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  • 昭和48年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

変電所等の電気設備工事における空気配管工費の積算について処置を要求したもの


 (1) 変電所等の電気設備工事における空気配管工費の積算について処置を要求したもの

(昭和49年7月26日付け49検第271号日本国有鉄道総裁あて)

 東京第一ほか2電気工事局(注) が昭和48年度中に施行した布佐変電所ほか1箇所電気設備新設工事ほか51工事(工事費総額16億2681万円)について検査したところ、次のとおり、予定価格の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各工事では、しゃ断器等操作用の空気配管(空気圧縮機からしゃ断器等までの間に、圧縮空気を送るため布設する銅製の管)の配管工費(管の連結、配置等布設のための一切の労務費)の積算に当たって、本社臨時工事積算室が作成した「電気関係工事予定価格積算標準」の標準歩掛かり(管の連結については、連結箇所に使用する直継ぎ手、T継ぎ手、十字継ぎ手、ストップバルブ等継ぎ手類の種類に応じて継ぎ手類1個当たり0.63人から1.20人、その他管の配置等については1m当たり0.22人)を適用して、総延長19,434m分の配管工費を6096万余円と算定している。

 しかして、上記の歩掛かりは、管と管との連結をリミング継ぎ手(連結する管の末端をつば状に押し広げ加工し、更に、配管の気密を保つため連結面を精密に仕上げ加工した上継ぎ手金具で連結する継ぎ手)によっていた41年当時定められて以来そのままとなっているものである。しかし、日本国有鉄道においては、46年2月以降施行する新幹線関係変電所等工事の空気配管の連結を食い込み継ぎ手(新形の継ぎ手金具を使用し、管の末端の押し広げ及び仕上げ加工をしないで管をそのまま連結する継ぎ手)によることとし、在来線関係の変電所等についても、48年4月以降施行する工事については同様に食い込み継ぎ手によることとしており、前記の52工事においてはいずれも管の連結を食い込み継ぎ手によることとして施行している。この食い込み継ぎ手によって連結し配管する方法の施工の実態について本院が7工事を抽出して調査したところ、いずれも、管の末端を押し広げる作業及び精密に仕上げる作業が不要であるなどのため、リミング継ぎ手によって連結し配管する場合に比べて連結、配管の作業能率がかなり向上していると認められ、特に、建設規模が41年当時より大型化している新幹線関係の変電所工事では、管を定尺のままで使用できる場合が多いなどのため作業能率が更に向上していると認められる状況である。本件各工事の施行に当たってこのような能率の向上による歩掛かりの低下を考慮して積算したとすれば、積算額を約3000万円程度低減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、本社において、空気配管の継ぎ手類について新形のものを採用したにもかかわらず、これに対応する管の連結、配管等の作業の標準歩掛かりの改定を考慮することなく従来のままとしていたこと、及び実施部局においても新形の継ぎ手類の採用によって作業の内容が変わることが判明していたと認められるのに、漫然と従来の標準歩掛かりをそのまま適用して積算したことによると認められる。

 上記のような積算の現状について本院が注意したところ、49年7月に電気局管理課長名をもって変電所等の食い込み継ぎ手による空気配管について暫定的な改定標準歩掛かりを各電気工事局等に示して試行させることとしたが、今後、更に作業実績を十分調査して積算基準を整備し、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

 (注)  東京第一、大阪、門司各電気工事局

 (参考図)

(参考図)

 (2) 車両工場等と地方資材部との間の資材準備要求等にかかわるデータの授受について処置を要求したもの

 (昭和49年10月16日付け490普第1740号日本国有鉄道総裁あて)

 北海道ほか8地方資材部(注1) が昭和48年度中に請負額2億6424万余円で実施した電子計算組織入力用の紙テープ等のせん孔作業について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる事例が見受けられた。

