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  • 昭和45年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項|
  • 第9 建設省|
  • 意見を表示しまたは処置を要求した事項

建築工事における高力ボルト本締費等の積算について処置を要求したもの


(1) 建築工事における高力ボルト本締費等の積算について処置を要求したもの

(昭和46年11月17日付け46検第334号 建設大臣あて)

 建設省が昭和45年度に鉄骨鉄筋コンクリート造りで施行している庁舎の新増築工事のうち、鉄骨工事費が多額に上っている中央合同庁舎第4号館第3回新築工事ほか8工事(鉄骨工事費23億4023万余円)について検査したところ、鉄骨の現場接合に使用する高力ボルト(注) の本締費等の積算において、次のとおり適切でないと認められる事例が見受けられた。 
 すなわち、本締費は、柱、はり等の鉄骨部材を現場で高力ボルトを使用して接合する経費であるが、その積算にあたっては、鉄骨業者から徴した見積価格等を参考として、組立鋼材1t当り単価を8,000円から9,400円までとし、組立鋼材17,656tに対する本締費を1億5501万余円と積算している。
 しかして、この単価は鉄骨をリベット打ちで接合する場合の経費として積算単価表に定められている単価とほぼ同程度になっているが、高力ボルトによる鉄骨の接合は、リベットを赤熱して鋲打機により鋲頭を打撃して成形するリベット打ちの場合と異なり、ボルトを性能の良い締付器具でナット締めするので作業能率が高く、従事する労務者も少なくてすむものであるから、前記の積算単価は施工の実情に合わない高価なものであると認められる。
 しかも、本件各工事の設計についてみると、組立鋼材1t当りに使用するボルト数が20本から68本と区々となっているなどしているのに、これらを考慮することなく、前記のように1t当りほぼ一律の単価を算定しているのは適切でなく、各工事ごとにその設計に適応した単価を算定すべきであると認められる。

 また、高力ボルト費の積算にあたっては、リベット打ちの場合と同じく設計数量に5%のロスを見込んでいるが、作業の実態からみて、高力ボルトで鉄骨を接合する場合に発生するボルトのロス数量は、リベット打ちによる場合に発生するリベットのロス数量ほどには多くないと認められるから、リベット打ちの場合と同率のロス率で積算するのは適切とは認められない。
 したがって、上記のような施工の実情を考慮して積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。
 ついては、建設省においては、建物新増築工事を今後も引き続いて多数施行することが見込まれ、その鉄骨接合に高力ボルトを使用する例は増加の傾向にあるから、上記の事例にかんがみ、施工の実績資料をしゅう集、解析、整理して基準化する処置を講じ、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(注)  高力ボルト 普通の鋼に比べて引張強度が高い高張力鋼で作ったボルト。高層建築の鉄骨組立などに使用される。

(2) しゅんせつ工事の予定価格の積算について処置を要求したもの

(昭和46年11月17日付け46検第335号 建設大臣あて)

 建設省の直轄施行にかかわる河川のしゅんせつ工事は、昭和45年度において14河川、40件であるが、これらのうち13河川、38件、工事費11億9608万余円のしゅんせつ工事について予定価格の積算を検査したところ、次のとおり、積算基準が施工の実情に適合していないなどのため積算が適正でないと認められる事例が見受けられた。
 本件しゅんせつ工事は、河川改修計画に伴い河積の拡大等を国有船14隻、民有船11隻の非航ポンプしゅんせつ船(以下「しゅんせつ船」という。)で施工したもので、しゅんせつ船の運転経費として総額441,451,739円を積算している。しかして、この積算の基礎となるしゅんせつ船の1日当り運転時間および乗船員数についてみると、次のとおり積算が施工の実情に適合していない。

(ア) しゅんせつ船の1日当り運転時間については、各地方建設局等が建設省から示された「ポンプ式浚渫船による浚渫工事標準設計書の作成要領(案)」に基づいて制定した積算基準によって、1日当り就労24時間のうち、運転時間を15時間および16.5時間とし運転に必要な経費を算定している。
 しかして、本件しゅんせつ工事は、毎年継続して同一河川において同一のしゅんせつ船によって施工しているもので、しゅんせつ船の運転状況は請負人から提出される実績報告書等の資料によって明らかとなっており、これによってみると、過去の1日当り平均運転時間は積算基準を相当程度上回っていて、このような実情を積算に反映させていないのは適切とは認められない。

