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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第5 農林省(昭和53年7月5日以降は「農林水産省」)|
  • 不当事項|
  • 補助金

公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(20)−(34) 公共事業関係補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林本省 (項)土地改良事業費 (項)農用地開発事業費 (項)農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業費 (項)農業施設災害復旧事業費
(組織)林野庁 (項)林業振興費 (項)林道事業費
部局等の名称 東北農政局ほか4農政局(注) 、林野庁
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)、農林水産業施設災害復旧事業費
国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等
事業主体 県5 市町9 計14事業主体
補助事業 北海道足寄郡足寄町林道塩幌沢線開設等16事業
上記に対する国庫補助金交付額合計 255,134,528円

 上記の16補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたり、補助の目的を達していなかったりしていて、国庫補助金95,023,252円が不当と認められた。これを道県別に掲げると、別表 のとおりである。
 これは、北海道ほか39都府県で全国の事業箇所137,628のうち3.5%に当たる4,778(事業費182,981,237,164円、国庫補助金100,760,035,738円)について検査した結果である。

(注)  東北農政局ほか4農政局  東北、関東、東海、中国四国、九州各農政局

(説明)
 農林省所管の公共事業関係補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって施行するもので、一般会計では、ほ場及び農道の整備、農用地及び農業用施設の災害の防止、農用地及び草地の開発、林道の開設等の工事並びに農地及び農業用施設等が台風等で被災したものについての災害復旧等の工事に要する費用について、また、国有林野事業特別会計(治山勘定)では治山ダム等の建設及び災害復旧工事に要する費用について、直接又は間接に事業主体である地方公共団体等に対してそれぞれの法律等で定められた率により補助している。
 しかして、これら補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の14事業主体が実施した土地改良、農道、林道の整備及び災害復旧等の公共事業16事業は、設計、積算又は施工等が適切でないと認められた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

 工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの

5事業 不当と認めた国庫補助金 7,902,637円

工事の施工が設計と相違しているもの

10事業 不当と認めた国庫補助金 12,110,615円

 補助の目的を達していないもの 1事業 不当と認めた国庫補助金 

1事業 不当と認めた国庫補助金 75,010,000円

(別表)

