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  • 昭和32年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の不当事項および是正事項|
  • 第2 総理府|
  • (防衛庁)|
  • (一般会計)|
  • 不当事項|
  • 物件

普通実包の予定価格の積算が過大なため購入価額が高価と認められるもの


(20) 普通実包の予定価格の積算が過大なため購入価額が高価と認められるもの

(組織)防衛庁 (項)防衛庁

 防衛庁調達実施本部で、陸上幕僚監部の要求により、昭和32年8月、指名競争入札後の随意契約により東洋精機株式会社ほか1会社から口径30普通実包紙箱入18,807,400発、保弾子帯付849,600発計19,657,000発を単価紙箱入32円875,保弾子帯付36円765総額649,528,819円で購入しているが、予定価格の積算にあたり調査検討が不十分であったため約1690万円が高価となっている。
 右普通実包は、口径30の小銃および機関銃等に使用する実包銃弾であって、在日米国軍調達部の銃弾受注の経験を有する前記東洋精機株式会社ほか1会社を指名して競争入札に付したところ、納期に間に合わないことを理由として両会社が辞退したため数量を6,575,400発と13,081,600発に分割して随意契約によりそれぞれの製作を請け負わせるにいたったものであるが、この購入については初めての契約であったため、その予定価格は、右東洋精機株式会社が従来の受注当時2交代制で1箇月4,400,000発製作した実績による諸資料に基き、これを1箇月2,000,000発ずつ10箇月製作することとし、これに準備期間2箇月分の諸費用を加算して一発当り単価を材料費18円890、加工費9円891、紙箱代または保弾子帯代1円079または4円615を合計した総原価に10%の利益を入れた品代に輸送費を加えて紙箱入32円876、保弾子帯付36円768と積算している。しかして、その内訳を検討すると、

(ア) 薬きょうの材料費について

 一発当りの材料費18円890のうち薬きょうの材料費単価6円687は、素材である黄銅板から銃弾圧搾うをとることとし、これに発注数量と試射発数を加えたものに仕損等の工廃率7%を考慮して圧搾うの総数量を21,297,078個とし、これに圧搾うの1個当りの素材重量を乗じて黄銅板の総所要量488,598キログラムを算出し、これに素材重量当り単価を乗じ、さらに、歩留り、工廃率等による作業くずの代価を控除して素材の総金額を131,449,000円とし、これを発注数量で除したものである。
 しかし、同会社では従来受注していた当時から黄銅棒で薬きょうを製作しており、その月産能力は752,500発となっている。また、黄銅棒から製作する場合は黄銅板から製作する場合に比べて歩留りは著しく良好であって、10箇月分の生産量7,525,000発に対する黄銅棒の所要量は133,211キログラムで足り、その購入価格は黄銅板に比べで重量当り3%程度高価ではあるが所要量の金額は44,020,939円となり、これに残数の製造に要する黄銅板の所要量301,984キログラムの金額81,225,947円を加えた額125,246,886円を発注数量で除した1発当り単価は6円371となるものであるから、予定価格の積算にあたっては、発注数量のうち7,525,000発については黄銅棒から製作するものとして計算することが妥当と認められる。したがって、これにより計算すると材料費で一発当り0円316総額6,211,612円高価となる計算である。

(イ) 加工費について

 1発当りの加工費9円891の内訳は、特定工具費1円090、労務費2円571、減価償却費1円510、その他4円720であるが、うち労務費については、同会社が従来受注していた当時の月産平均4,400,000発(えい光弾約90万発を含む。)という最も生産量の多かった期間を含む1箇年の労務費の月平均7,793,548円を月産2,000,000発の場合に引き直した4,472,396円を基礎として一発当り単価を算出している。しかし、従来の受注期間は大量発注による異常生産状態にあったばかりでなく、普通実包に比べて加工手間のかかるえい光弾の生産量も含まれていたのであるから、単純にこの期間内の労務費を基礎として機械的に算出するよりも、特定工具等製造用機械を除く機械設備に対する合理的な所要人員を考慮し、本件契約当時の同会社の実情に照らして算出すべきものであると認められる。しかして、同会社においては、契約当時1箇月1,600,000発の生産が可能で、その所要労務費は月平均約310万円程度であるから2,000,000発の生産に対しては約411万円を要することとなり、これによって積算すべきものと認められる。また、減価償却費については、同じく生産量の多かった期間の月平均約251万円を基礎として算出しているが、このうちには契約当時当然控除すべき特定工具等製造設備分347,200円が含まれているから、これを控除して算出すべきものと認められる。よって、これらにより計算すれば労務費については2円364、減価償却費については1円246となり、結局、加工費で1発当り0円471総額9,258,447円高価となる計算である。

 以上の材料費および加工費により防衛庁の計算方式をもって計算すると予定価格は約1700万円高価となり、ひいて契約金額が約1690万円高価となっていると認められる。