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  • 昭和48年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事|
  • 第17 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路等工事における敷砂層等の材料選定及び施工管理について処置を要求したもの


 高速道路等工事における敷砂層等の材料選定及び施工管理について処置を要求したもの

 (昭和49年12月2日付け49検第360号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団が昭和48年度中に施行している高速道路等工事のうち京葉道路(四期)東寺山工事ほか6工事(工事費総額106億6613万余円)について検査したところ、下記のとおり、敷砂層及びサンドブランケット(注1) (以下「敷砂層等」という。)の材料選定及び施工管理に当たって、材料の透水性についての試験方法等が適切でなかったため不経済な結果になったり、工事が所期の目的を達しない結果になったりしている事例が見受けられた。
 このような事態を生じたのは、近年では川砂等の良質材が入手困難になってきていることからこの種の工事には一般に現場付近産の山砂等を使用する場合が多くなってきており、この山砂等は締め固めの程度によって透水性が大きく左右されるものであるのに、同公団では、設計要領、施工管理試験要領等に透水試験をする場合の材料の締め固めの方法や施工管理の際の品質確認の方法についての基準を設けておらず、これらをすべてそれぞれの設計担当者、監督員の判断に委ねていることによると認められる。
 ついては、同公団においては、この種の工事を今後も引き続き多数施行するのであるから、設計要領、施工管理試験要領等を整備して、材料の透水性についての試験方法や施工段階における具体的な施工管理方法を明確に定め、もって工事施行の適正を期する要があると認められる。

 記

(1) 材料の選定について

 各工事の設計についてみると、それぞれの設計担当者がそれぞれの判断によって材料の透水性等の試験をし、これに合格したものを使用することとしている。このため、試験方法のいかんによっては、本来の目的からみて適格である廉価な材料が排除されひいては不経済な結果になったり、不適格とすべき材料が適格なものとして採用されてその結果工事が所期の目的を達しなくなったりするおそれがあると認められる。

 例えば、前記の各工事のうち京葉道路(四期)東寺山工事ほか4工事についてみると、次のとおりとなっている。すなわち、これらの工事においては、設計に当たって、工事現場付近の土取場産の山砂について土の締め固めの試験方法に定められている「3層92回(モールド径15cm、ランマー4.5kg)の突き固め」(注2) をした試料を作成してこれにより透水試験をした結果、廉価な山砂では所定の透水性を確保できないと判断して洗い荒目砂を使用することとし、これにより敷砂層等の工事費を178,567m3 分で4億4894万余円と積算している。しかして、透水試験に当たって上記のような方法で作成した試料を使用したのは、既往年度に同公団が施工した東北高速道路久喜試験盛土工事の敷砂層等(上部に盛土が施工され、締め固められた状態になっている。)の締め固めの度合いが「3層92回の突き固め」をした場合の試料の最大乾燥密度(注3) の95%に相当しており、本件各工事で施工する敷砂層等の締め固めの度合いもこれと同程度になると想定されたことから、「3層92回の突き固め」をして作成した試料を試験することによって透水性の適否を判断できると考えたことによるものである。

 しかし、本院が上記の試験の結果を調査したところ、その試料の大部分は「3層92回の突き固め」をした場合の最大乾燥密度の95%を大きく上回っているものであり、この試料による試験の結果得られた透水性の数値は実際に施工された場合の敷砂層等に必要な透水性を大きく下回っているものであって、本件各工事における使用材料の透水性の判断に当たってこのような試料を使用したのは適切とは認められない。そして、山砂等の細粒砂の場合、同公団の試験実績の資料及び本院の調査の結果「3層42回(モールド径15cm、ランマー4.5kg)の突き固め」をした場合の締め固めの度合いが上記の「3層92回の突き固め」をした場合の最大乾燥密度の95%程度になると認められたので、上記の各工事の工事現場付近の土取場から採取される山砂についてこの方法により試料を作成して透水試験をしたところ、これらの山砂はいずれも敷砂層等の材料として使用したとしても所定の透水性が十分得られると認められ、仮に前記の各工事にこれを使用することとしたとすれば約6000万円程度が経済的になったと認められる。

