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  • 昭和41年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項

通商産業省


第7 通商産業省

(一般会計)

 昭和41年度歳入歳出決算額は、歳入8億1054万余円、歳出775億3571万余円で、歳出決算額のうちおもなものは地方公共団体等が施行する事業に対する国庫補助金295億0948万余円、石炭鉱業合理化事業団等に対する出資金159億2700万円、中小企業高度化資金融通ほか1特別会計に対する繰入金54億3218万余円、石炭鉱業合理化資金利子補給金50億2526万余円である。

 検査の結果、別項記載のとおり、工業用水道事業費補助金の経理当を得ないもの中小企業設備近代化補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの がある。

(アルコール専売事業特別会計)

 昭和41年度歳入歳出決算額は、歳入65億0452万余円、歳出54億6874万余円であり、また、損益は、利益67億8316万余円、損失50億5058万余円で、差引き17億3257万余円の利益となっている。

 41年度におけるアルコール(アルコール専売法に規定するアルコールをいう。以下同じ。)の生産数量は65,793キロリットル、販売数量は63,014キロリットル、販売金額は65億3546万余円で、前年度に比べると、生産数量で3,479キロリットル、販売数量で4,048キロリットル、販売金額では3億6066万余円の増加となっている。

 しかして、検査の結果、本院の質問に対し主務省において処置を講じたものが次のとおりある。

 (アルコール原料用輸入糖みつの変性処置の廃止による経費の節減について)

 アルコールは国営工場と国が特許または委託した民営工場で生産されているが、これら工場が使用するアルコール原料のうち輸入糖みつについては、フーゼル油等を混入して変性すれば変性しないものに比べて低率な関税を課せられることとなっているため、保税工場において変性を行なっていたものである。しかしながら、この変性には相当多額の経費を要するばかりでなく、混入されたフーゼル油等はアルコール製造過程において除去されるものであり、また、糖みつの管理は厳重に行なわれているのであるから、変性処置を加えなくても関税の軽減を受けることができるような方途を講じて経費の節減を図る要があると認めて関係各省に対し見解をただしたところ、関税暫定措置法(昭和35年法律第36号)の一部が改正され、昭和42年6月以降変性処置を講じなくても関税が減免されることとなり、国営工場における変性費用年間約2000万円を節減することができることとなった。

(中小企業高度化資金融通特別会計)

 昭和41年度歳入歳出決算額は、歳入63億4478万余円、歳出45億7742万余円で、これを歳入歳出予算額81億3530万余円に比べるとそれぞれ17億9051万余円、35億5787万余円の開差を生じている。これは工場団地の造成、小売商業店舗の新設および商店街の近代化等を行なうものが予定より少なく、かつ、これらの事業規模が当初計画に比べて縮少されたなどのため都道府県の貸付けが予定より少なかったこと、および都道府県が行なう中小企業共同工場貸与事業にかかる工場建設が初年度のため予定より少なかったことによるものである。

 一方、都道府県においては、国からの貸付金45億7742万余円に自己資金45億7744万余円、償還金等8億1941万余円を合わせ99億7428万余円を特別会計に受け入れ、商工業協業化資金733事項36億7866万余円、工場等集団化資金69事項28億7924万余円および商業集団化等資金17事項20億6901万余円計819事項86億2692万余円の貸付けを行なったほか、中小企業共同工場建設貸与資金10億1585万余円で共同工場の建設を行なっている。

 しかして、検査の結果、別項記載のとおり、高度化資金貸付金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの がある。

不当事項

補助金(268)−(274)

(268) 工業用水道事業費補助金の経理当を得ないもの

 (一般会計) (組織)通商産業本省 (項)工業用水道事業費

 通商産業省で、尼崎市が工事費385,200,000円(当初契約額383,000,000円)で施行した尼崎、伊丹二市共同工業用水道事業園田配水場構造物築造工事に対し、昭和40、41両年度に国庫補助金115,560,000円を交付しているが、工事費の積算にあたりコンクリート型わく損料等の算定が適切を欠き工事費約2090万円が過大となっていたため、ひいて国庫補助金約620万円が過大に交付された結果となっていると認められる。

 本件工事は、沈でん池、配水池等を施行するもので、その工事費の積算についてみると、コンクリート型わく工36,143平方メートルは、木製でかつ複雑な構造物に適用する型わくの損料価格を採用して平方メートル当り1,100円計39,758,334円と積算しているが、設計は鋼製型わくを使用することとなっているばかりでなく、本件沈でん池等は方形の同一断面が連続している構造物であるから、これに対応する鋼製型わくにより通常の損料で積算すべきであったと認められ、これによれば平方メートル当り478円計17,276,660円で足り、また、捨コンクリート1,665立方メートルおよび本体コンクリート14,875立方メートルは、生コンクリートを使用することとし、立方メートル当り4,970円および5,650円計92,324,008円と積算しているが、40年8月契約当時の生コンクリート価格は、本件のように大量に使用するものにあっては立方メートル当り4,310円および4,910円程度であって、これによって積算すれば80,216,923円で足りるなどのため、諸経費等の過少積算額13,653,223円を考慮し工事費を修正計算しても総額は364,209,361円となり、本件工事費はこれに比べて約2090万円(国庫補助金相当額約620万円)過大となっていると認められる。

