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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第3 文部省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

合板型わく費等の積算について


合板型わく費等の積算について

 文部省及び東北大学ほか10大学等(注1) が、国立学校の文教施設の整備充実の一環として昭和52年度に施行している長岡技術科学大学機械建設系研究棟新営工事ほか21工事(工事費合計140億9144万余円)について検査したところ、次のとおり、文部省が定めた積算指針及びこれに基づいて算出した複合単価(注2) を適用して計算した合板型わく費、合板型わく運搬費及びモルタル塗り金こて仕上げ費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) 階段、パラペット(注3) 、ひさし等の合板型わく費(総数量37,771m2 分1億6417万余円)の積算についてみると、型わくの加工、組立て等に要する労務工数についてはパラペット、ひさし等についても一律に階段の型わくの加工、組立て等の場合に適用する1m2 当たり型わく工0.27人、普通作業員0.14人を使用していた。
 しかし、階段の型わくは、階段の各段型に合わせて合板を切断加工し、これを割り付けて組み立てるなどの複雑な作業を要するのに対し、パラペット、ひさし等の型わくは、加工、組立てが容易であって、その労務工数は作業が容易な壁、床等の型わくの労務工数と同程度であり、しかも、本件各工事における型わくの使用割合は階段25%、パラペット25%及びひさし等50%程度となっていて、パラペット及びひさし等の型わくは階段の型わくよりその使用割合がはるかに大きいのであるから、このような場合に、上記のように階段の型わくの労務工数を一律に採用しているのは適切とは認められない。したがって、本件各工事についても作業の難易や型わくの使用割合を考慮して型わくの加工、組立て等の労務工数を算定して積算したとすれば、積算額を約3660万円程度低減できたと認められた。

(2) 合板型わく運搬費(総数量567,918m2 分4599万余円)の積算についてみると、8t積みトラックを使用することとし、型わく1m2 当たりの型わく材の重量を35kgとして計算したうえ、積載可能容積との関係から車両1台当たりの積載量を125m2 分としていた。
 しかし、合板型わくは、合板(1.8m×0.9m厚さ12mm)や角材(100mm×100mm長さ4m)等の木材と丸パイプ(径48.6mm長さ4m)、支柱(長さ2.1m〜3.5m)等の鋼材によって構成されており、この運搬に当たっては、それぞれの形状に応じて効率よく積載することができるから、これを考慮しないで定めた上記の積載量は適切とは認められない。しかして、文部省が実施した実態調査の結果や他省庁等における型わく運搬費の積算の基準によると、いずれも型わくの積載量は上記の積載量を相当程度上回っている状況であった。したがって、本件各工事についても運搬の実情に適合した積載量を算定して積算したとすれば、積算額を約1700万円程度低減できたと認められた。

(3) 内壁のモルタル塗り金こて仕上げ費(総数量63,162m2 分1億1300万余円)の積算についてみると、モルタル塗り金こて仕上げの労務工数を1m2 当たり左官工0.135人、普通作業員0.03人としていた。
 しかして、上記のモルタル塗り金こて仕上げの労務工数は、仕上げモルタルに消石灰などの混和材を使用しない場合のものであるが、金こて仕上げには作業能率を上げるなどのため仕上げモルタルに消石灰などを混ぜて用いるのが通例であり、文部省が実施した実態調査の結果をみても混和材を使用していて、その場合の労務工数は上記の労務工数を相当程度下回っている状況であるから、このような実態を考慮しないで定めた労務工数は適切とは認められない。したがって、本件各工事についてもこのような実態に対応した労務工数により積算したとすれば、積算額を約540万円程度低減できたと認められた。
 上記各項についての本院の指摘に基づき文部省では53年10月に積算指針を改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1)  東北大学ほか10大学等  東北、筑波、お茶の水女子、名古屋、滋賀、京都、大阪、大阪外国語、鹿児島各大学、高エネルギー物理学研究所及び分子科学研究所

(注2)  複合単価  工事費の構成要素である合板型わく、モルタル塗り金こて仕上げ等各種工事の細目ごとに労務費、材料費及び機械経費等を算出合計して、工事細目の単位数量当たりの金額を示したもの

(注3)  パラペット  高さの低い壁の総称で、建築では屋上などに見られる手すり壁をいう。