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  • 昭和30年度|
  • 第3章 政府関係機関その他団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項|
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予定価格の積算が過大なためひいて購入価額が高価となっているも


(2157)−(2161)予定価格の積算が過大なためひいて購入価額が高価となっているもの

 予定価格の積算にあたっては、取引の実情や製作の実態をよく調査し、また、材料費等については市況を適確には握するなどして妥当な価格によることが必要であるが、これらの配意が十分でなかったなどのため、予定価格が過大となりひいて購入が高価となっていると認められるものが少なくないが、そのおもな事例をあげると次のとおりである。

(貨車の購入にあたり積算当を得ないため高価となっているもの)

(2157)  日本国有鉄道資材局で、昭和30年度中、随意契約により2回にわたり帝国車両工業株式会社ほか7会社から貨車(ワム90,000型)600両を522,173,838円で購入しているが、鋼材所要量の算定が適当でなかったため予定価格が過大となり、約2000万円高価となっていると認められる。
 右は、予定価格を1両当り輪軸ほか15点を支給扱とした場合857,000円、同様13点を支給扱とした場合892,300円とし、いずれも予定価格と同額で購入したものであるが、その予定価格の積算にあたり、支給材料および請負人持ち鉄鋼部品を除いた鋼材所要量については26年度に大宮工場で実施したワム23,000型貨車の改造工事の準備要求数量を基礎として丸鋼513.8キログラム、角鋼291キログラム、平鋼225キログラム、山形鋼1,030キログラム、鋼板1,885.8キログラム計3,945.6キログラムとし、この価額165,433円と算定しているが、右鋼材から製作される製品の重量について調査したところ、当局の計算によっても2,714.24キログラムとなり、予定価格に積算した前記鋼材所要量の製品歩留りは約68.7%にすぎない結果となる。しかしながら、29、30両年度において名古屋、長野両工場で実施したトキ型貨車をワム2,000型またはワム90,000型に改造する工事についてみると、この工事は解体工事を除いて本件新車の製作工事とほとんど同一のもので、その鋼材の種類別製品歩留りの平均はそれぞれ84.6%から88%となっており、また、本院の調査によれば、車両会社のこの種製作工事における製品歩留りもこれに近いものである状況からみて鋼材所要量の算定は著しく過大なものと認められる。
 いま、仮に前記製品重量2,714.24キログラムを基礎とし、名古屋工場の実績による鋼材の種類別使用割合におよび製品歩留り84.6%により鋼材の所要量を算出すれば丸鋼224.58キログラム、角鋼128.33キログラム、平鋼352.91キログラム、山形鋼1,122.91キログラムおよび鋼板1,379.58キログラム計3,208.33キログラム程度となり、前記積算鋼材所要量はこれに比べ1両当り737.26キログラム価額33,528円、購入全量において442,360.8キログラム約2000万円が過大に積算された計算となる。

(車両用バッドを高価に購入したと認められるもの)

(2158)  日本国有鉄道資材局で、昭和30年3月から31年3月までの間に、公開競争契約または随意契約により愛東車両工業株式会社から車両用パッド(フェルト式ほか2型式および試用品)778,349個を価額94,134,254円で購入しているが、主要材料である牛毛の価格を著しく高価に積算したなどのため予定価格が過大となり、ひいて購入価額が約550万円高価となっているものと認められる。

 右は、購入にあたり、仕様書においてその材料をフェルト式および板式は牛毛70%、ゴートヘヤー30%、メリヤス式は牛毛100%、試用品は獣毛と指定し、その予定価格を総額98,454,626円とし前記価額で購入したものであって、右予定価格の積算にあたり牛毛の価格を貫当り400円から500円と算定しているが、同資材局において別途同時期に購入した牛毛フェルトについては牛毛価格として貫当り200円から240円を採用しており、本院の調査によっても購入時の市場価格はその程度であって本件積算単価は著しく高価に失するものと認められ、仮に牛毛価格を貫当り200円から240円とし一部の誤算を修正して計算すれば、前記各型式の牛毛所要総量20,379貫について約490万円が高価となる計算であり、また、メリヤス式は山羊毛60%、牛毛40%として予定価格を計算しているが、仕様書どおり牛毛100%とすれば約90万円は必要以上に積算されたものであり、さらに、フェルト式および板式パッド用獣毛フェルト(厚さ10ミリメートル)の加工費を平米当り300円52と積算しているが、同資材局が別途購入した前記牛毛フェルト(厚さ15ミリメートル)の加工費平米当り157円に比べ著しく高価と認められ、仮に牛毛フェルトの加工費により計算すれば総量27,348平米について約390万円が高価に積算されている。
 右のように本件車両用パットは著しく高価に積算されたと認められるもので、結局、購入価額において約550万円高価となる計算である。

(高価な毛布カバーを購入しているもの)

