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  • 昭和29年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項

中小企業金融公庫


 第7 中小企業金融公庫

 中小企業金融公庫の昭和29年度中の新規貸付実行額は241億2千9百余万円(復金承継貸付金16億1千7百余万円を含む。)で、これから回収額79億7千5百余万円(承継貸付金を含む。)および承継貸付金償却額1億9百余万円を差し引いた年間純増加額は160億4千3百余万円に上り、年度末貸付残高は381億6千5百余万円(普通貸付金281億2千7百余万円、開銀承継貸付金38億6千7百余万円、見返承継貸付金5億3千1百余万円、復金承継貸付金36億3千8百余万円、商工中金貸付金20億円)となっている。

 右のうち、普通貸付金は、すべて代理店扱いによって貸し付けているが、甲方式(代理店8割保証)によるものが275億5千余万円、乙方式(代理店3割保証)によるものが5億76百余万円で、甲方式によるものが圧倒的に多く、また、使途別では設備資金が238億1千5百余万円、運転資金が43億1千2百余万円になっており、本年度後半から運転資金の割合が漸次増加の傾向にある。

 本年度においては一応5億3千5百余万円の利益をあげたが、全額滞貸償却引当金等に繰り入れたため国庫に納付すべき利益金はなかった。

 本院において、30年4月から9月までの間に、169件7億3569万円の貸付金について実地に調査をした結果、審査または管理が不十分なため貸付金が貸付けの目的外に使用されたと認められるものが16件4584万余円になっており、うち5件1667万余円については是正の処置を済ませたが、なお是正を要するものが11件2916万余円あり、同公庫において繰上償還等手続中である。

 また、29年度中における委託金融機関に対する業務委託手数料の負担額は11億4千9百余万円に上っており、右のうちほとんど大部分を占める普通貸付金の手数料は日本開発銀行の中小企業代理貸付の料率を基準とし、代理店保証率の変更を参しゃくして決定したもので、実収利息に対し甲方式は40%から45%、乙方式は25%から30%の割合となっているが、貸付け1件当り平均金額も同公庫と類似している株式会社日本長期信用銀行の業務委託手数料は元利金の全額が代理店保証となっているのに、実収利息に対し還元代理貸付(代理店の長期信用債券引受資金を使用するもの)は26%、単純代理貸付(株式会社日本長期信用銀行の一般資金を使用するもの)は13%にとどまり、両者の間に著しい開差のあることなどからみて、本件料率についてはなお検討を要するものと認められる。