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  • 昭和39年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第6節 各所管別の事項|
  • 第10 建設省|
  • 不当事項|
  • 工事

直轄工事の施行が不良なもの


(594)−(599) 直轄工事の施行が不良なもの

(一般会計) (組織)建設本省 (項)昭和39年発生河川等災害復旧事業費
(道路整備特別会計) (項)道路事業費
(治水特別会計) (治水勘定) (項)河川事業費 (項)砂防事業費
(特定多目的ダム建設工事勘定) (項)多目的ダム建設事業費

 東北ほか3地方建設局で、工事の施行にあたり、監督および検査が当を得なかったため施行が設計と相違していて設計に比べて工事の効果が低下していると認められるものが次のとおりある。

(594)  東北地方建設局で、昭和39年5月、指名競争契約により古久根建設株式会社に12,220,000円で請け負わせ施行した上山ダム工事用道路工事は、10月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、練石積擁壁を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、山形県最上郡大蔵村大字南山地先に延長2,553メートルの上山砂防ダム工事用道路を新設するもので、うち練石積擁壁529平米(工事費2,206,876円)は、設計書および仕様書によると、築石は控25センチメートル以上の玉石を使用し、胴込および裏込コンクリートは立米当りセメント225キログラム配合のもので平米当り0.18立米総量95立米を施行することとなっているのに、実際は築石は規格に満たないものを多く使用し、胴込および裏込コンクリートは容易に破砕することができるような粗悪なもので施行しているなどのため築石が容易に抜き取られる状況で、擁壁としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費98万余円で443平米は擁壁前面を張りコンクリートで補強し、86平米は再施行した旨の報告があった。

(595)  中部地方建設局で、昭和39年5月、随意契約により東栄建設株式会社に7,340,000円で請け負わせ施行した湯ヶ島山腹その2工事は、12月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、張石水路および石積工を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、静岡県田方郡天城湯ヶ島町大字湯ヶ島地先の山林0.52ヘクタールに山腹工を施行するもので、うち張石水路414平米および石積工341平米(工事費4,841,158円)は、(ア) 張石水路は、設計書および図面によると、控35センチメートルの割石を使用し、胴込コンクリートは立米当りセメント220キログラム配合のもので平米当り0.18立米総量74立米、裏込ぐり石は粒径5センチメートルから15センチメートルのもので平米当り0.25立米総量103立米を施行することとなっているのに、実際は設計どおりの切取りをすることなく張石を軟岩に直付けしている部分があり、また、割石は控を面に使用しているものが多く、胴込コンクリートは土砂の混入した粗悪なもので施行しているばかりでなくつき固めも不十分であり、(イ) 石積工A号の基礎コンクリートは、設計書および図面によると、立米当りセメント220キログラム配合のもので前面高さ40センチメートル、底幅50センチメートルとし、築石は控35センチメートルの割石を使用し、胴込および裏込コンクリートは立米当りセメント220キログラム配合のもので平米当り0.32立米総量63立米、裏込ぐり石は粒径5センチメートルから15センチメートルのもので平米当り平均0.45立米総量88立米、また、石積工B号の築石は控35センチメートルの割石を使用し、胴込コンクリートはA号同様の配合のもので平米当り0.18立米総量25立米、裏込ぐり石は粒径5センチメートルから15センチメートルのもので平米当り平均0.35立米総量50立米を施行することとなっているのに、実際は石積工A号の基礎コンクリートは前面高さにおいて7センチメートルから10センチメートル程度不足し、また、B号の胴込コンクリートはつき固めの不十分な粗悪なもので施行しているほか、A号、B号とも裏込ぐり石は現地で発生した風化の著しい大きな岩くずを使用しているなどの状況で、山腹工としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費118万余円で張石水路および石積工を張りコンクリートで補強し、張石水路の切取不足工事費相当額92,000円を返納させた旨の報告があった。