道県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要
千円 千円 千円 千円
(20) 北海道 足寄郡足寄町林道塩幌沢線開設 足寄町 54,489 27,244 1,442 721 工事の設計不適切
この工事は、林業における生産性の向上や労働環境の改善等を図るため、林道延長2,160mを開設する計画のうち足寄町塩幌地区内に延長1,194mを施行したもので、設計書、図面及び仕様書によると、下層路盤材1,293m3 は切り込み砂利を使用することとなっている。これは、北海道林務部が示している林道事業設計指針において下層路盤材は切り込み砂利又はこれと同程度の効用を有する火山灰を使用できることになっていることから、設計に当たって、現場までの運搬費を含めて1m3 当たりの価格を算出して比較し、切り込み砂利の価格3,004円、火山灰の価格3,018円となったので切り込み砂利を使用することとしたものである。しかし、上記の火山灰の価格についてみると、同町活込地区内の採取地から現場までの実際の運搬距離は24kmであるのに、誤って45kmとして計算したものであって、これを修正して計算すると1m3 当たりの価格は2,102円となるから、火山灰を使用することとすべきであったと認められる。
(21) 岩手県 下閉伊郡山田町轟木地区農道52年災害復旧 山田町 7,437 7,206 788 764 工事の施工不良
この工事は、昭和52年5月の織笠川のはん濫により被害を受けた川沿いの農道延長127mを復旧するための土留めコンクリートブロック練り積み擁壁347m2 等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、うち擁壁延長19m(45m2 )は基礎の洗掘を防止するため岩盤をみぞ型に50cm掘り下げた後擁壁を積み立て、擁壁基礎の前面を幅30cm、高さ50cmのコンクリート3m3 で被覆することになっている。しかし、実際は、岩盤を粗雑に掘削したため基礎前面の岩盤がくずれて掘り下げた効果がなくなっているばかりでなく、被覆コンクリートも全く施工しなかったため、基礎岩盤の一部が既に洗掘されている状況である。
(22) 宮城県 角田市角田地区農村総合整備モデル農道整備 角田市 9,762 4,881 1,393 696 工事費の積算過大
この工事は、農業生産の基盤整備のため農道延長681mの幅員の3mから5mへの拡幅・勾配緩和を図るため施工するもので、設計書、図面及び仕様書によると、道路の両側斜面及び路面を7,658m3 掘削し、この掘削土のうち、652m3 を盛土に流用し、残り7,005m3 を捨土することとしている。しかして、土工費の算定についてみると、農林省構造改善局が定めた「土地改良事業等機械施工標準歩掛算定表」(以下「算定表」という。)により、捨土は0.8m3 のトラクタショベル及び8tダンプトラックで積み込み、運搬し、盛土402m3 は0.4m3 のトラクタショベル及び4tダンプトラックで積み込み、運搬することとし、トラクタショベル及びダンプトラックの作業能力の算出に当たって、積み込むのは掘りゆるめられた土であることから、算定表に従って計算した能力に更に0.74を乗じて、1時間当たり処理土量を、捨土分については積込み19m3 運搬15.61m3 、盛土分については積込み9.5m3 運搬8.15m3 と算出し、残土運搬費及び盛土運搬費をそれぞれ1m3 当たり379円及び602円と計算していた。しかし、算定表で定めている各種の数値は掘削前の状態における土量を前提として定められているものであるから、上記のように0.74を乗じて能力を減じたのは誤りであり、また、積込運搬に使用する機械類については、本件工事程度の土量がある場合、道路交通その他に特別の事情がない限り1.3m3 のトラクタショベル及び11tダンプトラックの組合せにより施工するのが経済的であり、かつ一般的であると認められる。したがって、本件工事について適切と認められる掘削積込機械の組合せによることとし、適切な計算をしたとすれば、1時間当たり作業能力は、捨土の積込み41.78m3 運搬29.03m3 、盛土の積込み37.6m3 運搬9.94m3 となり、残土運搬費及び盛土運搬費の1m3 当たり単価は229円及び325円となる。いま、この単価により工事費を修正計算すると8,369,000円となり、本件工事費はこれに比べて約1,393,000円割高となっていると認められる。
(23) 宮城県 志田郡鹿島台町赤沢地区老朽ため池整備(第1号及び第2号) 鹿島台町 8,180 4,090 2,939 1,469 工事の施工不良
この工事は、老朽化した鹿島台町赤沢地区内のため池堤防の堤体(高さ6.9m、堤長108m、斜面の勾配2割)の漏水防止及び補強のため、堤防の貯水側の斜面延長38mに防水シート工、裏側斜面に盛土1,941m3 を施工したものである。しかして、設計書、図面及び仕様書によると、防水シート工365m2 は、斜面の下端を掘削して高さ1mのシート止めコンクリートを設置し、これに防水シートを張り付けてシートの先端を固定した後、掘削土177m3 を埋めもどして十分締め固め、斜面に粒径30mm以下の砕石を厚さ10cm敷きならして転圧し、砕石に密着するようにシートを被覆したうえ、斜面の上端でシートを固定することになっている。しかるに、掘削土の埋めもどしに当たり、施工時期が冬期であったため土が凍結したのにこれをそのまま埋めもどし、締め固めも十分でなかったため、施工後の気温の上昇に伴う融解により埋めもどし部分を主として斜面の下部が幅1.3mから3.8m程度85m2 にわたって沈下し、シートがたるみを生じて斜面に密着していなかったり、斜面の砕石の一部が崩落したりしている状況である。
