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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (国土庁)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

地籍調査事業の実施について処置を要求したもの


地籍調査事業の実施について処置を要求したもの

(昭和53年11月27日付け53検第425号 国土庁長官あて)

 地籍調査は、国土調査法(昭和26年法律第180号)に基づき、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、併せて地籍の明確化を図ることを目的として行う最も基本的な調査である。そして、この調査は主として市町村で行われ、同法の規定により調査に要する経費の3分の2相当額を国が負担しており、昭和52年度の事業費84億1341万余円に対し国庫補助金56億0894万余円を交付している。

 この調査は、27年度から毎年度継続的に実施されており、その間調査の促進を図るなどのため4度の制度上の変遷を経て、52年度末までに前記事業費を含めて総事業費549億4737万余円(これに対する国庫補助金364億2067万余円)で全国で調査を要する地域の面積約280,000km2 のうち約20%に当たる56,950km2 について行われているが、現在は、国土調査促進特別措置法(昭和37年法律第143号)第3条の規定に基づいて策定された国土調査事業十箇年計画(45年度から54年度まで)により、上記280,000km2 のうち交通網の整備、中核都市又は地方都市の整備等国土の開発が見込まれて特に緊急に調査を要すると認められた85,000km2 の地域について調査を行うことになっているものである。しかし、45年度から52年度までの実施面積をみると、30,639km2 となっていて、計画末期に至っているのにその進ちょく率は約36%にとどまっている状況である。

 地籍調査は、前記のとおり主として市町村がその地域内の毎筆の土地について、その所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積の測量等の作業を行った結果に基づいて原図及び地籍簿案を作成し、それらについて公告、一般の閲覧及び調査上の誤り又は誤差の修正の各手続を終了して、本調査の成果としての地図及び簿冊とするものである。また、これらの地図及び簿冊(以下「成果品」という。)は、主務大臣又は都道府県知事に送付され、その認証を受けた後、その写しが登記所に送付され、これに基づいて土地登記簿に所要の変更の登記が行われることにより、その後の地籍の変動が遺漏なく記録される基礎が確立され、土地取引の安全に資されることとなるばかりでなく、他方、同一の写しが市町村においても一般の閲覧に供されて、土地の所有と利用の関係を明らかにする基礎資料として広く国土開発等に利活用されることになるものである。

 しかして、46年度から51年度までの間に補助金の交付の対象となった地籍調査のうち、北海道ほか19都府県管内の190市町村が実施した5,045 km2 、事業費62億6173万余円(これに対する国庫補助金41億7449万余円)について、本院が53年中に地籍調査の実施状況及びその後の処理状況を調査したところ、北海道ほか15都府県管内(注) の64市町村において、次のとおり、補助事業の実施が適切を欠いたものや補助事業実施の効果があがっていないと認められるものが見受けられた。

(1) 成果品を作成したとしているが、公告、閲覧等の手続の全部又は一部を行わないまま調査終了年度経過後検査当時まで1年以上にわたり原図及び地籍簿案を保管しているなど補助事業の実施が適切でないと認められるもの(調査面積245km2 、筆数284,304筆、事業費相当額3億8928万余円、これに対する国庫補助金相当額2億5952万余円)

(2) 成果品の作成後主務大臣又は都道府県知事の認証の請求を行わず検査当時まで1年以上にわたってこれを保管しており、ひいては補助事業の効果があがっていないと認められるもの(調査面積99km2 、筆数52,224筆、事業費相当額1億1021万余円、これに対する国庫補助金相当額7347万余円)

(3) 成果品の認証を受けたにもかかわらずその後検査当時まで6箇月以上経過しているのに、成果品の写しを登記所へ送付しないで保管しており、ひいては補助事業の効果があがっていないと認められるもの(調査面積119km2 、筆数114,764筆、事業費相当額1億7096万余円、これに対する国庫補助金相当額1億1397万余円)このような事態を生じたのは、

(ア) 原図及び地籍簿案は土地所有者の確認を受けるため、作成後速やかに公告、一般の閲覧及び修正の各手続を執らなければならないのに、補助事業の範囲が明確に指示されていないため、指導に当たる都道府県や事業主体である市町村のなかには、原図及び地籍簿案の作成をもって補助事業が終了したものと理解しているものが多く、公告等の手続をなおざりにしていること、

(イ) 上記手続が終了した成果品について速やかに認証を受け、その写しが登記所に送付され登記の変更等が行われなければ地籍調査の効果は発現しないと認められるのに、この点についての認識が十分でないため、認証の請求や登記所への送付をなおざりにしていること

が主な原因と認められるが、更に、

(ア) 土地所有者の協力が得られなかったり、土木工事が施行されたりしているなどのため、土地の一部について公示した調査期間内に筆界が確認できない事態が生じた場合には、その分については筆界未定として処理し、確認を了した他の多くの土地とともに公告等の事後の一連の手続を進め成果品の速やかな活用を図るべきであるのに、この確認処理にいたずらに時日を費しているものがあること、

(イ) 現地調査後は、原則としてその後の土地の異動等について再調査を要しないことになっているのに、公告、一般の閲覧、認証の請求、登記所への送付の各段階ごとに宅地造成、道路建設、抵当権の設定等に伴う分、合筆などの土地の異動等について再調査を行い、修正を繰り返していて、最終的な処理に至らないでいるものがあること

からみて、専任職員が不足していることもあって都道府県及び市町村における地籍調査作業の意義について理解が十分でないことや、事務処理上の判断が適切でないこともその一因であると認められる。
 ついては、上記の事態をかえりみて、これらの事業主体について国土調査法に定める各手続を完了し事業の目的を達成させ、かつ、今後、本事業に着手する市町村等において同様事態の再発を防止して本事業を円滑に実施させるため、国土庁において、補助事業の範囲を明確に指示し、また、地籍調査事業の効果の発現を図るため、地籍調査の趣旨の徹底を期するよう指導を行うとともに、現地調査期間内に筆界が確認できない事態及び現地調査後の再調査に対する処理方針を設け、更に、専任職員の養成について指導を強化するなどの措置を講じ、補助事業の適正な遂行を図り、その効果を十分にあげる要があると認められる。

(注)  北海道ほか15都府県 北海道及び青森、福島、埼玉、東京、新潟、福井、愛知、大阪、兵庫、岡山、広島、徳島、愛媛、佐賀、宮崎の各都府県