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  • 昭和49年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第4 文部省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

児童生徒急増市町村公立小中学校施設特別整備事業費補助金の交付について処置を要求したもの


児童生徒急増市町村公立小中学校施設特別整備事業費補助金の交付について処置を要求したもの

 (昭和50年11月20日付け50検第406号 文部大臣あて)

 埼玉県ほか8都府県管内の市町・特別区等が昭和46、47両年度国庫債務負担行為に基づき46年度から49年度までの間に文部省から国庫補助金の交付を受けて実施した児童生徒急増市町村公立小中学校施設特別整備事業について検査したところ、埼玉県新座市ほか16市・特別区等が実施した17事業(国庫補助金6億5126万余円)について、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の補助事業は、児童又は生徒が急増する市町村における公立小中学校の教室不足の解消を図るため学校用地を取得するもので、本件補助金は、この取得に要する経費の一部に充てるため交付するものである。したがって、補助対象経費は、当然校舎の敷地や運動場等学校用地の取得に最小限必要な経費とすべきものである。ところが、上記の17事業は、学校に隣接する一般道路の新設や拡幅のための用地の買収費等直接学校用地に必要がないと認められる経費を補助対象経費に含めていて、補助対象経費の算定が適切でないと認められ、同省がこの補助対象経費をそのまま認めて補助金を交付しているのは適切とは認められない。いま、仮に、上記の17事業について、上記のような適切でないと認められる経費を本件補助の対象としなかったとすれば、補助金交付額は約4900万円程度減少したこととなる。

 このような事態を生じたのは、同省が定めた本件国庫補助金交付要綱等に学校設置に関連する道路等に対する補助対象の範囲についての基準が明確に示されていなかったこと、この要綱等の適用についての都道府県及び事業主体に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

 ついては、同省においては本件国庫補助金を今後も引き続き交付するのであるから、速やかに交付要綱等の規定を明確にするとともに、都道府県及び事業主体に対する指導の徹底を図り、更に、補助金交付に当たっての審査及び額の確定に当たっての調査を十分に行うなどして、もって補助金交付の適正を期する要があると認められる。

 検査の結果、本院の注意により、当局において処置を講じたものが次のとおりある。

 (校舎等新営工事における鉄筋加工組立て費等の積算について)

 文部省及び筑波、東京工業、滋賀各大学が、昭和49年度に契約した筑波大学医学専門学群校舎新営その他工事ほか15工事について検査したところ、次のとおり、建物の鉄筋工事費及びコンクリート工事費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) 鉄筋工事費(積算額10億1614万余円)の鉄筋加工組立て費については、文部省が定めた「積算指針(建築工事)単価算出要領」(以下「積算要領」という。)に定められている歩掛かりを基に算定していた。しかして、上記の歩掛かりは細物の鉄筋については丸鋼を使用する場合を想定して定められたものであるが、鉄筋コンクリート造り等建物の鉄筋としては、近年、異形棒鋼の使用が一般化しており、これを使用する場合は継ぎ手、端部のフック加工をしないで済む場合が多いため丸鋼を使用する場合より加工度合などが少なくなっており、しかも、上記の各工事では鉄筋の大部分について異形棒鋼を使用することとして設計しているのであるから、この点を考慮して積算すべきであったと認められる。いま、前記の各工事について適切と認められる歩掛かりによって計算したとすれば、積算額を約9100万円程度低減できたと認められた。

(2) コンクリート工事費(積算額20億3849万余円)のコンクリート打設費については、前記の積算要領に基づき、コンクリートポンプ車40m3 /h級を使用して打設することとして定めた歩掛かりを基に算定していた。しかし、コンクリート打設に使用するポンプ車は年々大型化し、50m3 /h級から60m3 /h級の高性能のコンクリートポンプ車が一般に使用されていて、上記の歩掛かりは施工の実態に適合していないと認められる。いま、前記の各工事について施工の実態に即してコンクリート打設費を積算したとすれば積算額を約2200万円程度低減できたと認められた。

 上記について当局の見解をただしたところ、文部省では、50年5月に積算要領を改め、施工の実態に適合した歩掛かりを定める処置を講じた。

 (財団法人日本武道館の経理について)

 文部省では財団法人日本武道館に対してその運営に要する費用の一部を補助しており、昭和48年度におけるこの補助金の交付額は1739万余円となっている。
 しかして、上記の交付額は、日本武道館の48年度における運営による収入と運営に要した費用の開差分に相当する額となっていて、同館では、この補助金を受け収支同額として48年度決算を了している。その経理処理の内容を検査したところ、(ア)施設や設備の使用料の徴収に当たって、徴収額を任意に減額処理していたり、(イ)週4時間程度しか勤務しない職員に対して常勤職員としての給与を支払っていたり、(ウ)未払金を過大に計上していたり、(エ)前受使用料を運営収入に振り替えないまま放置していたり、(オ)仮払金のうちに領収書がなく使用目的が明確でないものが計上されていたりしているなど適切でないと認められる点が見受けられた。

 上記について当局の見解をただしたところ、文部省では、日本武道館に対して適正な経理処理を行うよう指導し、同館では、この指導を受けて50年3月に関係規程を整備するなどの処置を講じた。