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  • 昭和35年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

電源開発株式会社


第19 電源開発株式会社

 電源開発株式会社の昭和35営業年度末資本金は601億円(うち政府出資600億円)である。
 35営業年度における設備の新設等は、前営業年度からの継続および新規を合わせ発電設備では奥只見ほか13地点の計画に対し17地点、送電設備では熊野幹線ほか6線の計画に対し8線を実施し、これら設備の新設等を含めた総設備資金額は、計画465億0068万余円に対し454億0170万余円で10億9897万余円の差額を生じており、また、前営業年度に比べて18億9645万余円減少している。
 これらの設備資金については、35営業年度は国からの出資はなく、資金運用部資金からの借入金435億円と自己資金等とを充当している。
 35営業年度の収益は162億6109万余円、費用は161億8252万余円で当期総利益は7857万余円となり、法人税6736万余円を差し引いて、純利益は1121万余円となっている。これを前営業年度に比べると、収益で33億7433万余円、費用で33億0785万余円増加し、純利益で88万余円の減少となっている。
 収益が増加したのは、2発電所の出力増加と4発電所があらたに発電を開始したため、販売電力量36億4778万余キロワットアワー、販売電力料153億7977万余円となり、前営業年度に比べて、それぞれ4.4%、23.6%の伸びを示したことなどによるものであり、一方、費用が増加したのは、前記発電所の新設等に伴う水力発電、送変電等の経費その他一般管理費等の増加によるものである。

 なお、事業の執行にあたり、注意を要すると認められるものが次のとおりある。

(ア) ダム建設に伴う補償としてダム所在の村に対し通常の基準に従った補償を行なっているほか、水没世帯の大部分が村外に移住したため村の経済規模が縮少し経済単位として維持して行くためには開拓を行ない移住者を入れるほかはないとの村の要求に応じ、公共補償の一環として、ダム築造用の土質しゃ水壁材料の採取地として買収しその後土質が不適当なため不用となっていた土地を無償譲渡することとしたうえ同地のかんがい用水路建設のための工事助成金を支払っているものがあるが、このような補償は同会社としても従来その例をみないものであり、補償の限度について確とした方針を堅持することが望ましい。

(イ) 工事の契約内容をみると、不確定要素が多いグラウト工事の契約にあたり施行数量の増減に応じて単価を変更することができることとするなど弾力性のある方法をとるべきであると認められるのに施行数量の増減にかかわらず単価は変更しないこととしているもの、契約にあたり直接工事費が一定率以上増減した場合には機器損料等の関連経費は協議等により増減することとしているが、この率が条件類似の他工事の率に比べて過少となっているものなどがあり、契約方法を適切にすれば相当額の工事費を節減することができると認められるから契約締結に際し注意が望ましい。

(ウ) 送電線がい子架線金具の種別、規格が著しく多様化しているため、その価額もいきおい高価となり、また、相互流用の範囲がせばめられて多量の遊休品を貯蔵する結果となっているが、これらについては、極力標準化を図り単価の低減と遊休品発生防止の処置を講ずべきものと認められる。