ページトップ
  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第2 大蔵省|
  • 不当事項|
  • 租税

租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったもの


(5) 租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか197税務署
納税義務者又は源泉徴収義務者 555人

 上記の198税務署において納税義務者等555人から租税を徴収するに当たって、調査が十分でなかったため、徴収額が不足していたものが521事項1,123,031,816円、徴収額が過大になっていたものが34事項63,535,899円あった。これらについては、本院の注意により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。これを国税局ごとに集計して税目別に掲げると、別表 のとおりである。

(説明)
 これらの徴収過不足の事態は、当局が課税資料の収集、活用を適確にしていなかったり、法令適用の検討が十分でなかったり、納税者が申告書等において所得金額、税額の計算等を誤っていたのをそのまま見過したりするなど調査が十分でなかったことによって生じたもので、その主な態様を示すと次のとおりである。

1 源泉所得税に関するもの

(1) 配当(49事項)、給与等(32事項)

 源泉徴収義務者は配当、給与等の支払の際、また、未払の配当及び利益処分の役員賞与については支払の確定した日から1年を経過した日においてその支払があったものとみなして、源泉所得税を徴収し、原則として徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付することとなっている。そして、源泉徴収義務者が納期までに納付していなかったり、税額の計算を誤ったりしたときは、納税の告知をしなければならないことになっているのに納税の告知をしていなかったものである。

2 申告所得税に関するもの

(1) 譲渡所得(78事項)

 土地、建物等の譲渡益については譲渡所得として課税することになっているが、譲渡益が発生しているのに課税していなかったり、税額の計算を誤ったり、また、居住用財産の譲渡、収用交換等による財産の譲渡については特別控除が認められているが、これらの財産に該当しないのにこの特例を適用したりしていたものである。

(2) 配当所得(26事項)、雑所得(25事項)

 法人からの利益の配当等がある場合は源泉所得税を徴収するほか、源泉分離課税の配当を除きその支払を受ける者に申告所得税を課税することになっているが、これら配当等による所得があるのに課税していなかったり、また、貸付金の利子等による所得がある場合は雑所得として課税することになっているが、これら貸付金の利子等による所得があるのに課税していなかったりしていたものである。

(3) 資産所得の合算(23事項)

 生計を一にする一定範囲の親族のうちに資産所得(利子所得、配当所得及び不動産所得)を得ている者がある場合、これらの者の資産所得の金額を主たる所得者の所得に合算した額が所定の金額を超えるときは、その合算した所得に対する税額を計算し、その税額を各人の所得に応じてあん分してそれぞれの税額を計算することになっているが、これらの親族の資産所得を合算していなかったものである。

(4) みなし法人課税(22事項)

 青色申告書を提出している事業所得者等の所得の金額及びその税額は、その者の選択によりみなし法人課税の方式によって計算することができるが、社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用を受けることができる医業等を営む個人がこの課税方式を選択した場合には、同特例を適用しないで計算した事業所得の金額から事業主報酬の額(給与所得として源泉所得税を納付する。)を控除した残額と、同特例を適用して計算した事業所得の金額との、いずれか少ない金額をみなし法人所得額とすることになっているのに、この特例を適用して計算した事業所得の金額から更に事業主報酬の額を控除した額をみなし法人所得額とするなどして申告所得税の額を誤っていたものである。

(5) 給与所得(20事項)

 利益処分による賞与又は賞与とみなされる金額についてはその他の給与等とともに給与収入として源泉所得税を徴収するほか、その支払を受ける者に所定の金額を超える給与収入がある場合などには、申告所得税を課税することになっているが、これら給与等による所得があるのに課税していなかったものなどである。

3 法人税に関するもの

(1) 同族会社の留保金額(34事項)

 同族会社が利益を留保した金額のうち所定の金額を超える留保金額については、通常の法人税のほかに特別税率による法人税を課税することになっているが、同族会社で上記所定の金額を超える留保金額があるのに課税していなかったり、留保金額に含めることになっている欠損繰戻しによる還付法人税額等を含めていないなど留保金額の計算を誤ったりしていたものである。

(2) 退職給与引当金(27事項)

 退職給与引当金に繰り入れた金額は、期末退職給与の要支給額の100分の50相当額の範囲内で所定の金額を損金に算入することができ、また、使用人が退職した場合には、同引当金のうち退職者の前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することになっているが、期末退職給与の要支給額の100分の50相当額を超えるなど繰入れ額の計算を誤ったり、取り崩し額を過少に計算したりしていたものである。

(3) 土地の譲渡等に係る譲渡利益金額(23事項)

 昭和44年1月1日以後に取得した土地を譲渡したなどの場合には、その譲渡利益金額については通常の法人税のほかに特別税率による法人税を課税することになっているが、譲渡利益金額があるのに課税していなかったり、譲渡経費の額の計算を誤って譲渡利益金額を過少に計算したりしていたものである。

(4) 減価償却資産の償却(21事項)

 新築貸家住宅、耐火建築物等の特定の減価償却資産については、普通償却のほか割増償却等の特例が認められているが、これらの特定の減価償却資産に該当しないのにこの特例を適用したり、償却限度額の計算を誤ったりして償却額を過大に計算していたものである。

(別表)

租税の徴収に当たり徴収額に過不足があったものの図1