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  • 昭和29年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
  • 第3日本電信電話公社|
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  • 工事

工事の計画、施行が当を得ないもの


 (2224)−(2233) 工事の計画、施行が当を得ないもの

(款)建設改良費 (項)電信電話施設費 ほか1科目

 電信電話建設工事の施行にあたっては、建設資金の相当部分が電信電話債券等の借入金によっている現状であるから、資金の効率的使用をはかるためにも工事を必要とする時期および所要量について実情を十分は握し適確な将来の見通しをたて、これに基いて実施しなければならないのに、その実施状況をみると、事前の調査が不十分であったり、関連部門間に十分な連絡がとれていなかったり、工事施行に対する配意が万全でなかったなどのため不急の工事をしたと認められるもの、過大な施設となったもの、不経済な工事となったものなどがあり、また、工事の施行が当を得ないものも見受けられ、そのおもな事例をあげると次のとおりある。

 (不急の局舎を増築したため不経済となっているもの)

(2224)  日本電信電話公社で、昭和29年7月から30年6月までの間に、公正協議契約または随意契約により西松建設株式会社ほか4会社に第二青山分局開始のための青山電話局増築工事を総額137,495,600円(ほかに支給材料61,344円)で請け負わせ施行しているが、計画にあたり調査が十分でなかったため不急の施設となっている。
 右は、青山分局を20,000端子局とするため、局舎2,197.87平米を増築(工事費78,606,944円)し、これに現局舎を含めて温湿度調整装置を施行(工事費58,950,000円)したものであるが、現青山分局は、10,000端子局として28年に発足し、局舎増築工事着手前の29年7月における収容加入者は3,905名で、申込積滞も1,628名にすぎず、現局舎容量の10,000端子に対しては相当の余裕があった状況であり、また、現局舎の温湿度調整設備のために必要であるとしても、この設備は簡易施設として29年7月既に11,900,000円で設備しており、これを本施設に改良するとしても約320万円で施行することができるものであるから、本件局舎増築工事は取急ぎ施行する要はなかったものである。

 (不必要な予備電動発電機を設備したもの)

(2225)  日本電信電話公社関東電気通信局で、昭和29年6月工事費2,636,036円(ほかに貯蔵品使用額21,266,690円)で着工し、30年2月完成した横浜中央電話局鶴見分局の電力設備工事は、不必要な電動発電機を設備したため1,959,000円が不経済となっている。
 右は、同分局の電力設備容量が過少であるため、既設の充放電用20キロワット電動発電機2台を撤去し、新たに予備1台を含め40キロワット3台を設置したものであるが、充放電用としては2台を交互使用して所要の電流を十分まかなうことができるものであるから、さらに設備した予備1台は不必要なものである。この結果、電動発電機だけでも1,959,000円が不経済となっている。

 (工事の計画が過大に失したため不経済な結果となったもの)

(2226)  日本電信電話公社関東電気通信局で、昭和29年3月から12月までの間に、指名競争契約または随意契約により株式会社鈴木組に館林電報電話局新築その他工事を44,135,000円で請け負わせ、30年6月完成しているが、計画が過大に失したため約1200万円が不経済な結果となっている。
 右は、従来の同電報電話局の局舎が郵便局と共同の庁舎で使用坪数もわずかに54坪余にすぎないため、加入者896名のほかに加入希望者が250名あるのに局内施設の増設が困難となっていたので、局舎を新設するとともに交換方式を磁石式から共電式に改め加入希望者の消化をはかることとし、鉄筋コンクリート3階建延533.77坪の局舎を新築したものであるが、28年9月の調査によると、同電報電話局の15年後の加入者見込数は2,000名であるから、同公社の局舎設置基準によると387坪の局舎を建築すれば足りるものであり、同公社施設局長がこれにより28年12月関東電気通信局に対し387坪の工事認証をしたにもかかわらず、同電気通信局は独自の見地から前記533坪余の局舎を設計し、そのまま施行したもので著しく過大な施設となっている。
 いま、仮に本件工事を前記認証坪数により施行したとすれば、工事費において約1200万円を節減することができた計算となる。

(地下管路の敷設が過大に失したもの)