(269)−(274) 中小企業設備近代化補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの

 (一般会計) (組織)中小企業庁 (項)中小企業対策費

 中小企業設備近代化資金は、中小企業近代化資金等助成法(昭和31年法律第115号)に基づき中小企業者の設備の近代化に資するため都道府県が国の補助金と自己資金とを財源として中小企業者に対し無利子で貸し付けるもので、昭和41年度中、中小企業庁で国庫補助金3,846,718,000円を都道府県に交付しているが、本院において、北海道ほか16府県における貸付け6,495事項9,134,422,000円のうち262事項539,847,000円について、貸付けおよび貸付金使用の状況を調査したところ、北海道ほか5府県(注) において、
貸付対象設備を購入または設置していない者に貸し付けているものなど3事項5,946,500円
貸付対象設備を申請額より低額で購入または設置している者に対し申請どおり貸し付けているもの7事項3,285,000円
計10事項9,231,500円があり、ひいて補助の目的にそわない結果となっていると認められる国庫補助金相当額が461万余円ある。
 いま、そのうち1事項の国庫補助金相当額が20万円以上のものをあげると次表のとおり6件8,421,500円これに対する国庫補助金相当額421万余円である。

 (注)  次表に掲記した道府県のほか新潟、広島、熊本各県

  道府県名 貸付先 貸付対象 事業費 不当事業費 左に対する国庫補助金相当額 摘要
同上に対する貸付額 同上に対する貸付相当額

(269)

北海道

建設業者

ブルドーザ
千円
8,500
(4,250)
千円
2,250
(1,125)
千円
562

低額で購入しているもの
(270)  同 自動車整備業者 噴射ポンプテスターほか 3,729
(1,862)
1,658
(826)
413 購入していないものおよび低額で購入しているもの
(271)  同 建設業者 ドーザショベル 6,700
(3,350)
1,600
(800)
400 低額で購入しているもの
(272) 秋田県 木工品製造業者 動力成型プレス 6,150
(3,000)
6,150
(3,000)
1,500 設置していないもの
(273) 大阪府 印刷業者 自動菊版オフセット印刷機 4,700
(2,120)
4,700
(2,120)
1,060
(274)  同 金属加工機械製造業者 横中ぐり盤 10,000
(4,200)
2,700
(550)
275 低額で設置しているもの
      39,779
(18,782)
19,058
(8,421)
4,210  

その他

(275)−(281) 高度化資金貸付金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの

(中小企業高度化資金融通特別会計) (項)高度化資金貸付金

 中小企業高度化資金は、中小企業近代化資金等助成法に基づき中小企業者の事業の共同化等中小企業構造の高度化に資するため都道府県が国の貸付金と自己資金とを財源として中小企業者等に対し無利子で貸し付けるもので、昭和41年度中、中小企業庁で高度化資金貸付金4,164,190,000円を都道府県に貸し付けているが、本院において、北海道ほか16府県における貸付け1,068事項10,008,756,000円(うち39年度分2,819,729,000円、40年度分3,133,084,000円)のうち104事項2,178,714,000円(うち39年度分54,360,000円、40年度分162,318,000円)について、貸付けおよび貸付金使用の状況を調査したところ、北海道ほか3府県(注) において、
貸付けの対象とならないものなどに貸し付けているもの4事項19,446,000円
貸付対象施設を申請額より低額で購入または設置しているものに対し申請どおり貸し付けているものなど5事項6,355,734円
計9事項25,801,734円があり、ひいて貸付けの目的にそわない結果となっていると認められる国の貸付金相当額が1290万余円ある。
 いま、そのうち1事項の国の貸付金相当額が20万円以上のものをあげると次表のとおり7件25,174,615円これに対する国の貸付金相当額1258万余円である。

(注)  次表に掲記した道県のほか大阪府

  道県名 貸付先 年度 貸付対象 事業費 不当事業費 左に対する国の貸付金相当額 摘要
  同上に対する貸付額 同上に対する貸付相当額
          千円 千円 千円
(工場等集団化資金の分)
(275) 栃木県 既製服団地協同組合   39 ボイラーほか 24,355
(12,100)
7,296
(3,648)
1,824 低額で設置しているもの
(商業集団化等資金の分)
(276) 北海道 繊維卸商団地協同組合 39 土地ほか 105,564
(42,260)
14,938
(5,080)
2,540 貸付の対象とならないもの
40 店舗ほか 235,776
(117,888)
22,050
(11,025)
5,512
(277)  同 総合卸商団地協同組合   41 土地ほか 499,510
(249,742)
2,083
(1,041)
520
        840,850
(409,890)
39,071
(17,146)
8,573  
(商工業協業化資金の分)
(278) 北海道 板金加工企業組合    41 ブレーキプレスほか 6,000
(3,000)
3,400
(1,700)
850 貸付けの対象とならないものおよび低額で設置しているもの
(279)  同 小売商業店舗協同組合     土地ほか 82,793
(41,394)
3,223
(1,611)
805 低額で購入しているものおよび購入していないもの
(280)  同 製炭協同組合   倉庫ほか 7,948
(3,974)
936
(468)
234 低額で設置しているもの
(281) 島根県 酒造業者   40 自動瓶洗機ほか 2,287
(1,100)
1,237
(600)
300 貸付けの対象とならないもの
        99,028
(49,468)
8,797
(4,380)
2,190  
  合計       964,233
(471,458)
55,165
(25,174)
12,587