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  • 昭和47年度|
  • 第2章 国の会計|
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演習弾の調達に当たり、仕様が適切でなかったため不経済になったもの


(1) 演習弾の調達に当たり、仕様が適切でなかったため不経済になったもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)武器車両等購入費
部局等の名称 調達実施本部(要求元 海上幕僚監部)
購入物品 54口径5インチ砲用 対空演習弾1,224個
演習弾746個
購入物品の概要 護衛艦にとう載されている54口径5インチ砲の射撃演習の際に使用する弾丸。さく薬の代わりにぎ薬が充てんしてある。
購入価額 60,180,600円
納入業者 ダイキン工業株式会社
契約 昭和47年12月 随意契約
支払 昭和48年2月 2回

 この物品の調達に当たり、使用の目的からみて不必要な弾底信管孔(注1) をあけることとしたなどのため、約380万円が不経済になったと認められる。

(説明)

 この物品は、弾底部に弾底信管孔をあけ、この弾底信管孔に弾底せんをはめ込んだものとすることとしている。
 しかし、この演習弾は、実弾と異なってさく薬の代わりにぎ薬(注2) が充てんされているので、さく薬を弾底部からさく裂させるための弾底信管を装着する場合はないから、特に弾底信管孔をあけたものとする必要はないと認められる。現に、海上自衛隊では、54口径5インチ砲の演習等に使用する着色演習弾、対空演習弾平頭等については弾底信管孔のないものを調達しており、これを使用して支障なく演習等を行っている状況である。
 したがって、本件演習弾についても、弾底信管孔をあけるなどしたものを調達する必要はなかったと認められる。
 いま、仮に、本件調達に当たって、弾底信管孔をあけないものとしたとすれば、購入価額は56,372,858円で足り、約380万円を節減できたと認められる。

(注1)  弾底信管孔 弾底信管装着用のねじ孔。弾底信管とは、徹甲弾等の実弾に装着し、さく薬を弾底部からさく裂させる起爆装置

(注2)  ぎ薬 さく裂させる必要のない演習弾にさく薬の代わりに充てんする石こう等の混合物

(2) 航空機用ボルト等の調達に当たり、原価調査が十分でなかったため、契約額が割高になったもの

会計名及び科目

一般会計 昭和46年度国庫債務負担行為 (組織)防衛本庁 (事項)航空機購入
(組織)防衛本庁 (項)装備品等整備諸費
部局等の名称 調達実施本部(要求元 航空幕僚監部)
購入物品 F-4EJ航空機用初度部品(国産)ボルト等206品目
購入物品の概要 F-4EJ航空機等の修理に使用するもの
購入価額 39,047,500円(うち46年度国庫債務負担行為の分38,960,000円)
納入業者 株式会社東京螺子製作所
契約 昭和47年3月、11月 随意契約

 この物品の調達に当たり、価格算定の基礎となる原価調査が十分でなかったため、契約額が約1340万円割高になったと認められる。

(説明)

 この物品は、F−4EJ航空機等に使用するボルト、リベット等の国産部品であるが、調達実施本部では、この調達に当たって、昭和46年度に改定した「航空機用国産標準部品価格表」(以下「価格表」という。)記載の価格を適用して購入価額を算定している。

 しかして、上記の価格表改定の経緯についてみると、同本部では、ボルト等の製造会社に44年4月から45年12月までの各月中に製造した品目にかかわる原始伝票等に基づいて材料費、加工工数等の集計票(以下「集計票」という。)13,472件を作成提出させ、このうちの270件を調査対象としてあらかじめ指定し、そのうち146件について集計票と原始伝票との照合対査(以下「原価調査」という。)を実地に行い、これによりすべての集計票の信ぴょう性が確認されたとして、集計票記載の加工工数等に同本部が算定した加工費率、総利益率等を乗ずるなどして価格改定の基礎となる価額(以下「基礎価額」という。)をまず算出した。そして、この価額と、上記の期間に製造した品目について改定前の価格表により計算した価額との比率を、製造工程の類似性等により分類した系列ごと、会社ごとに算出し、その比率のうち最低の比率(一部については所要の修正を加えた比率)を当該系列に属するすべての品目の改定前の価格に乗じて標準価格を算出し、これを取りまとめて改定価格表の価格を定めている。

 しかし、上記の改定価格のうち、株式会社東京螺子製作所だけで製造していて上記の価格改定に当たっても同会社の比率を採用している4系列に属する品目の製造件数1,085件のうち456件について本院が調査したところ、集計票がなかったため原始伝票記載の加工工数等に基づいて本院が基礎価額を計算した結果、その系列ごとの合計額は、同本部が計算した同合計額よりいずれも低く、本来同一となるべきものである両者の間に28%から66%の開差を生じていた。これは、同本部の行った原価調査が十分でなかったことによるものと認められる。
 いま、仮に、本件調達について、原始伝票記載の材料費、加工工数等に本院が修正した加工費率を用いて算定した価格を標準価格とし、これにより購入価額を計算すれば約2550万円となり、本件契約額はこれに比べて約1340万円割高であったと認められる。