(イ) 乗船員数については、前記の積算基準によって、国有船、民有船とも1,000馬力24人、500馬力16人、200馬力12人として運転労務費を算定している。
 しかして、本件しゅんせつ工事は、毎年継続して同一河川において同一のしゅんせつ船によって施工しているもので、しかも、使用するしゅんせつ船は主として国有のものであって、その運転人員を把握することは容易であると認められるから、実情に適合した乗船員数によって積算すべきであると認められる。現に、作業中のしゅんせつ船について本院が調査したところ、各工事に使用しているしゅんせつ船のうち大多数を占める電動式のものについては、国有、民有の別なく、乗船員数は、一部の例外を除きすべて積算基準を下回っていた。このような実情を積算に反映させていないのは適切とは認められない。

 したがって、本件積算にあたって上記の施工の実績を配慮して積算したとすれば、運転経費の積算額を相当程度低減できたと認められる。
 ついては、直轄施行にかかわるしゅんせつ工事は今後も長期にわたって毎年継続して施工される計画であるから、上記の事例にかんがみ、積算基準を再検討するなどして、施工の実情を積算に十分反映させ、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(3) 基準点測量作業の予定価格の積算について処置を要求したもの

(昭和46年11月25日付け460普第1598号 国土地理院長あて)

 国土地理院が昭和45年度に国土基本図の作成および国土調査のため実施している基準点測量作業(四等三角点1,204点の設置。契約額94,749,685円)について検査したところ、次のとおり、予定価格の積算が測量作業の実情に適合しないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、基準点測量作業の予定価格の積算にあたっては、同院が作成した仕様書等に基づいて建設省が45年2月に定めた「測量作業積算資料」による歩掛りをそのまま適用して四等三角点1点当りの標準単価を算出したうえ、上記の資料による算定方式に従いすべての基準点を三角測量(注1) により設置することとして予定価格を算出している。
 しかして、近時の基準点測量の方法は、測量機械の進歩、改良に伴い、従来の三角測量だけの測量方式から、多角測量(注2) が相当に採り入れられるようになっていて、施行の実情をみても、前記の1,204点のうち328点については多角測量によっている状況である。そして、この多角測量は、三角測量に比べて測標設置数が少なくて済むため人件費および材料費が低減する経済的な方式であるから、施行の実情を積算に反映させるべきであると認められるのに、前記のように全基準点を三角測量によって設置することとして積算しているのは施行の実情に合わないと認められる。

 また、三角測量についても、測量技術が向上してきたこと、および上記のように多角測量が採り入れられるようになったことによって、作業が困難な箇所に従来必要とされていた高測標の設置をほとんど必要としなくなってきているのに、作業の実態を考慮しないで積算しているのは施行の実情に合わないと認められる。
 ついては、この測量作業は、今後も長期にわたって継続して施行されることになっているのであるから、上記の事例にかんがみ、現地の作業の実態を十分把握して測量作業積算資料等の再検討を行ない、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(注1)  三角測量 新たに基準点を設定する際、これとすでに設定されている2つの基準点で作る三角形の内角を測定して新しい位置を求める測量方法。

(注2)  多角測量 新たに基準点を設定する際、「すでに設定されている2つの基準点のうちの1点と新たに設定しようとする点とを結ぶ線」と「2つの基準点を結ぶ線」とのなす角度、および基準点と新たに設定しようとする点との距離によって新しい位置を求める測量方法。この測量は、最近ではジオディメーター(光波を発射しその反射波の到達によって距離を測定する機械)等を用いて比較的容易に行なわれる。

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。 

(電気需給契約に基づく電気料金について)

 建設省土木研究所(2支所および2試験所を含む。)および北海道開発局土木試験所では、契約種別を業務用電力(電灯電力併用)として電力会社との間に電気需給契約を締結し規定料金を支払っていた。しかし、通商産業省が電力会社に発した通達によれば、この種の研究施設については、契約負荷設備のうち動力の占める割合が60%をこえる場合には規定料金によらず割安な料金の適用を受けられることになっており、上記の研究施設はいずれもこの条件に合致しているものである。したがって、規定料金を支払っているのは適切でないと認め、当局の見解をただしたところ、上記の各部局では、電力会社と協議して、昭和46年9月、10月または11月、割安な料金の適用を受けられるよう処置を講じた。