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  • 昭和37年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本海外移住振興株式会社


第25 日本海外移住振興株式会社

 日本海外移住振興株式会社の昭和37営業年度末資本金は33億円(うち政府出資32億2500万円)で、前営業年度末に比べて5億円増加している。

 37営業年度の事業計画は、投融資4億9600万円、移住地事業4億4553万余円計9億4153万余円で、前年度計画額に比べて投融資で3億7300万円、移住地事業で3億5821万余円減少しており、これに対する実績は融資4億1808万余円、移住地事業4億0259万余円計8億2068万余円となっている。このうち移住地事業の実績は、ガタパラ移住地造成費2億5327万余円、土地購入費4923万余円を除けば1億0009万余円にすぎないが、これはわが国からの移民が減少してきたため造成工事を手控えたことによるものである。これらの事業資金については、外貨借入金7億1635万余円、事業収入金2億9277万余円等のうちから充当している。

 37営業年度の損益は、ブラジル国現地法人の分を合わせて、収益2億5061万余円、費用5億0352万余円で、2億5291万余円の損失を生じ、設立以来の損失累計は10億2896万余円となっている。

 設立以来37営業年度末までに同会社が施行した移住地造成事業についてみると、アルト・パラナ(パラグァイ国)ほか11移住地で264,448ヘクタールを購入しているが、そのうち6,804ロッテ180,732ヘクタールを造成し分譲する計画に対し、2,561ロッテ59,672ヘクタールを造成し、1,139ロッテ28,445ヘクタールを分譲したにすぎない。

 しかして、これら造成が完了し分譲にいたらない1,422ロッテ31,227ヘクタールのうちには、砂れきが多いことまたは急傾斜地であることなどのため入植希望者がないものが相当数あり、また、所在国側のかんがい排水工事が未施行のため入植することができないものもある状況である。もともと、移住地造成事業は工事着手後ほとんどが3年程度で造成および分譲を終了する計画となっており、造成事業費および分譲価格もこれに基づいて算定されているが、上記のように造成および分譲が円滑に進ちょくしていないため、投下資金が適正に回収されていないばかりでなく、造成事業費および分譲価格に見込まれていない道路等の補修費をも要することとなっているほか、一般管理費および現場経費の増大をきたす結果となっている。

 以上のような状況にかんがみ、移住地造成事業については、移住者の送出し状況および移住地としての適性を十分に考慮して再検討し、早期に適正な造成計画または処分計画を立てる要があると認められる。

 前記移住地のうちガタパラ移住地(ブラジル国)は、従来全国拓植農業協同組合連合会が施行していた事業を引き継ぎ、土地代1億4319万余円、工事費2億8400万円等事業費7億2132万余円で移住地を造成し、375戸(内地入植262戸、現地入植113戸)を入植させる計画で、36年10月工事に着手したもので、38年3月末の工事進ちょく率は84.9%となっているが、入植者に対する土地分譲代375戸分2億5500万円を前記事業費に充てることとしているのに、38年3月末までに内地入植77戸があったにすぎないため資金の不足をきたし、残事業の施行が困難となっており、一方、現地入植については、現地における通貨価値の下落に加え、 ほかに有利な条件で入植することができる移住地があるなどの現地事情により入植者がなく、今後の入植見込みも全くない状況である。また、工事の施行についてみると、幹線用水路の施行にあたり、低湿地帯にくい打ち工等の基礎工も施行しないで盛土するなど安易な工法によっているため、地盤の沈下および地すべりによる崩壊または地下水の湧出による法くずれを生じているものがあり、ガタパラ移住地については、資金計画、入植計画および工事計画について全般的に再検討の要があると認められる。