(2159)  日本国有鉄道関東地方資材部ほか8箇所(注) で、昭和31年2月、公開競争契約により松本繊商株式会社ほか12名から3等寝台車用毛布カバー33,960枚を1枚当り565円から664円総額21,950,520円で購入しているが、使用生地の選定が適切でなかったなどのため予定価格が過大となり、ひいて購入価額が約560万円高価となっているものと認められる。
 右は、3等寝台車に備え付けるため前記各地方資材部等において本社営業局が定めた規格によりそれぞれ予定価格を算定し購入したものであるが、毛布カバーは横幅39.3インチであるから、42インチ幅生地で足りるのに54インチ幅の生地を使用することとしたことにより多量の残布を生ずる計算となったなどのため予定価格が過大となり、ひいて高価に購入する結果となったものである。
 いま、仮に毛布カバーに適合する同程度の42インチ幅生地を使用することとして価格を算定すれば、1枚当り433円から534円総額1,630万円程度となり、本件購入価額はこれに比べ560万円高価となる計算である。

(注) 関東、新潟、中部、関西、九州各地方資材部、函館、盛岡、熊本、鹿児島各資材事務所

(腕木の購入価額が高価となっているもの)

(2160)  日本国有鉄道九州地方資材部で、昭和30年度中、公開競争契約により角産業株式会社ほか1名からけやき腕木計15,011本を8,765,327円で購入しているが、予定価格の積算が当を得ないため購入価額が約310万円高価となっていると認められる。

 右腕木の予定価格は、28年10月原価計算により1本当り94円(66×66×600ミリメートルもの)から1,594円(90×90×2,700ミリメートルもの)と算定したものを基礎とし、前回の落札価格を参考として決定されたもので、その価格は1本当り70円または90円(66×66×600ミリメールもの)から1,400円または1,500円(90×90×2,700ミリメートルもの)となっており、前記28年10月の算定価格と大差がないものであるが、この積算内容を購入数量の約58%を占める66×66×2,400ミリメートルものの価格についてみると、石当り山元諸費14,500円(山元原木価格3,700円、製材費400円、歩留り28%)、木工場諸費1,830円(運搬諸費580円、加工諸費550円、注入諸費700円)、納入諸費2,780円(一般管理費10%と税および利益5%で2,450円、運賃330円)計19,110円とし、これに1本当りの材積0.039石を乗じて745円と算出している。しかし、右積算の各要素について検討してみると、けやき材の原木価格石当り3,700円は28年9月西日本林材新聞の関西値12尺×尺上石当り4,000円を参考として原産地の実際地方価格を算定したとしているが、熊本営林局の調査によればけやき材の価格は30年度を通じ末口直径1尺から1尺2寸5分、長さ6尺5寸から12尺のもので発駅渡価格最高1等品で2,760円から最低4等品の1,660円となっていて1等品価格を採用しても山元から発駅までの運搬費を控除し石当り1,140円の開差を生ずる計算であり、また、製材費原木石当り400円は製品石に換算すると1,428円となるが、関西地方資材部が同年度に同一規格品を購入する際採用した製品石当り200円に比べ著しく高価であり、さらに製材歩留りについても28%としているが、かつ葉樹の普通製材歩留りは製材技術等が逐年向上しているため上昇していて、他の地方資材部の積算例からみても33%を下らないものと認められ、しかも、残材に対する価値を全く考慮していないのは適切とは認められない。

 右のほか、運搬諸費のうちに積込、取卸料等トン当り150円を計算しているが、重量制運賃のうちにはこれらの経費は含まれているのであるから別に計上する要はなく、また、クレオソート注入費において、通常けやき材腕木は辺材20%以上のものについてだけ浸潤防腐すれば足りるのに、必要以上の注入をすることとして石当り240円程度過大に算定するなど実情に沿わないものが少なくない状況である。
 いま、仮に以上の諸点を修正して価格を算定すれば66×66×2,400ミリメートルもので石当り10,607円、1本当り414円程度となり、これを基礎としてその他の規格品の単価を推算し購入全数量について価額を計算すると約530万円となり、本件購入価額は約310万円高価となる計算である。

(高価な炭酸紙を購入しているもの)

(2161)  日本国有鉄道関西地方資材部で、昭和30年度中、公開競争契約により岩本某ほか1名から13回にわたり業務用炭酸紙1,178,700枚(小荷物切符用728,200枚、貨物通知書用186,800枚、特殊補充券用263,700枚)を総額1,785,580円で購入しているが、予定価格の積算にあたり生産者の販売状況や、他の地方資材部の購入状況等を考慮しなかったなどのため予定価格が過大となり、ひいて購入価額が約88万円高価となっていると認められる。
 右は、予定価格の算定にあたり、本件炭酸紙が特殊品であるため適正価格のは握が困難であるとし、納入業者の見積価格を基礎として1枚当り小荷物切符用1円59、貨物通知書用2円09、特殊補充券用0円90と決定し、いずれも予定価格と同額で購入したものであるが、関東地方資材部では同年度中本件と同一製造業者の同等品を小荷物切符用0円80、貨物通知書用1円、特殊補充券用0円50で購入している実情であり、本件購入単価は著しく高価なものと認められる。
 いま、仮に右関東地方資材部の購入価格により、本件炭酸紙の価額を計算すると総額約90万円となり、本件購入価額はこれに比べ約88万円高価となる計算である。