(2227)  日本電信電話公社関東電気通信局で、昭和29年11月、指名競争契約により協和電設株式会社に、港、神奈川局間中継線新増設土木工事を33,850,000円(ほかに支給材料76,565,940円)で請け負わせているが、計画が当を得なかったため10条敷設すれば十分であるのに20条を敷設し、半数が過大施設となっている。
 右工事は、横浜中央電話局管内港分局と神奈川分局との間に敷設する局間中継線800対2条を収容するとともに、将来同区間に増設する中継線または市外ケーブルを収容する目的で、本町線、桜木線および神奈川線の3幹線で構成された既設幹線から10メートルから300メートルの間隔で平行して新設1号マンホールから神奈川分局局前マンホールまでの3,835メートルの区間に20条の地下管路を新設したものであるが、その管路使用計画をみると、本管路に収容予定のケーブルは、本件港、神奈川局間中継線の2条、花咲線支障移転の1条、将来終局期までに増加を必要とする6条、予備1条を合わせた10条を計画した以外に、前記既設幹線から全収容ケーブル10条を移設するものとして、計20条を計画したものである。
 しかし、右のうち、既設幹線管路から収容替えする10条については、そのうち、桜木線1号マンホールから同13号マンホールに至る約1300メートルの区間が、将来道路拡張工事が行われた場合にはあるいは現管路上に市電軌道が移設されて管路廃止にいたるかもしれないという予想から、本区間ばかりでなく全区間ケーブルの収容替えを予想して敷設したものであるが、横浜市に近い将来このような道路拡張を実施する具体的計画がないのであるから、収容替えの必要はなかったものであって、予測を根拠として重要幹線を廃棄するというような計画を立て、工事を実施し、桜木線ばかりでなく全区間の移設を前提として20条を敷設したのは妥当な処置とは認められない。
 したがって、本件中継線管路は10条を敷設すれば十分足りたものと認められ、20条を敷設したため約4650万円(うち支給材料代約3828万円)のものが過大施設となっている。

 (設計が実情に即しなかったため過大な設備となったもの)

(2228)  日本電信電話公社東京電気通信局(元東京電信電話管理局)で、昭和29年2月、工事費36,557,048円で施行し、9月完成した東京丸の内地区電話局千代田分局の電力設備増設工事は、設計が実情に即しないことが着工前判明していたのにそのまま工事を実施したため、電動発電機が過大な設備となり約1170万円が不経済となっている。
 右工事は、本社の指示により、東京電気通信局で、前記千代田分局の端子増設工事に伴い既設蓄電池を全浮動方式に改造し、既設電動発電機80キロワット2台および160キロワット1台にさらに160キロワット1台の増設等を実施したものであって、本社において、28年3月の同分局の電力日誌による加入回線6,389における最繁時電流975アンペアを基準として、終局33,200回線における最繁時電流を5,000アンペアと算定し、これを基本として本件工事を設計施行したものであるが、28年3月以後通話のそ通をはかりとくに設備を改善したため、電力設備の設計の基本となる最繁時電流は当初の見込より少量で足りることを容易に判断することができたものであり、同電気通信局においても工事着工3箇月前の28年11月の記録(加入回線11,636で最繁時電流1,240アンペア)により終局時最繁時電流を3,370アンペアと算定することができた状況であるのに、本社においては、工事着工前に再調査を実施することなく、また、工事実施部局である同電気通信局でも設計変更の必要を本社に連絡しないで当初のままの設計で工事を施行したため過大設備となったもので、いま、終局時最繁時電流を3,370アンペアとして本件工事を設計すれば、電動発電機160キロワット1台の増設工事は施行の要がなかったものである。

 (温湿度調整装置を過大に設計設備したもの)

(2229)−(2232)  日本電信電話公社および同東海電気通信局で、昭和29年度中に、岐阜電話局ほか6箇所の温湿度調整装置工事を総額438,060,000円で施行しているが、温湿度調整装置は、自動交換機器のうちスイッチ類をじんあいと夏季の高温多湿から保護する目的で設備するもので、その設計にあたっては、局舎の面積、自動交換機器の端子数、電力機器の容量、電燈数等を基準として、除去すべき熱量、水分を適確には握計算しなければならないのに、この計算を誤ったり、また、必要のない室までも温湿度調整を行うなど、必要以上の過大な装置を設備したものが次のとおりあり、約6000万円が不経済となっている。

