ページトップ
  • 昭和47年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

軌道保守用機械の活用及び今後の導入について処置を要求したもの


(1) 軌道保守用機械の活用及び今後の導入について処置を要求したもの

(昭和48年9月21日付け48検第282号日本国有鉄道総裁あて)

 日本国有鉄道では、昭和45年度から47年度までの間に、マルチプルタイタンパ(注1) 211台及びこれと組み合わせて使用するための軌道モータカー、犬くぎ打ち機、犬くぎ抜き機、まくら木更換機等の機械350台を導入(購入価額45年度10億5394万余円、46年度41億2237万余円、47年度41億9228万余円)し、北海道、四国両総局及び盛岡ほか26鉄道管理局に配備している。

 これらの機械は、日本国有鉄道が軌道保守の近代化を図ることを目的として、軌道の修繕方式を従来の人力を主体とした方式から軌道保守用機械を主体とした方式に逐次切り替えるため導入したもので、この新しい軌道修繕方式は、線区の状況に応じて、前記の各機械を適切に組み合わせた編成により能率的な作業を実施するものである。
 しかして、北海道総局及び盛岡ほか11鉄道管理局(注2) について、前記の各機械のうち45、46両年度に導入されたものの47年度におけるか働状況を調査したところ、当初の計画どおり編成を組んで保守作業を計画どおり実施している線区は極めて少なく、大部分の線区では、マルチプルタイタンパ及び軌道モータカーだけを単独で使用し、他の機械はほとんど使用しないまま保有している状況であった。

 なお、上記のように単独で使用している機械があるとはいうものの、一例を軌道保守の主要機械であるマルチプルタインタンパについてみても、そのか働率は極めて低く(導入計画に対する実績を上記13局の平均で見ると、日数で29%、軌道延長で15%程度)、なかには全くか働していない局さえもある状況であった。
 このような事態を生じたのは、オペレータの養成、作業要員の組織、作業間合いの確保などの機械受入れ体制が十分整備されていなかったことなどによると認められる。
 ついては、今後、オペレータの養成に努めるとともに、作業計画の策定、機械化作業に適した組織制度等について十分検討して現有機械を有効に活用し、また、今後、軌道保守近代化のため機械を導入するに当たっては、導入した機械が遊休することのないよう十分配慮する要があると認められる。

(注1)  マルチプルタイタンパ 多数のタンピングバー(道床バラストの突き固め機構)を装置している道床突き固め用の作業車。軌道上を自走し、タンピングバーを一斉に操作して連続的に突き固め作業をするので、能率が高く、しかも均一な仕上がりが得られる。

(注2)  盛岡、秋田、新潟、千葉、東京南、東京西、静岡、名古屋、金沢、大阪、広島、門司各鉄道管理局

(2) しゅん功図及び保守台帳の作成について処置を要求したもの

(昭和48年11月22日付け48検第303号 日本国有鉄道総裁あて)

 札幌ほか8工事局(注) が昭和47年度中に随意契約によりニュージャパンコンサルタンツ株式会社ほか11会社に1億7196万余円で請け負わせて実施したしゅん功図及び保守台帳(固定財産管理事務基準規程等に定められている財産管理に必要な図面及び台帳)等の作成作業(積算額しゅん功図作成費合計1億0736万余円、保守台帳作成費合計3250万余円)について検査したところ、下記のとおり、しゅん功図作成に当たって、近年普遍化している図面の経済的な複写方法を採用しなかったり、保守台帳の作成に当たって、必要と認められる程度を超えた内容のものを作成することとしたりしたなどのため、多額の経費を要していると認められる事例が見受けられた。
 ついては、日本国有鉄道においては、今後も、新線建設、線路増設等の工事に伴い、しゅん功図及び保守台帳の作成を多数実施することが見込まれるので、その作成方法、記載内容及び様式等について検討のうえ、作業の簡素化、簡略化を図り、もって経費の節減を図る要があると認められる。

(1) しゅん功図の作成について

 しゅん功図は、日本国有鉄道において固定財産の実態を記録して、財産整理の的確を図るとともに、保守に必要な技術管理のための資料とするため必要とされているもので、工事の最終設計図面等を本件作業の請負人に貸与して作成させるものである。そして、その作成に当たっては、土木建築関係統計報告等基準規程第5条第1項の規定により、保存に適する製図用透明フィルム又は謄写用紙に手書きで写図して原図を作成し、これを感光紙に複写することとしている。
 しかし、近年、マイクロ写真による写図の手法が普遍化しており、この手法によれば、設計図面のままで差し支えないもの及び修正の少ないもの(写図作業費積算額合計約4580万円)については、設計原図に標題等を補足、修正してそのままマイクロフィルムに撮影することによって、所期の目的を達することができ、この方法によったとすれば相当程度経費を節減できたと認められる。なお、この方法は、日本国有鉄道においても上記の規程同条第2項にその使用を認めているところであって、現に、大阪工事局においては、新幹線関係のしゅん功図の作成についてこの手法を採用して実施している状況である。

