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  • 昭和36年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項|
  • 第5 農林省|
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  • 工事

ずい道工事の施行にあたり処置当を得ないもの


(185)−(186) ずい道工事の施行にあたり処置当を得ないもの

(一般会計) (組織)農林本省 (項)土地改良事業費

(特定土地改良工事特別会計) (項)土地改良事業費

 仙台農地事務局で、農業水利事業の水路ずい道工事の施行にあたり工事の計画または予定価格の積算当を得ないため不経済となっていると認められるものが次のとおりある。

(185)  仙台農地事務局で、昭和36年4月および6月、株式会社熊谷組および株式会社間組に最上川下流右岸農業水利事業第1工区トンネルその7ほか1工事を242,905,000円(当初契約額200,822,000円、ほかに官給材料22,307,000円)で請け負わせ施行しているが、工事の施行計画が当を得なかったため約1270万円が不経済となっている。
 本件工事は、第1工区のずい道延長5,212メートル、斜坑2箇所等のうち、ずい道本坑掘さく1,531メートル、巻立て808メートル、斜坑2箇所等を193,966,000(ほかに官給材料19,742,000円)で、第2工区のずい道延長937メートル、斜坑1箇所等のうち、ずい道本坑掘さく96メートル、巻立て25メートル、斜坑1箇所等を48,939,000円(ほかに官給材料2,565,000円)で、いずれも工期を37年3月までとして、第1工区工事を36年4月、第2工区工事を6月契約し施行したもので、このうち第1工区工事はその工期が11箇月余となっているが、次年度以降継続施行するものとして、予定価格積算にあたって機械器具損料、坑内水替えその他保安管理費等は12箇月分を計上しているものである。しかしながら、本件ずい道の掘進は当局の計算によれば1方向から1箇月84メートルまたは105メートルが可能で、前記延長1,531メートルを2方向から掘さくするとすればその工期は9箇月で足りるものであるから、残余の3箇月間は遊休することとなり、この期間に見合う上記機械器具損料等が不経済な結果となっている。

 このように工期を11箇月余としたことについて、当局は工事施行上十分な準備と余裕を見込んだためとしているが、本件工事は前年度から継続施行しているからとくに準備期間を見込む要はなく、また、前記1箇月掘進延長の算定にあたり25日か働とするのが通例であるのに23日程度としているからさらに余裕を見込む要はないものである。このように工期に準備期間と余裕を見込む結果となったのは、同農地事務局の農林省に対する本件36年度工事費要求額第1工区272,388,000円(ずい道延長2,171メートル等)、第2工区130,000,000円(ずい道延長892メートル等)に対し、同省からの示達額が第1工区214,186,381円、第2工区51,500,705円にすぎなかったため年間工事量の減少をきたしたにもかかわらず、次年度継続施行を考慮してその完成を37年3月とし工期を延伸したことによるものと認められるが、一方、第2工区工事は36年度新規着工したもので、ずい道の延長が短く18箇月程度で工事の完成が可能であり、かつ、第1工区の下流にあるため同工区工事が完了しなければ通水効果も生じないから、第2工区工事の工事費を第1工区工事に充当使用してその工事量の増加をはかり、上記3箇月分の遊休工期を活用して施行するのが相当と認められる。しかるに、これらの配慮を行なわず上記減額された工事費をもってそのまま両工事を施行したため、第1工区工事については上記のとおり工事量に比べて工期が延伸し不経済な結果を生じたものである。

 いま、仮に第2工区工事の工事費を第1工区工事に充当使用したとすれば、第1工区工事は上記遊休工期を活用することができるため、3箇月分に相当する請負業者持込み機械器具損料、坑内水替えその他保安管理費等諸経費を含め約1270万円相当額を節減することができたものと認められる。

(186)  仙台農地事務局で、昭和36年6月、随意契約により鹿島建設株式会社に泉田川農業水利事業泉局第68号取水幹線水路ずい道工事を21,298,000円(当初契約額21,200,000円、ほかに官給材料2,051,908円)で請け負わせ施行しているが、ずい道掘さく工事費の積算が適切を欠いたため予定価格が過大となり、工事費が約170万円高価となっていると認められる。

 本件工事は、水路ずい道延長262メートルを新設するもので、その予定価格21,300,000円のうち、ずい道掘さく2,142立米6,790,140円についてみると、岩質が安山岩質集塊岩および凝灰岩なので掘さく断面積8.29平米を一時に掘さくすることとし、掘進速度の算出にあたり、農林省が29年12月に作成した歩掛り等を採用し、1掘進を1交替として1日20時間か働で2発破2メートル(1交替600分で1発破1メートル)掘進することとしている。しかしながら、上記1発破1メートル掘進の積算内容をみると、せん孔については、YD−47型ドリフターを使用することとし、その能力を1孔1メートル当り12.5分として孔長1.2メートル、26孔について2台使用し1掘進当り195分必要であるとしているが、上記機械を使用する場合のせん孔速度はその性能により計算すればメートル当り7分程度、1掘進当り110分で足り、ずり運搬は、トロ往復の平均運搬距離を216メートルとして179分を要することとしているが、実際は142メートルにすぎないなどのため130分で足り、また、当り取り、排水等に90分を要するとしているが、これらの作業はずりの搬出等と並行して行なわれるので1掘進に必要とする作業時間には加算しないのが通例であり、結局、1掘進当りの所要時間は、上記作業が240分となるので、その他の装薬、爆破、換気等の所要時間120分を加算しても合計360分で足りる計算となる。したがって、1日2交替20時間に3発破3メートル掘進することは十分可能であり、本件ずい道の掘進能力は過少に見込まれたものと認められる。
 いま、仮に1日2交替20時間に3発破3メートル掘進するものとして前記ずい道掘さく費を再計算すると5,390,943円で足り、その他の工事費を合わせると総額19,523,020円となり、本件工事費はこれに比べて約170万円高価となっていると認められる。