(2229)  日本電信電話公社で、昭和29年5月、公正協議契約により株式会社建材社に41,335,000円で請け負わせ施行した岐阜電話局温湿度調整装置工事は、139冷凍トン(米トン。以下同じ。)の冷凍機を設備したものであるが、この局舎は終局における自動交換機器を設備するスペースを見込んでいるのであるから、温湿度調整装置はこの現局舎を対象として設備すれば十分であるのに、適確な計画もないまま将来の増築をも見込んで温湿度調整の対象となる室の面積を755平米過大に見積り、これに伴い自動交換機器の端子数で約6000端子、電力機器の容量で170キロワット、電燈数で94燈分過大に見積ったため、必要以上の容量の冷凍機を設備する結果となっている。
 いま、適正な数値で計算すれば冷凍機は80冷凍トンのもので足りるものと認められ、これを設備したとすれば本件工事は約700万円を節減することができたものである。

(2230)  日本電信電話公社東海電気通信局で、昭和29年3月、指名競争契約により理研機械株式会社に22,450,000円で請け負わせ施行した名古屋中央電話局東分局温湿度調整装置工事は、74冷凍トンの冷凍機を設備したものであるが、設計に際し調査不十分なため計算を誤り、自動交換機器の端子数を1,000端子、電燈数を245燈分過大に見積ったため、必要以上の容量の冷凍機を設備する結果となっている。
 いま、適正な数値で計算すれば冷凍機は61冷凍トンのもので足りるものと認められ、これを設備したとすれば本件工事は約130万円を節減することができたものである。

(2231)  日本電信電話公社東海電気通信局で、昭和28年11月、公正協議契約により第1企業株式会社に14,450,000円で請け負わせ施行した名古屋中央電話局南分局温湿度調整装置工事は、61冷凍トンの冷凍機を設備したものであるが、設計に際し調査不十分なため計算を誤り、電力機器の容量を12キロワット、電燈数を265燈分過大に見積ったため、必要以上の容量の冷凍機を設備する結果となっている。
 いま、適正な数値で計算すれば冷凍機は49冷凍トンのもので足りるものと認められ、これを設備したとすれば本件工事は約140万円を節減することができたものである。

(2232)  日本電信電話公社で、昭和29年5月から30年2月までの間に、公正協議契約または随意契約により総額359,825,000円で施行した大阪北、三宮、浜町各分局および横浜港電報電話総合局の温湿度調整装置工事は全館温湿度調整をしているが、自動交換機器を設置していないすべての室まで温湿度調整することは本来の目的を逸脱した不経済な施設と認められ、他局にもその例をみないものである。
 いま、夏季には必要な室だけを温湿度調整し、冬季には全館を暖房するものとして設計施行したとすれば少容量の冷凍機を設置すれば足り、工事費において合計約5070万円を節減することができたものである。

 (工事が設計どおり施行されていないもの)

(2233)  日本電信電話公社中国電気通信局で、昭和29年8月、指名競争契約により大成建設株式会社に勝山極超短波無線中継所新築その他工事を42,600,000円で請け負わせているが、監督および検収が不十分なため設計どおり施行されていなかったものがある。
 右工事は、大阪、福岡間マイクロクウェーブ・ルートの中継局として、下関市所在の勝山山頂に極超短波無線中継所局舎の新築および山ろくから山頂局舎までの道路2,686メートルを新設したものであるが、30年7月、本院会計実地検査の際の調査によると、そのうち工事費33,747,360円をもって施行した道路工事は請負人においてほしいままにその中心線を変更するなど設計どおり施行されていない。その結果、設計に比べ施行数量が、切取面土留石垣で1,377平米、岩切取で8,678立米、張芝で3,875平米等が増加し、盛土面土留石垣で2,720平米、盛土で12,818立米等が減少しており、結局、請負金額に比べ出来高が2,088,087円相当額だけ減少しているにかかわらずそのままこれを検収したものである。なお、右の2,088,087円は30年9月請負人から返納させている。