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  • 昭和29年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
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  • 役務

特定業者に継続的に施行させる作業の単価が高価と認められるもの


(2219)−(2220) 特定業者に継続的に施行させる作業の単価が高価と認められるもの

随意契約により特定業者に継続的に施行させている作業等の施行単価の決定にあたっては、作業の実情および費用の実績を十分調査して実情に即した適正な契約単価を決定する必要があるが、この考慮を欠いたため施行者の費用の実績等に比べ著しく高価な作業代金を支払う結果となっているものが次のとおりある。

(自費電気設備検査請負代金が高価と認められるもの)

(2219)  日本国有鉄道東京鉄道管理局で、昭和29年度中、随意契約により株式会社鉄電社に自費電気設備の検査業務を請け負わせ、その作業代金として4,865,819円を支払っているが、過年度の実績を勘案して施行者の作業および費用の実情に即した単価で契約したとすれば約178万円低額に施行することができたものと認められる。 
 右作業は、常時日本国有鉄道から電気を供給している部外者の電気設備(白熱燈、扇風機、電熱器等16種目)の検査を実施するもので、従来同鉄道管理局で直接行なっていたのを27年度以降前記会社に施行させることとしたものであって、その作業料金については検査種目1件当りの技術員および技術掛の所要人工を0.00052人工から95人工と推定し、技術員については電工の職種別賃金最高額644円、技術掛については同鉄道管理局管内電力区電燈分区長の平均給与日額765円をそれぞれ適用して労務費を算定し、これに一般経費30%を加算して1件当り1,700円(配電盤細密)から40銭(配電線巡回)の作業料金を決定し、各種目の検査実績数量に応じて支払うこととし、前記作業代金を支払ったものである。

 しかして、この支払の対象とした種目別検査実績数量に対する所要人工を前記各種目1件当りの所要人工で計算すると技術員4,341人工、技術掛1,303人工合計5,644人工となるが、同会社が実際に要した人工は実員14名延3,536人工(支払人工の約63%)にすぎないばかりでなく、その平均給与額は技術員日額600円、技術掛日額700円程度で同鉄道管理局の積算とは著しく相違している。しかし、本件契約業務は随意契約により前記業者に独占的に施行させている特殊なものであるから、その契約単価は施行者の作業および費用の実情に即して決定するのが妥当であると認められるもので、29年度契約にあたっては、過年度の施行実績が同鉄道管理局の見込人工5,014人工に対し検査業務の実情によりその約68%に当る3,401人工にすぎなかったなどの事情を十分考慮して契約単価を決定すべきであったと認められるのに、単なる推定により作成した28年度分算定基準をそのまま適用して単価を算定したため前記のとおり著しく過大となったものである。
 いま、仮に28年度における実績を考慮し、実情に即した作業料金を定めて支払ったとすれば約308万円となり、前記支払額に比べ約178万円低額に施行することができた計算となる。

(砕石等の採集にあたり契約単価が高価と認められるもの)

(2220)  日本国有鉄道東京鉄道管理局ほか3箇所(注) で、昭和29年度中に、随意契約により東鉄工業株式会社ほか5名と砕石およびふるい砂利の採集運搬契約を締結し、砕石61,057立米、ふるい砂利37,073立米の施行代金として総額65,236,026円を支払っているが、生産量が予定生産量を相当量上回っているのに、増加数量に対しても当初単価で支払ったため約280万円高価な代金を支払う結果となっているものがある。
 右作業は、従来から引続き前記請負人に施行させているもので、相手方に対して日本国有鉄道所有設備を無償貸与したり、原石採集料や電力料を日本国有鉄道で負担したりしているなど、いずれも日本国有鉄道と特殊なつながりの下に作業させ、その生産量は全量を日本国有鉄道に納入させることとしているため、その契約単価は各作業場ごとにその費用の実情と予定生産数量を考慮して決定することとしていて、29年度においては7月以降立米当り砕石671円から803円、ふるい砂利517円から583円の単価でそれぞれ契約し施行させたものであるが、各作業場とも当初予定数量を1.8割から11割上回る数量を生産していて、前記契約単価は著しく不合理なものとなっている。すなわち、生産量が予定生産量に対し相当量増加する場合は、その施行単価が低減し、契約単価が不合理なものとなることは明らかであり、とくに本件契約は前記のように特異なものであるから生産量が予定生産量をこえた場合には、そのこえる数量について単価を改訂するなど実情に即した調整処置を講ずべきであったと認められる。
 いま、仮に各作業場ごとに予定数量をこえる数量についてその費用の実情に即した単価で契約したとすれば、前記支払額に比べ当局の計算によっても約280万円低額に施行することができた計算となる。

 (注)  東京、千葉、静岡各鉄道管理局、東京工事事務所