(596)  中部地方建設局で、昭和39年5月、指名競争契約により大豊建設株式会社に76,000,000円で請け負わせ施行した小渋ダム仮設備基礎その1工事は、12月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、運搬道路のコンクリート擁壁を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、長野県上伊那郡中川村地先の小渋ダム用の骨材ふるい分け設備等の仮設備に必要な敷地の造成と延長171メートルの運搬道路の建設とを施行するもので、このうち山側の岩切取箇所に設置するB−1型コンクリート擁壁延長90メートル(工事費3,272,931円)は、設計書および図面によると、天ば幅は30センチメートル、裏法は直、表法は1分こう配、高さ7.5メートルで体積416立米のものを立米当りセメント220キログラム配合のコンクリートで施行し、裏側は全面にわたり岩着させることとなっているのに、実際は岩切取りの際必要以上に切り取ったため天ば幅を50センチメートルで施行しているのになお裏側は総面積の約36%に当たる227平米が岩着せず、地山と擁壁裏側との間には最大2メートルもの間げきがあるばかりでなく、擁壁裏側のコンクリートはつき固めが不十分であったため豆板状を呈し骨材が容易にはく離する状態となっているほか、壁体内に松丸太、むしろ等を埋殺しにしている箇所もある状況で、擁壁としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費112万余円で施行不良箇所の打直し、岩着していない部分の一部の充てんおよび扶壁4箇所をそれぞれ施行した旨の報告があった。

(597)  近畿地方建設局で、昭和39年7月、指名競争契約により株式会社森本組に91,402,000円で請け負わせ施行した夜久野道路第6工事は、40年3月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、コンクリートブロック積擁壁の一部を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められ、また、擁壁裏込ぐり石の出来高において工事費635,000円相当額が不足している。
 本件工事は、1級国道9号線のうち京都府天田郡夜久野町地先の道路延長1,280メートルを改良するもので、コンクリートブロック積擁壁3,760平米のうち1,423平米は、設計書および仕様書によると、控45センチメートルのものを使用し、胴込コンクリートは立米当りセメント220キログラム配合のもので平米当り0.268立米総量381立米、裏込ぐり石は粒径5センチメートルから18センチメートルで平米当り0.18立米総量256立米を施行することとなっているのに、実際はうち天ばから1.7メートル下りまで150平米(工事費643,239円)の胴込コンクリートは設計の半量程度を施行したにすぎず、裏込ぐり石は現地で発生した風化の著しい岩くずを使用しているため、擁壁としての強度が低下しており、また、残りの1,272平米の裏込ぐり石も前記同様の岩くずを使用しているなどのため工事費635,000円相当額が出来高不足となっている。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費177万円で150平米についてはコンクリートおよびぐり石を充てんし、1,272平米についてはモルタル注入により補強した旨の報告があった。

(598)  中国地方建設局で、昭和39年4月、指名競争契約により中山土建株式会社に26,010,000円で請け負わせ施行した曳田堤防ほか一廉工事は、11月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、練石張護岸の胴込および裏込コンクリートを設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、鳥取県八頭郡河原町曳田地先の千代川左支川曳田川の護岸延長545メートルを改修するもので、うち練石張護岸2,834平米の胴込および裏込コンクリート765立米(工事費4,329,172円)は、設計書および仕様書によると、立米当りセメント220キログラム配合のもので平米当り0.27立米を施行することとなっているのに、実際は胴込および裏込コンクリートはモルタルと粗骨材の分離した粗悪なものと良質のものとが互層となっているなどのため設計に比べて胴込および裏込コンクリートの強度が著しく低下していると認められる。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費192万余円でモルタル注入および張りコンクリートで補強した旨の報告があった。

(599)  中国地方建設局鳥取工事事務所で、昭和39年11月、指名競争契約により有限会社栗山組に2,790,000円で請け負わせ施行した古市第一護岸災害復旧工事は、40年3月、設計どおりしゅん功したものとして検収を了しているが、護岸の基礎コンクリート矢板等を設計と相違して施行したため、その強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件工事は、39年7月の災害により被災した鳥取市古市地先の千代川右支川袋川の護岸延長90メートルを復旧するもので、設計書および仕様書によると、護岸の基礎はコンクリート矢板のほぞを適格に合わせて打ち込み、上部を鉄筋コンクリートで結束し、これを法留コンクリートに鉄筋コンクリートで連結し、コンクリートは立米当りセメント220キログラム配合のもので施行することとなっているのに、実際はコンクリート矢板の打込みは著しく不ぞろいであり、コンクリートはモルタル分の不足した粗悪なものとなっているばかりでなく、矢板上部を結束した天ばコンクリートの鉄筋はその位置がはなはだしく配筋図と相違し、なかには露出している箇所もある状況で、護岸としての強度が設計に比べて著しく低下していると認められる。
 本件に対しては、請負人の負担において工事費130万余円で再施行した旨の報告があった。