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  • 昭和49年度|
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  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

護衛艦の定係港における停泊中の給電について処置を要求したもの


 護衛艦の定係港における停泊中の給電について処置を要求したもの

(昭和50年11月20日付け50検第407号 海上幕僚長あて)

 海上自衛隊が保有している護衛艦のうち「はるな」、「ひえい」及び「あまつかぜ」の3艦について定係港に停泊している間の電力供給の実態を調査したところ、次のとおり、給電方式が適切でないため不経済になっていると認められる事態が見受けられた。
 すなわち、上記の3艦は、横須賀港を定係港とするもので、いずれも年間のうちの相当期間この定係港に停泊しているが、この停泊中であっても、艦内に照明用等の電力を供給するために、航行中と同様、艦内にとう載されているタービン主発電機を主ボイラーによって駆動させている。そして、昭和49年度中には、停泊期間中の燃料として重油3,283.1kl及び軽油4号1,177.4kl(総額96,892,330円)を消費している。
 しかして、上記の主ボイラーは、主として推進用の蒸気を発生させるためのものであって、これを停泊中の少量の発電のためだけにか働してタービン主発電機により発電する場合は、所要電力量に対する燃料の消費量が大きく、このため発電コストが極めて高くつくことになるのである。そして、このようなことから、同自衛隊では、一般に、護衛艦についてはタービン主発電機に加えて発電コストの低廉なディーゼル発電機をとう載し、停泊中の電力はこれにより発電することとしており、前記の3艦についても、それぞれタービン主発電機2基(出力1基1,200kw又は800kw)のほかにディーゼル発電機がとう載されている(「はるな」及び「ひえい」は各2基(出力各300kw)、「あまつかぜ」は3基(出力各200kw)。
 しかるに、前記の3艦について停泊中の発電をディーゼル発電機によらずタービン主発電機によっているのは、次の理由によるとのことである。

(1) 「はるな」及び「ひえい」については、1基を非常時に備えて常に整備しておく必要があり、残りの1基だけでは停泊中の所要電力(平均450kW)を充足することができない。

(2) 「あまつかぜ」については、艦対空ミサイルがとう載されていて、この維持のために相当の電力を必要とするので、1基を非常用とすると、残り2基では停泊中の所要電力を充足できない場合がある。

 しかし、定係港に停泊中の艦船については、必ずしも所要電力の全量を艦とう載のディーゼル発電機だけでまかなう必要はなく、陸上から電力会社が供給する電力(以下「購入電力」という。)を受けることが可能であり、この購入電力の電気料金はディーゼル発電機による場合の発電コストと大差がないのであるから、停泊中の電力については、可能な限り艦とう載のディーゼル発電機でまかなうこととし、なお不足する分について購入電力によることとするなどの方途を考慮すべきであり、前記のように全量を発電コストの高いタービン主発電機によることとしているのは適切とは認められない。
 いま、前記の3艦について、上記の適切と認められる方法により停泊中の電力を供給することとしたとすれば、一時的に受電設備の設置に費用を要するが、電力コストの低減により年間約5500万円程度の経費を節減できることになるので、設置費用は早期に償却され、以後毎年度相当な経費が節減できることになる。
 ついては、上記の3艦は今後も引き続き横須賀港を定係港とするものであり、その停泊条件も当分変わることがないと認められることからみて、「あまつかぜ」については、さん橋に接岸係留していて陸上から電力の供給を受ける受電設備の設置が容易であると認められるから、購入電力の使用を積極的に考慮することとし、また、現在、さん橋に接岸できず浮標に係留している「はるな」及び「ひえい」についても給電方法について総合的に検討した上適切な改善策を講じ、もって経費の節減を図る要があると認められる。