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  • 昭和30年度|
  • 第3章 政府関係機関その他団体の会計|
  • 第2節 各団体別の不当事項

日本電信電話公社


第3 日本電信電話公社

(事業損益について)

 日本電信電話公社の昭和30年度における損益は、営業損益において利益221億7千4百余万円、営業外損益において損失30億9千5百余万円であって、190億7千9百余万円の純益となっている。この額を29年度の純益172億3千1百余万円に比べると18億4千8百余万円の増加となっている。
 右増加利益は、営業利益の増加53億4千1百余万円、営業外損失の増加34億9千3百余万円を差し引いた結果であって、営業利益の増加は収益面で電話加入者数の増加があったことと加入者の通話度数および通話数の増加のため収入が増加したことなどによるものであり、営業外損益において損失が29年度に比べて激増したのは財産除却費が38億2千4百余万円増加したことなどによるものである。
 いま、雑収入を除いた30年度の営業損益の結果を事業別にみると、電話事業においては、前記の事由により、収入は前年度に比べて122億2千3百余万円の増加となっていて、収支率(収益に対する費用の割合)も前年度の76%から73%と向上しておりこれを予定収入に比べてもなお57億8千4百余万円の増加となっている。電信事業においては、取扱通数の減少等によって収入は前年度に比べて3億1百余万円の減少となっており、収支率も前年度の214%から229%と大きく低下しているが、これを予定収入と比べると4百余万円とわずかながら増加している。

(資金について)

 昭和30年度の資金計画は、当初収入、支出とも1413億3千3百余万円と策定されたが、景気変動の影響等による自己資金の収入増加と貯蔵品購買費の減少等のため計画に比べ著しく余裕を生ずるにいたったが、なお第4・四半期において、公募による債券を当初の計画どおり予算の認めた限度額まで発行することとして発行残額32億5000万円を発行し、年度末においては、当初の計画資金残高36億5400万円に対しその実績は197億6千2百余万円となっている。

(固定資産の経理について)

 固定資産の経理については、昭和29年度に固定資産の価額改訂を実施するなどその適正化に努めているが、なお検討の余地があると認められるものが次のとおりある。
 甲種固定資産の減価償却にあたっては総合償却の方法をとっているが、資産の削除にあたっては29年度と取扱を異にし、原則として経過期間に応ずる減価償却引当金だけを繰りもどすこととし、資産価額と減価償却引当金繰もどし額との差額は財産除却費に計上することとしたため甲種固定資産の除却費が前年度に比べ約36億8300万円増加している状況である。
 また、甲種固定資産の耐用年数は、23年3月の調査を基礎として決定されたものであるが、実情に沿わないものも相当生じているので早急に再検討の要があると認められる。

(建設工事について)

 昭和30年度における建設勘定の予算額は584億8千1百余万円(前年度からの繰越額36億5千2百余万円を含む。)、支出決定済額は539億7百余万円で、45億100万円を翌年度に繰り越し、7千1百余万円を不用額としている。
 支出決定済額は予算額に対し92.1%となっているが、支出決定済額のうちには、未完成施設額が140億9千2百余万円で26.1%を占めており、前年度の87億9千6百余万円の16.9%に比べ著しく増加している。このようになったのは、翌年度に使用する貯蔵品を年度末において多額に買受決算したり、工事の計画およびその命令が遅れたことによるものである。
 電信電話拡充5箇年計画の第3年度として30年度末までに施行した電話関係工事は、新電話局83局の建設計画に対し85局を完成し、加入者の新増設は42万名の計画に対し62万余名を実施して順調な進ちょくを示しているが、30年度末において加入者を収容することができる局内設備が251878もあり、このうちには線路設備もあって、しかも加入希望者のあるものが49878もあるから、これらはつとめて早急に開通をはかる要がある。

(資材の調達管理および運用について)

 昭和30年度における貯蔵品の調達額は349億2千余万円に上っているが、ケーブル、交換機等主要物品の調達については、大部分が随意契約によっているものであるからその調達価格の決定にあたっては適正原価のは握がとくに必要であると認められる。
 これについては、30年8月組織を強化し、着々成果をあげているが、なお原価の検討を実施する必要があると認められるものが少なくない実情である。
 30年度末の貯蔵品の在庫量は60億4千5百余万円であって、29年度末の82億6千8百余万円に比べて22億2千3百余万円の減少となっており、他方、使用局所への払出決算額は387億3千1百余万円であって、在庫充当、整理品の活用等により購入を差し控えたものは約72億円となっている。
 また、貯蔵品の総回転率は、29年度の3.57に対し5.81と向上している。
 物品の調達時期と工事の施行上の所要時期とのずれを調整するために出荷を延期した額は約25億8000万円、これに対する支払保管料は約1800万円で、29年度に比べ出荷延期額において約13億3000万円、支払保管料において約1300万円の減少となっている。