 すなわち、上記のせん孔作業は、各地方資材部管内に所在する工事局、工場等から送付された資材準備要求書等に関して鉄道管理局が電子計算組織で所要の帳表等を作成する際必要な紙テープ等を作成するため実施しているものである。しかし、前記のせん孔作業のうち苗穂ほか18車両工場(注2) 及び釧路ほか2車両管理所(注3) (以下「車両工場等」という。)からの資材の準備要求又は保管転換請求にかかわる分(請負費相当額1404万余円)についてみると、車両工場等においては、電子計算機器が設置されており、資材の準備要求等を行う場合には所要のデータを紙テープ等にせん孔し、磁気テープに記録した上、電子計算機器で処理して準備要求書等を作成しているのであるから、この車両工場等で使用している磁気テープを準備要求書等の送付に代えて地方資材部に送付することとしても、磁気テープの表現方式の相違を調整するために若干の経費を要する以外格別の支障はないと認められ、この方法によったとすれば、地方資材部において改めて磁気テープに記録するための紙テープ等のせん孔作業を請け負わせる必要はなく、磁気テープの表現方式の調整に要する経費を考慮しても約1300万円を節減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、車両工場等に電子計算機器が設置された後においても、設置されていなかった当時の手作業による資材準備要求書等の作成方式を検討しないまま踏襲してきたことなどによると認められる。

 ついては、車両工場等と地方資材部との間の資材準備要求等のデータ授受方式を前記のように改めることについて検討を加え、もって経費の節減を図る要があると認められる。

 (注1)  北海道、東北、新潟、関東、中部、関西、四国、広島、九州各地方資材部

 (注2)  苗穂、盛岡、土崎、郡山、大宮、大井、大船、長野、浜松、名古屋、松任、吹田、鷹取、高砂、後藤、多度津、広島、幡生、小倉各車両工場

 (注3)  釧路、新津、鹿児島各車両管理所

(3) 工場製作品を材料として多量に使用する工事の施工について処置を要求したもの

 (昭和49年11月22日付け49検第351号日本国有鉄道総裁あて)

 新幹線総局ほか8箇所(注) が昭和48年度中に施行している東海道本線東京、品川間線増有楽町ずい道新設その他工事ほか47工事(工事費総額124億6796万余円)について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各工事は、いずれも材料としてコンクリート二次製品、柱、はり等多量の工場製作品を使用して施工したものであるが、別表のとおり、規格、寸法等が設計及び仕様と異なっている工場製作品が使用されている事例が多数見受けられ、なかには、これが原因となって構造物の強度及び耐久性が著しく低下し工事の目的を達していない結果になっていると認められるものも見受けられた。

 このような事態を生じたのは、日本国有鉄道では、工事が完成して供用を開始した後は、列車運転との関係もあって、使用材料に欠陥が発見されたとしてもその取替えや修補に困難が伴う場合が多く、したがって、施工現場で材料として使用される以前の段階で品質等を調査する必要が特にあると認められるのに、工場製作品については品質管理が一般的には行き届いていることからこれを過信する傾向があり、このため工場製作品の良否について全く確認を行っていなかったことによると認められる。

 ついては、日本国有鉄道においては、今後この種の工場製作品を材料として多量に使用する工事がますます増加することが見込まれているのであるから、監督、検査の具体的な実施基準を整備するとともに、契約時点において監督の範囲、方法等を明確に示すこととし、監督の職務に従事する者により工場における製作過程若しくは完成時又は現場への搬入時において適時適切な監督が行われるよう処置を講ずる要があると認められる。

 (注)  新幹線総局、仙台、東京南両鉄道管理局、東京第一、東京第三、岐阜、大阪、広島新幹線、下関各工事局

(別表)

態様 工事数 左の態様に相当する工場製作品にかかわる工事費相当額
(1) トンネル工事において、コンクリートセグメント、コンクリートブロックの鉄筋が表面に露出しているなど配筋が所定の位置からずれているもの 3 6億8044万円
(2) 建物工事等において、柱材、はり材等の溶接の脚長が不足したり、溶接部にえぐれが生じたりしているもの 31 8億8626万円
(うち溶接費3207万円)
(3) 橋りょうの高欄工事等において、石綿合板の素材が設計より薄かったり、素材の接着が不良だったりしているもの 13 8702万円
(4) その他、素材の材質や製品の寸法が設計と相違しているもの 6 6030万円
(備考) 工事数欄の数字は、1工事が2以上の態様に該当している場合、それぞれの態様ごとに1工事として掲記してある。

 (参考図)

(参考図)

 (4) 潜函工事における掘削沈下費の積算について処置を要求したもの

 (昭和49年11月22日付け49検第352号日本国有鉄道総裁あて)