(3) タービン燃料の管理が適切でなかったため損害を生じたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁
部局等の名称 航空自衛隊第2補給処
損害 タービン燃料JP−4 26,400l 価額 312,840円
賠償金 5,248,138円
5,560,978円

 本件は、上記の部局で、上記の物品を受け入れる際これを流失し、また、その引火による火災のため民家等を焼損して賠償金を支払うに至ったものである。

(説明)

 上記の部局で、航空機燃料の取扱い業務に従事する者が、昭和48年2月26日、「タービン燃料JP−4」30,000lを受け入れるに際し、燃料タンクのドレンバルブ等が開放されたままの状態であるのに送油したため、全量がタンク外の排水こう等にあふれ出し、結局、26,400lを流失した。
 更に、この流出した燃料が引火して火災を生じ、付近の民家等が焼損したため、被害者27名に対して賠償金5,248,138円を支払うことになった。

検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

(潜水艦用の蓄電池の調達について)

 調達実施本部では、海上幕僚監部の要求により、昭和42年度以降毎年度「うずしお」型潜水艦を1隻ずつ建造しており、この新艦建造の都度、潜航中の推進動力源として使用する蓄電池(SCD−49W型。47年度における調達価格1個当たり約114万円。以下「電池」という。)を488個調達している。
 しかして、上記の潜水艦にとう載する電池は1艦当たり480個であり、上記の488個は、このとう載数量に予備(とう載したものの一部に性能劣化が生じた場合及びとう載の際等に事故が生じた場合の取替え用)8個を加えたものである。
 しかし、海上幕僚監部が43年4月に定めた「潜水艦用主蓄電池取扱要領」においては、1艦当たり480個の電池を使用する場合は電池容量に余裕があることから、使用中の電池の一部に性能劣化を生じた場合には、その都度予備電池と取り替えることなく、その電池の接続を外し、前後の電池を接続して使用することとしている。したがって、予備電池を必要とするのはとう載する際等に事故を生じた場合ということになるが、42年度以降の実態をみると、とう載等の際の事故は皆無で、このため、予備用として調達した電池はそのまま補給所に保管されている状況であった。このうな状況からみて、予備電池は、同一製造業者が製作した同一規格の電池をとう載する潜水艦の分については、1番艦建造時に調達したものを2番艦以降の艦も含めた各艦共通の予備として補給所で保管しておけば足り、新艦建造の都度調達する要はなく、このようにしたとすれば、経費を相当程度節減できたと認められた。

 上記について、当局の見解をただしたところ、海上幕僚監部では、48年9月、今後、同型艦については建造の都度予備電池を調達することを取りやめることとし、取りあえず、48、49両年度に建造を予定している「うずしお」型潜水艦の分について、予備電池を調達しないよう処置を講じた。

(自衛隊施設に使用する電力ケーブルの仕様について)

 昭和47年度に札幌ほか3防衛施設局(注1) が施行した当別電源ケーブル更新工事ほか6工事(ケーブル延長46,967m、この価額3906万余円)について検査したところ、次のとおり、電力ケーブルの仕様が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の各工事においては、防衛施設庁の設計基準により、配電用電力ケーブルとしてブチルゴム電力ケーブル(注2) (高圧用)又はゴム絶縁クロロプレンシースケーブル(注2) (低圧用)を布設することとしていた。しかし、配電用電力ケーブルとしては、高圧用、低圧用とも、3割程度廉価な架橋ポリエチレンケーブル(注3) が市販されていて一般にこれが使用されている実情であり、その性能も前記のケーブルに劣らないと認められるものであるから、本件各工事においてこれを使用しても何ら支障はないと認められ、これを使用することとしたとすれば工事費を相当程度節減できたと認められた。

 上記について、当局の見解をただしたところ、防衛施設庁では、48年8月、設計基準を改定し、特に支障のある一部のものを除いて架橋ポリエチレンケーブルを使用するよう処置を講じた。

(注1)

札幌、名古屋、大阪、呉各防衛施設局

(注2) ブチルゴム電力ケーブル、ゴム絶縁クロロプレンシースケーブル絶縁体として合成ゴム又は天然ゴムを使用したケーブル
(注3) 架橋ポリエチレンケーブル絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブル。架橋ポリエチレンとは、放射線を照射するなどの方法によってポリエチレン分子とポリエチレン分子とを更に架橋結合させたもので、耐熱性、耐油性、耐薬品性がポリエチレンに比べて著しく優れている。