(2) 施工管理について

 施工段階における施工管理の実態について調査したところ、次のとおり、その方法やひん度が適切でなかったため使用材料に不適格なものが混入していたのにそれに気付かず、その結果、敷砂層等の効果が低下していると認められる事例が見受けられた。

(ア) 京葉道路(四期)蘇我工事(49年3月末現在の敷砂層等の出来高24,199m3 この分の工事費7985万余円)においては、突き固めが不十分な試料で透水試験をしているにすぎず、このため、不適格なものが3,192m3 (工事費相当額1053万余円)混入していた。

(イ) 北陸自動車道長岡北工事(49年7月末現在の敷砂層等の出来高45,625m3 この分の工事費6935万円)においては、毎月1回のひん度で試料を作成して透水試験をしているが、山砂の品質は採取場所の差異によって異なるものであるから、試験のひん度は採取場所や採取数量に応じて定めるべきものであり、また、この試験に使用された試料も突き固めが不十分なものであって適切でなく、このため、不適格なものが8,642m3 (工事費相当額1313万余円)混入していた。

(ウ) 北陸高速道路長岡南工事(49年7月末現在の敷砂層等の出来高139,022m3 この分の工事費1億7099万余円)においては、10,000m3 に1回程度のひん度で透水試験に代えて粒度試験をしているが、(イ)と同様の理由でこのひん度は適切ではなく、また、この試験の結果更に透水試験をして透水性の良否を判断する必要がある材料が発見されたのに透水試験をしないでそのまま使用しており、このため、不適格なものが11,148m3 (工事費相当額1371万余円)混入していた。

(注1)  敷砂層及びサンドブランケット 軟弱地盤上に盛土を施工する場合に、盛土に先立って地盤上に施工する砂層を敷砂層といい、その下部に地盤の安定促進のため砂柱などを施工している場合には、その砂層をサンドブランケットと呼んでいる。地盤から上昇した地下水を排除して盛土に悪影響を与えないようにするとともに、盛土作業を容易にする効果がある。

(注2)  3層92回(モールド径15cm、ランマー4.5kg)の突き固め 土の締め固め試験をするための試料を作成する方法の一つ。鋼製の円筒(モールド)に試料とする土を3回に分けて入れ、各1回ごとにその表面に所定の重さのおもり(ランマー)を所定の高さから92回落下させて締め固める。

(注3)  最大乾燥密度 同一の突き固め方法で作成した試料であっても土砂の締め固めの度合いは試料の含水量によって異なるので、試験に当たっては、試料の含水量を変えながらその締め固めの度合いを測定する。この結果得られた最も締め固まった状態の試料を乾燥させた場合の土砂の密度を最大乾燥密度という。

検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

(トンネル工事の側壁型わく費の積算について)

 東京第二ほか3建設局(注) が昭和48年度から施行している中央高速道路笹子トンネル西(その2)工事ほか11工事について検査したところ、次のとおり、側壁型わく費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各工事においては、トンネルの覆工コンクリートの打設に当たって、側壁部分には組立式型わくと移動式型わくを使用することとしている。しかして、上記の各工事の予定価格の内訳のうち型わく費についてみると、側壁の組立式型わくの組立て、撤去、塗油等の経費(積算額合計1億2908万余円)については、日本道路公団が定めた土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)に示されている標準歩掛かりにより算出した額を2倍してこれをトンネル両側分としていた。しかし、上記の積算要領に示されている標準歩掛かりは、その内容からみてトンネル両側分を施工する場合に適合しているものと認められ、現に他団体の積算基準では同公団の歩掛かりと同程度のものを両側分としていることからみても、上記の積算は適切でないと認められた。

 このような事態を生じたのは、積算要領に組立式型わくの標準歩掛かりの適用方法が明示されていなかったことによると認められたので、当局の見解をただしたところ、日本道路公団では、49年10月に積算要領を改め、上記の標準歩掛かりをトンネル両側分のものとして適用することとする処置を講じた。

(注)  東京第二、金沢、名古屋、広島各建設局