 盛岡、仙台新幹線両工事局が昭和48年度中に施行している東北新幹線磐井川橋りょう下部構造工事ほか10工事(工事費総額56億0802万余円)について検査したところ、次のとおり、潜函工の掘削沈下費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の工事はいずれも潜函工法(注) により橋りょうの橋脚等を新設する工事であるが、これらの工事においては、潜函のうち大口径(断面積60m2 程度以上)のものについて、潜函1基当たり竪(たて)管及び気閘(こう)(以下「竪(たて)管等」という。)を2箇所設置して掘削土砂の搬出を行うこととしている。しかして、上記の各工事の予定価格の内訳のうち潜函外作業(気閘(こう)で吊り上げた掘削土を潜函外に搬出する作業)に要する経費についてみると、本社臨時工事積算室が作成した「潜函工事積算要領(案)」に竪(たて)管等を1箇所設置して作業を行う場合のものとして示されている作業編成人員を2倍した人員を潜函1基当たりの作業に要する人員とし、これを基にして40基分総額2億6180万余円と積算している。

 しかし、前記各工事の設計をみると、潜函1基当たり竪(たて)管等を2箇所設置して作業を行う大口径のものの場合であっても、土砂の搬出等に使用するクレーンは1基を設置することとしており、作業の実態をみても、竪(たて)管等を1箇所設置している場合と大差のない編成人員で潜函外作業を行っていて、掘削作業及び土砂の搬出に何ら支障がない状況であるから、本件各工事の施行に当たって、このような設計及び作業の実態に適合した人員編成によることとして積算したとすれば、積算額を相当程度低減できたと認められる。いま、前記の各工事のうち磐井川橋りょう下部構造工事の場合(橋脚4基、この潜函外作業費積算額1557万余円)を例に採って、潜函外作業を適切と認められる編成人員により行うこととして計算してみると、積算額を約620万円程度低減できたことになる。

 このような事態を生じたのは、大断面の潜函工法による橋りょう等の基礎工事が増加し、竪(たて)管等を2箇所、クレーンを1基設置して施工する設計が採り入れられているのに、積算基準には竪(たて)管等を1箇所設置する場合の歩掛かりが示されているだけで、竪(たて)管等を2箇所設置してクレーンを1基とする工法についての積算基準が設定されていないことによると認められる。

 ついては、日本国有鉄道においては、新幹線等の建設に伴いこの種の潜函工事を今後も多数施行するのであるから、施工の実態等を十分調査検討して積算基準を整備し、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

 (注)  潜函工法 鉄筋コンクリート製で底部に作業室がある箱状のもの(これを「潜函」又は「ケーソン」という。)をあらかじめ地上に構築し、その下部の土を掘り取って地中の所定の地盤まで沈下させ(沈下に伴ってコンクリートを打ち継ぎする。)て基礎とする工法。湧水の浸入を防ぐため作業室を密閉し、圧縮空気を用いて常時与圧しておく。(下図参照)

変電所等の電気設備工事における空気配管工費の積算について処置を要求したものの図1

 (5) 路盤鉄筋コンクリート工事における突起コンクリートの型わく費の積算について処置を要求したもの

 (昭和49年11月26日付け49検第354号日本国有鉄道総裁あて)

 大阪、広島新幹線、下関各工事局が昭和48年度中に施行している山陽新幹線金浦東工区トンネル工事ほか104工事(工事費総額485億0387万余円)について検査したところ、次のとおり、路盤コンクリート工事における突起コンクリートの型わく費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

すなわち、上記の105工事の予定価格の内訳のうち路盤鉄筋コンクリート工事費についてみると、前記の各工事局が作成した「下水、通路、路盤鉄筋コンクリート積算基準(案)」を適用し、路盤鉄筋コンクリートの締め固め及び仕上げをフィニッシャ及びコンパクタ(注) を使用する機械施工を主体として施工することとして積算しているが、このうち路盤コンクリートの中心線上に延長5mごとに設置する突起コンクリート(高さ20cm)については、その基部を路盤コンクリートと同時に打設すると機械施工の際その鉄筋が支障になるとして、その路盤コンクリートの設置箇所を箱抜きしておいて、路盤コンクリート打設後に鉄筋を組み立てて特殊型わくを使用してコンクリートを打設することとし、箱抜き用型わく費及び特殊型わく費を81,819個分で2億7902万余円と積算している。