(2) 保守台帳の作成について

 保守台帳は、保守担当の局所長等の建造物の管理用として作成しているもので、建造物統計報告等基準規程により建造物の種類に応じ建造物の所在位置ごとに構造物別にその財産価額等を記載することとしている。
 しかし、排水溝、線路側溝等の簡易な構造物の保守台帳(積算額合計約2600万円)については、保守管理上及び構造物の重要性からみて、同種の構造物を取りまとめた位置表程度のものに簡略化しても何ら差し支えなく、また、これらの財産価額も、別途に当局が作成している財産原簿では握できるもので保守台帳に特に記載してなくても支障はないと認められるから、このようにしたとすれば相当程度経費を節減できたと認められる。

(注)  札幌、盛岡、信濃川、東京第一、東京第二、東京第三、岐阜、大阪、下関各工事局

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

 (高架橋のスラブ、けた等のコンクリート打ち込み費の積算について)

  大阪、広島新幹線、下関各工事局が昭和47年度に施行した山陽新幹線福山駅東部高架橋その1工事ほか94工事について検査したところ、次のとおり、コンクリート打ち込み費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、高架橋のコンクリート(総量約107万m3 )の打ち込み費(積算額合計287億0861万余円)についてみると、スラブ、けた等(総量約53万m3 )については、コンクリート運搬車から打設箇所までの生コンクリートの圧送に配管式のコンクリートポンプ車を使用することとし、このポンプ車を使用することによって必要となるコンクリート輸送管の足場及びスラブ上の足場の費用並びにコンクリートポンプ車等のため通路を整備するために必要であるとして踏み板用覆工板の費用等としてコンクリート打ち込み費の12%又は13%相当額を積算し、また、打ち込み作業にコンクリート100m3 当たり1編成36人が従事することとして計算している。
 しかし、近年、この種工事のコンクリート打ち込みには、ブーム式のコンクリートポンプ車(折りたたみ式のブームとコンクリート輸送管を自蔵している。)が一般に使用されるようになっており、これを使用することとしたとすれば、コンクリート輸送管の配管及びその足場の必要がなくなるので、輸送管の足場の費用を見込む必要はなく、踏み板用覆工板については高架橋構築に先立って側道が設けられているから通常の場合その費用を見込む必要はないと認められ、また、打ち込みに従事する作業員については輸送管とその足場の組立て、撤去等の作業が不要となるので人員を相当程度低減できると認められる。
 このような事態を生じたのは、積算基準が最近の施工の実態に適合していないことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、48年6月及び7月、積算基準を改定し、スラブ及びけたのコンクリート打ち込み費についてはブーム式コンクリートポンプ車使用として積算することとし、足場等の費用についてはスラブ上の足場板等の費用としてコンクリート打ち込み費の3%相当額とし、踏み板用覆工板については、現場の状況によって必要がある場合には工事車全般に対する間接共通費として積算することとし、また、打ち込み作業に従事する1編成の人員を減少する処置を講じた。

(参考図)

(参考図)

(災害予備品として常備しているレール及び分岐器用品について)

 日本国有鉄道では、事故発生時等における応急復旧を容易にするため、レール及び分岐器用品を災害予備用として鉄道管理局等に常備させているが、このレール及び分岐器用品については再用品を充てることとしているのに、新品を多数保有している(昭和47年度末現在保有高1億9650万余円(47年度購入単価による計算額)。
 これは、同品形の再用品の発生がなかった38年ごろ新品を災害予備用として配備したが、43年以降実施している軌道強化工事等により同品形の再用品が多数発生しているのに、これを災害予備用として保有している新品と置き替えることなく保有してきたことなどにより生じたものであり、この結果、災害予備用に充当できる多数の再用品を使用の見込みもないまま保有している(47年度末現在保有高11億2152万余円(47年度購入単価による計算額)状況である。
 一方、その後軌道強化工事等を引き続き実施しており、これに必要な上記と同品形の新品を毎年度多数購入しているのであるから、災害予備用として保有している新品を軌道強化工事等に転用し、災害予備用には上記の保有している再用品を充当することとすれば、レール及び分岐器用品の購入費を節減できると認められた。

