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  • 昭和51年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 所管別の事項|
  • 第5 農林省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

製品生産事業の実施について改善の意見を表示したもの


(8) 製品生産事業の実施について改善の意見を表示したもの

(昭和52年11月30日付け52検第443号 林野庁長官あて)

 林野庁では、国有林野事業として立木を素材(丸太)にする製品生産事業を行っており、昭和51年度では、その生産量467万余m3 のうち360万余m3 を直よう(注1) の作業により北見ほか13営林局管内295営林署の474製品事業所等で生産している。

 この直ようの作業による素材の生産の実施についてみると、相当数の事業所について毎年生産性(1人1日当たりの生産量で示す。)が低下する傾向が見受けられ、しかして、51年度においては、これら製品事業所等の中には作業の生産性が、同庁が素材の生産に当たっての生産性の指標として事業所別に定めている標準林内生産性(注2) に比べてかなり下回っているものが相当数ある状況である。

 そして、上記の事業所等のうち、その生産性が標準林内生産性の50%以下であるうえ、生産した素材の販売による損失が著しいものが北見ほか5営林局(注3) 管内31営林署の38事業所あり、これらの事業所の51年度における素材の生産量は13万余m3 となっている。しかして、この数量は標準林内生産性を基準にして、仮に算定してみた生産量40万余m3 の33%にすぎず、また、これを生産するのに必要な延べ人員は、同基準を基にして算定すれば51千余人となるが、実際には152千余人がか働している状況である。

 一方、直ようによる素材生産を実施するに当たっては、各事業所ごとに年間の計画生産量を決定しており、前記38事業所のその計画生産量は21万余m3 となっている。そして、これは、前年度の計画生産量、実績生産量等に当年度の作業条件の変化を加味して実施可能な数量として定めているため、標準林内生産性を基準として算定した数量を相当下回ったものとなっているが、前記13万余m3 はこの計画生産量の63%にすぎない。

 このような状況となったのは、賃金の支払形態を現行の出来高制から日給制に変更すること及び作業主任者を現場に配置すること等について労使間の交渉中立木の伐倒、集材、玉切りを行う主作業が停止したこと、振動障害認定者又は私傷病者等が休暇等のためセット人員(注4) が欠け、安全が保てないと作業者が主張して主作業を停止したことなどに対し、適切な作業管理を行わなかったことによると認められる。

 その結果、生産量が減少しているにもかかわらず作業の延べ人員が増加しているものがあったり、主作業のための延べ人員が著しく減少しているにもかかわらず主作業の付帯作業を行う副作業のための延べ人員が逆に増加しているものがあったりしている状況である。

 いま、仮に前記38事業所における素材の生産が標準林内生産性と同能率でそれぞれの生産数量を生産したとすれば、これに要する作業のための延べ人員に対する賃金は合計3億2952万余円となるものと認められるが、実際は9億7899万余円を要していて、前記のような製品生産事業における生産性の低さがひいては、素材の生産原価を著しく割高なものにしており、51年度の上記生産素材の販売価額はこれに要した生産原価を下回ることとなっている。

 ついては、上記38事業所のほか、これに類似する事業所が相当数あるから、今後直ようにより製品生産事業を実施するに当たっては、進行状況を的確には握し、セット人員の弾力的な運用など作業人員の適正な配置を行い作業管理を適正にして生産性の向上に努めるとともに、必要によっては請負ないしは立木処分に付することについても検討し経済的な生産方法を執るなど業務を的確に行う処置を講ずるべきであり、このことは近時の国有林野事業特別会計の財務状況並びに直ようによる製品生産からの収入が本特別会計の主要な収入であることに照らしても、特に緊要と認められる。

(注1) 直よう 国自らが労務雇用を行って実施する事業実行形態の一つであって、民間団体等に行わせる「請負」に対応する区分である。
(注2) 標準林内生産性 林野庁が素材の生産を行うに当たって、その企業的能率性の判断の指標として、46年度から採用しているもので、毎年度事業所ごとに人工林・天然林の別、現場の傾斜別、集材距離別等の作業条件に従い、1人1日当たりの標準的な生産量として定めたものである。
(注3) 北見ほか5営林局 北見、青森、秋田、前橋、長野、熊本各営林局
(注4) セット人員 立木の伐倒、集材、玉切りを行う一連の作業工程に係る実行単位を構成する人員をいう。