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  • 昭和50年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 政府関係機関その他の団体別の事項|
  • 第16 日本住宅公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費の積算について処置を要求したもの


 住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費の積算について処置を要求したもの

(昭和51年11月29日付け51検第460号 日本住宅公団総裁あて)

 日本住宅公団関西支社が、昭和50年度に施行している長期別分ちどりが浜団地(仮称)A地区高層建築その他工事ほか9工事(当初工事費82億7200万円)について検査したところ、次のとおり、予定価格の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各工事はいずれも鉄骨・鉄筋コンクリート造りの高層住宅11棟2,014戸を建設するもので、施工中の騒音、振動による公害の発生を抑制するため、基礎ぐいはベノト工法(注) による現場打ち鉄筋コンクリートぐい(以下「ベノトぐい」という。)を施工することとしており、予定価格の積算に当たって、このベノトぐいの施工費(掘削費、鉄筋加工組立て費及びコンクリート打設費等)については、この種工事を施工する業者から徴した見積書の金額を採用してベノトぐい1m当たり45,200円(くい径1,500mmのもの)又は39,100円(くい径1,300mmのもの)総額937,120,000円と積算している。

 しかして、このベノトぐいの施工費については、他の団体等はこの種工事の一般化からいずれも施工の実態に基づいた積算基準を定めこれに基づいて積算していて、その積算単価は上記の単価を相当程度下回っており、また、一般の物価資料誌掲載の施工費をみても前記の単価を相当程度下回っている状況であるから、本件工事の施行に当たっては、他団体の積算例や資料を参考にするなどして施工費を積算すべきであったと認められる。

 いま、前記の各工事のベノトぐい施工費について他団体の積算基準等を参考として積算したとすれば、ベノトぐい1m当たり34,300円(くい径1,500mmのもの)又は26,600円(くい径1,300mmのもの)総額682,794,650円となり、前記の積算額を約2億5400万円程度低減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、住宅の高層化に伴い、騒音、振動の公害対策上の見地から、この種工法による工事が多く施工されているのに、この点について積算担当者の認識が十分でなかったことにもよるが、現場打ち鉄筋コンクリートぐいに関する積算基準がまだ整備されていないため、積算担当者が業者の見積りに依存する結果になっていることによると認められる。

 ついては、同公団においては、今後この種工事を多数施行することが見込まれるから、施工の実態等を調査検討して積算基準を整備するなどの処置を講じ、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(注)  ベノト工法 フランスのベノト社が開発した掘削機で地中に円筒形の穴を掘削し、かご状の鉄筋を建て込み、コンクリートを打設して基礎ぐいを造る工法