 上記について、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、48年9月、新品で保有している災害予備品を再用品に置き替えるための処置を講じるよう各鉄道管理局等に通達を発し、各鉄道管理局等では既に実施の段階に入っている。

(懸垂がいしの取付け費の積算について)

 釧路鉄道管理局ほか15箇所(注) が昭和47年度に施行した新得、金山間信号高圧配電線路絶縁強化その他工事ほか158工事について検査したところ、次のとおり、架空電線を支持する懸垂がいし2個連から5個連のもの(以下「多連式がいし」という。)の取付け費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、多連式がいしの取付け費(労務費積算額合計9980万余円)は積算基準に定められているがいし1個の取付けに要する場合の標準歩掛かり0.05人を基準として、がいしの個数が増すたびにがいしの数を乗じて取付け費を算出していた。しかし、懸垂がいしの取付け作業は、電柱等の腕金等に取り付ける作業を主体とするもので、多連式がいしの場合は、がいし1個を取り付ける場合に比べ、地上でがいしを組み合わせる作業手間等が増加しても、取付け作業は1回で足りるので個数の増加に比例して費用が増加するものではないから、上記のような方法で積算しているのは作業の実情に適合していないと認められた。
 このような事態を生じたのは、多連式がいしを使用する場合が増加しているのに、これに対応して積算基準が整備されていないことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、48年11月、積算基準を改定し、施工の実情に適合するように歩掛かりを改めた。

(注)  釧路、東京北、東京南、東京西、静岡、名古屋、金沢、大阪、門司、大分各鉄道管理局、仙台、東京第一、東京第二、大阪、門司各電気工事局、札幌電気工事事務所

(車両の体質改善工事の実施について)

 日本国有鉄道では、昭和45年度以降、定期的に行う車両検査(回転部の部品を点検する要部検査と車体全体を点検する全般検査がある。)のために車両工場に入場した車両のうち電車、気動車及び客車について、車両検査の際併せて車両の体質改善工事(以下「改善工事」という。)を実施している。この改善工事は、車両部品を耐摩耗性の高いものなど耐久性の高いものに取り替えるもので、車両の保安度を向上し、併せて車両検査の周期を延伸して修理費の節減を図る目的で、52年度までに逐次実施することになっているものである。
 しかして、46年度に車両検査のため盛岡ほか12工場に入場した電車等の車両のうち車両検査と併せて改善工事を実施したものは2,747両であるが、これらの車両について調査したところ、改善工事を実施したもののうちには、改善工事を実施しても検査周期をあまり延伸できないと認められるものが1,639両見受けられ、一方、改善工事を実施しなかったもののうちには、改善工事を実施したとすれば検査周期を大幅に延伸できたと認められるものが1,576両見受けられた。そして、この1,576両のうちの188両については47年度にも車両検査(検査費用5億4742万余円、うち材料費1億7111万余円)だけを行っているが、もし、これらについて46年度の車両検査の際併せて改善工事を実施していた(車両検査を実施した各工場において、前記の改善工事を実施しても検査周期をあまり延伸できないと認められる1,639両のうちこの188両と車種が同一な車両の改善工事を後年度に繰り延べ、その代替として実施する。)とすれば、検査周期の限界が延伸する結果、次回の車両検査時期が48年度以降になると見込まれるので、47年度に行った車両検査はその必要がなかったことになり、相当の経費を節減できたと認められる。

 上記の一例を大井工場に採ってみると、全般検査の際併せて改善工事を実施した普通形電車で22箇月間に20万kmしか走行しない車両の場合、検査周期の限界は、改善工事実施前は24箇月又は走行20万kmに達するまでのいずれか早い時期、改善工事実施後は24箇月又は走行40万kmに達するまでのいずれか早い時期と定められているので、この電車について改善工事を実施しても、検査周期は22箇月が24箇月となって、2箇月延伸できたにすぎない状況である。一方、要部検査だけを実施した急行形電車で、運行のひん度が高く10箇月間に25万kmを走行している車両があり、この車両の検査周期の限界は、改善工事実施前は18箇月又は走行25万kmに達するまでのいずれか早い時期、改善工事実施後は24箇月又は走行40万kmに達するまでのいずれか早い時期と定められているので、仮に、この車両について改善工事を実施したとすれば、18箇月間に40万kmを走行できるようになり、検査周期は、10箇月が18箇月となって、8箇月も延伸できるので車両検査費用を相当に節減できたと認められる。

 上記について、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、48年10月、各工場長等に通達を発し、定期修繕に際しては、改善工事を実施することによって延伸できる検査周期が長い車両から逐次改善工事を実施するよう処置を講じた。