 しかし、フィニッシャ及びコンパクタは、スクリード又はバイブレータを吊り上げることによって高さ20cm程度の障害を通過することが容易なものであるから、突起コンクリートの鉄筋をあらかじめ配筋し、箱抜きしないで突起コンクリートの基部も一体として路盤コンクリートを打設することが可能であると認められ、現に、本件工事の施工の実情を調査したところ、この方法によっている状況である。そして、この方法で施工したとすれば、突起コンクリートのための箱抜き用型わく及び特殊型わくの代わりに突起だけのための簡易な型わくを使用すれば足りるので、前記の型わく費の積算額を大幅に低減でき、フィニッシャ及びコンパクタの機器吊り上げ操作に伴う能力低下によるコンクリート打設費の増を考慮してもなお積算額を相当程度低減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、山陽新幹線の軌道敷設方法として、従来のまくら木にレールを締結してバラストを敷き込む方法と異なり、鉄筋コンクリート製スラブにレールを締結する方法を採用し、トンネル全延長の底版と高架橋の曲線区間の床版の上に路盤コンクリートを施工することになったのに、本社においてこれに対応した積算基準を定めていなかったため、前記の各工事局において独自に積算基準を作成する際工法の想定が適切でなく、また、その後もこれを施工の実情に適合したものに修正することなく適用して積算していることによると認められる。

 ついては、日本国有鉄道においては、この種工事を今後も引き続き多数施行することが見込まれるのであるから、速やかに施工の実態を十分調査は握して積算基準を整備し、予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

 (注)  フイニッシャ及びコンパクタコンクリートを平面的に打設する際、コンクリートの締め固めと仕上げを連続的に施工する機械。機体下部に締め固め用のバイブレータ、仕上げ用のスクリードを装置している。

 (参考図)

(参考図)

   検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたもが次のとおりある。

 (ケーブル防護管の配管工費の積算について)

 東京第二電気工事局が昭和48年度に施行した東京、熱海間保守用低圧回線新設工事ほか2工事について検査したところ、次のとおり、ケーブル防護管の配管工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、鉄道線路の沿線に布設するビニルケーブルを防護するための鋼製電線管(以下「防護管という。)総延長10,377mの配管工費(積算額合計2974万余円)は、41年7月に本社臨時工事積算室が作成した「電気関係工事予定価格積算標準」のうち、建造物に布設する電線を防護する露出配管の標準歩掛かりを適用して積算していた。

 しかし、本件配管工事は、電源からコンセント箱までの防護管を線路側道のパイプ高欄等に取り付けるもので、その施工の実態を調査したところ、管の切断及び曲げ等の加工がほとんどなく、一般的な配管工事に比べて作業が著しく容易であると認められ、このような作業の実態に適合した歩掛かりによって積算したとすれば、積算額を約1800万円程度低減できたと認められた。

 このような事態を生じたのは、作業の実態に適合した積算基準が整備されていないことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、49年11月に積算基準を新たに制定した。

 (特種広告料金の徴収について)

 東京北、東京南、東京西各鉄道管理局が昭和48年度中に広告代理業者から徴収した特種広告料金(13億5572万余円)について検査したところ、次のとおり、広告種類の適用、掲出面積の確認が適切でなかったため料金の徴収が不足していると認められる事態が見受けられた。

 すなわち、特種広告の大部分は特種額面(駅舎その他の建造物に掲出するもの)及び建植板(鉄道用地等に支柱等を建植して掲出するもの)であるが、駅舎等の外壁や高架施設の橋脚に取り付けてあって特種額面として承認しその料金を徴収するのが適当と認められるのに、廉価な建植板料金を徴収しているものが715面、承認した掲出面積に対して実際の掲出面積が大きいのに、これを看過して実際より小さい面積の料金しか徴収していないものが1,459面見受けられ、これらについて適正な料金を徴収したとすれば、年間で約5600万円の収入が増加したと認められた。

 このような事態を生じたのは、本社が特種額面及び建植板の認定の基準について適切な指導をしなかったため、各鉄道管理局において、認定の基準を明確に理解していなかったこと、掲出広告の管理手続等が整備されていなかったため、承認どおりの広告が掲出されているかどうかについての調査、確認が十分でなかったことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本国有鉄道では、49年10月に各鉄道管理局等に通達を発し、特種額面及び建植板の認定の基準並びに広告事務の管理体制の強化について指示し、また、各鉄道管理局では、同月から順次広告の種類、面積の誤りについて措置するとともに、11月に上記の本社通達に従い鉄道広告基準規程を改正して掲出広告の調査、確認をするよう管理手続等を整備する処置を講じた。