要人工を旭川鉄道管理局で前記会社に請け負わせ施行した石北線、安国るべしべ間重軌条更換工事(一部直営施行を含む。)の積算人工キロメートル当り253人(人夫は釧路鉄道管理局の換算率により線路工に換算)およびその賃金程度で積算したとすれば、労務費において約160万円が過大な積算となる計算である。

(2) 飯場費として全線路工延15,152人について1人1日当り230円総額3,484,960円を積算しているが、右230円のうち150円は主食および副食費であるから賃金のほかにこのようなものを積算する要はなく、これを除いて積算すると飯場費は総額約120万円となり、約220万円が過大な積算となる計算である。