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  • 昭和50年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第4 厚生省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

血液代金自己負担金支給事業について改善の意見を表示したもの


 血液代金自己負担金支給事業について改善の意見を表示したもの

(昭和51年11月26日付け51検第455号 厚生大臣あて)

 厚生省の補助を受けて日本赤十字社等が実施している血液代金自己負担金支給事業(以下「支給事業」という。)における血液代金給付費は、昭和49、50両年度で11億7440万余円(うち49年度分4億5653万余円)に上っている。
 この支給事業は、同省が定めた血液代金支給要綱等(以下「支給要綱等」という。)に基づいて、疾病の治療に際して輸血を受けた患者(以下「被輸血者」という。)が医療機関に対して医療費の自己負担額を支払った場合、総医療費のうち輸血された血液製剤に係る薬剤料(以下「血液代金」という。)の自己負担相当額(以下「血液代金自己負担金」という。)を被輸血者に支給することによって、血液代金の自己負担分を無料化し、もって献血者の善意に報いるとともに、献血思想の普及に資することを目的としたもので、国は、その支給に要した費用の全額を補助している。

 しかして、上記の支給事業について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の支給要綱等によれば、血液代金自己負担金の支給額は、被輸血者に係る社会保険各法の給付率(以下「保険給付率」という。)によって算出される医療費の保険給付額と医療費の自己負担額との割合によって血液代金をあん分して算出された被輸血者負担相当額としている。
 しかし、被輸血者は、医療費の自己負担額を医療機関に対して支払うが、一方、医療費の自己負担の軽減を図るため、社会保険各法の高額療養費支給制度により1医療機関に対して支払った自己負担額が1箇月3万円(51年8月以降3万9千円。以下同じ。)を超える場合には、その超える部分に相当する額の高額療養費が後日支給され、また、附加給付制度を実施する社会保険の場合には、当該制度により附加給付が後日支給されるので、被輸血者が実際に負担した医療費は、前記の自己負担額からこれら高額療養費等を差し引いた額(以下「実自己負担額」という。)となる。このように前記の保険給付率によって算出される自己負担額と被輸血者の実際の負担額とが相違する場合が少なくないのに、一律にこの保険給付率を基礎として支給額を算定しているため、本院が、国公立等の医療機関59を選んで、これらの機関において50年中に輸血を受け本件給付費が支給されている6,521件について調査した結果によっても、被輸血者が実際に負担した血液代金を超える額の支給を受けることとなっているものが6,151件あった。

 このような事態を生じたのは、被輸血者の総医療費が相当高額となっていて、高額療養費支給制度等の適用を受ける者が多数を占めている現状の下においては、血液代金自己負担金の支給は血液代金に実自己負担額を総医療費で除して得た率(以下「実自己負担率」という。)を乗じた額とするなど、より合理的な方法により算定するのが適切と認められるのに、支給要綱等では、高額療養費の取扱いについて被輸血者への支給額は3万円を限度とする旨を定めているにすぎず、また、附加給付についてはその取扱いについての明確な定めを欠いているなど、現行制度においては、被輸血者に係る総医療費とその実自己負担額とを考慮して支給額を決定することとしていないことによると認められる。
 ついては、同省においては、高額療養費等が支給される場合には、より合理的な実自己負担率により支給額の算定を行うことができるよう支給要綱等を改定整備し、支給方法の改善を図る要があると認められる。