ページトップ
  • 昭和38年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 不当事項|
  • 工事

PCけたの製作にあたり積算が適切でなかったため工事費が高価と認められるもの


(600) PCけたの製作にあたり積算が適切でなかったため工事費が高価と認められるもの

(工事勘定) (項)諸設備費

 日本国有鉄道札幌工事局で、昭和38年10月、指名競争契約により住友建設株式会社に函館本線苗穂、白石間豊平川橋りょう改良工事その3(PCけた製作架設その他)工事を89,800,126円(当初契約額86,180,000円)で請け負わせ施行しているが、PC鋼線の価格等の積算が適切でなかったため予定価格が過大となり、ひいて工事費が約810万円高価となっていると認められる。

 本件工事は、豊平川橋りょう改良に伴いPCけた25.2メートルもの2連(1連当りけた3本)、31.3メートルもの12連(1連当りけた4本)を製作架設する工事であるが、その予定価格についてみると、

(1) PC鋼線(径7ミリメートル)89,908キログラムは、キログラム当り180円として19,501,131円と積算しているが、PC鋼線の価格について本院で調査したところ、38年8月以降キログラム当り142円で販売されていることからみてもキログラム当り180円として積算したのは過大と認められる。

 いま、仮にPC鋼線の価格をキログラム当り142円として計算すると15,384,225円となり、本件積算はこれに比べて4,116,906円過大となっていると認められる。

(2) シース内にPC鋼線を配置するために使用するセンタースパイラルワイヤーは、これを原寸の2倍に引き伸ばして使用するとしてシース延長24,784メートルの2分の1の12,398メートルを見込み、この価格を1,792,750円と積算しているが、センタースパイラルワイヤーはら線状のもので、契約図面によれば約20倍に引き伸ばして使用することになっているから、その所要延長はシース延長の20分の1程度を見込めば足りるものと認められる。

 いま、仮にシース延長24,784メートルの20分の1として計算すると約1,239メートル179,159円となり、本件積算はこれに比べて11,159メートル1,613,591円過大となっていると認められる。

(3) 型わくの組立解体費は、型わくの面積を25.2メートルのけた6本分930平米、31.3メートルのけた48本分9,216平米計10,146平米とし、ケレン、塗油を含め100平米当りの歩掛りを35人として4,886,677円と積算しているが、このうち、底板型わくについてはけた全数54本分1,056平米の組立解体費を計上しているが、底板型わくは、コンクリート打設のつど組立て、解体するものではなく、1回すえ付ければ反覆使用することができるものであるから、25.2メートルけたおよび31.3メートルけたのいずれにも使用することができる31.3メートルけた8本分160平米で十分足り、25.2メートルけたの底板全数6本96平米および31.3メートルけたの底板40本800平米計896平米はケレンおよび塗油だけを見込めば足りるものと認められ、また、型わくの組立て、解体の歩掛り100平米当り35人については、同種工事の例からみて28人程度で十分と認められる。

 いま、仮に型わくの組立て、解体の面積は底板の面積896平米を控除した9,250平米とし、歩掛りは100平米当り28人として計算すると3,657,531円となり、本件積算はこれに比べて1,229,146円過大となっていると認められる。

(4) PCけた54本の養生費は、コンクリートの養生期間を3日として、1本当り所要人工を4.5人とし、また、これに使用するシートを1本当り6枚、54本分324枚につき工事期間中20%償却するものとして、労務費およびシート損料等1,008,585円と積算しているが、同種工事の例からみて養生の所要人工は1本当り1人を見込めば足り、また、シートの損料については、作業の実情からみると、けたは2本ずつを反覆製作するものであるから、工程上の重複を考慮しても4本をこえて同時に養生することはないので、4本分24枚を見込めば足りるものと認められる。

 いま、仮にけた1本当り所要人工を1人とし、また、シートを24枚として、一方、一部のけたについては冬期施行する必要があるのでそのための保温費を考慮して計算すると230,564円となり、本件積算はこれに比べて778,021円過大となっていると認められる。

(5) 製作後のけた外面10,146平米のパラフィン塗装は、100平米当りパラフィン所要量を12キログラム、吹付人工を4人として材料費および労務費703,623円と積算しているが、パラフィンは1.2キログラムとすべきところを誤って12キログラムとしており、また、吹付人工は同種工事の施行実績から100平米当り1人程度で足り、4人と積算したのは過大と認められる。

 いま、仮に100平米当りパラフィン1.2キログラム、吹付け1人として計算すると245,352円となり、本件積算はこれに比べて458,271円過大となっていると認められる。

 以上各項により工事費を修正計算すると81,697,569円となり、本件工事費はこれに比べて約810万円高価となっていると認められる。