宮城県計 17,942 8,971 4,332 2,166
(24) 茨城県 結城郡八千代町八千代西部地区水路51年災害復旧 茨城県 1,580 1,027 1,580 1,027 工事の設計不適切、施工不良
この工事は、51年9月の水害により被害を受けた八千代町八千代西部地区内の幹線排水路を復旧するため、流水に面した斜面の崩落箇所の盛土等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、盛土124m3 は、斜面の勾配を1割5分とし、盛土箇所の表面に使用する分については購入土34m3 を、また、内部に使用する分については崩落して水路の流水部等に堆(たい)積していた土砂の掘削土90m3 を使用し、施工に当たっては、施工基面をかき起こして新旧の土が一体となるように入念に締め固めるなどして施工することになっていた。しかし、現場付近の地盤は排水路に水が集まるため、含水比が高くなって盛土斜面の安定性が低くなる場合が多いので、斜面の勾配を緩やかにするとか、施工基面をいったん階段状に切り取るなど盛土の安定性を確保する設計とすべきであったと認められるのに、このような配慮が不足し、加えて、施工に当たって、水路内外に堆積した含水比の高い掘削土をそのまま盛土し、しかも、締め固めも十分でなかったため、既に全面的に斜面の盛土が再び崩落している状況である。
(25) 栃木県 塩谷郡塩谷町上沢B地区団体営草地開発 塩谷町 9,747 4,385 1,998 899 工事の施工不良
この工事は、酪農の近代化を図るため鬼怒川の河川敷68,100m2 を開墾して放牧用草地を造成するもので、設計書、図面及び仕様書によると、造成地の耕起は不耕起箇所が生じないように注意して施工するとともに樹根等は除去し、また、特に石れきの多い箇所31,150m2 には牧草の育成を確保するため別途に支給した耕土5,095m3 を客土することとし、その敷きならしは牧草の根張りなどを考慮して厚さが平均15cmになるよぅに施工することになっている。しかるに、客土することになっていた31,150m2 のうち7,833m2 については全く客土が施工されていないばかりでなく、うち1,951m2 は排根、整形などの基盤造成も施工されておらず、客土した7,947m2 については客土の厚さが5cmから12cm程度で耕土が不足していた。また、耕起、排根することになっている649m2 については、その施工が十分でないため雑草が繁茂していて、施工が著しく粗雑となっている。
(26) 群馬県 吾妻郡中之条町林道小野子山線開設 群馬県 20,417 11,229 1,093 601 工事の施工不良
この工事は、民有林における林道網の整備を図るため、林道延長12,000mを開設する計画のうち中之条町大塚地区内に延長251mを施行したもので、設計書、図面及び仕様書によると、道路の土留め壁として施工するコンクリート擁壁延長90mのうち延長13m(42m3 )は、前面を垂直とし、背後の盛土材には玉石、草木根等の有害物や含水比が高い粘性土が混入していない良質の土砂を使用することになっている。しかるに、背後の盛土材に含水比の高いれき交じり粘土質ローム等を使用して施工したため、その過大な土圧により擁壁が前方に傾斜している(擁壁の上端が所定の位置より16.6cmないし2.2cm前方に動いている。)など、不安定なものとなっている。
(27) 岐阜県 揖斐郡池田町池田山麓地区土地改良総合整備防護柵設置 池田町 3,652 1,643 2,811 1,265 工事の施工不良
この工事は、営農の近代化を図るため施行した池田町池田山麓地区内の農道延長約6km(幅員6.5m)にガードレール延長440m及び反射鏡16基を設置するもので、設計書、図面及び仕様書によると、道路が山腹の傾斜地に位置し、屈曲も多く交通上の危険が大きいので、これに適応した規格のガードレールを設置する要があるとして、延長395mにはビームの厚さ3.2mm、支柱埋設の深さ150cmのものを、また、延長45mにはビームの厚さ3.2mm、支柱埋設の深さ40cmのものを使用することになっている。しかるに、全延長にわたりビームは厚さ2.3mmのものを使用したばかりでなく、うち延長395mには支柱も埋設の深さ140cmのものを使用していて、設計に比べて車両交通上の安全性が低くなっており、工事の目的を達していない。
(28)  同 恵那郡明智町林道大東線開設 明智町 22,300 11,150 3,689 1,844 工事の施工不良
この工事は、民有林における林道網の整備を図るため林道延長2,380mを開設する計画のうち明智町大泉地区内に延長342mを施行したもので、設計書、図面及び仕様書によると、道路の土留め壁として施工するコンクリートブロック練り積み擁壁延長118m(470m2 )のうち延長27m(165m2 )は、法(のり)勾配(注) を4分に、また、基礎地盤を十分につき固め、擁壁背後の盛土を十分転圧して施工することになっている。しかるに、基礎地盤のつき固めや擁壁背後の盛土の転圧が十分でなかったため、擁壁が沈下したり、背後の盛土に雨水が浸透して生じた過大な土圧により前方に押し出され(擁壁の上端が所定の位置より43cmないし3cm動いている。)たり、き裂を生じたりしていて、不安定なものとなっている。
(注)  法(のり)勾配  斜面の傾斜の度合いをいい、土木用語では、通常斜面を斜辺とする直角三角形の縦の辺の長さに対する横の辺の長さの比で表わされ、例えば、高さ1mに対して水平方向の長さが0.4m の場合は4分と呼ばれる。
岐阜県計 25,952 12,793 6,501 3,110
(29) 和歌山県 有田郡清水町林道南古谷白馬線開設 清水町 40,800 22,440 1,131 622 工事の設計不適切
この工事は、民有林における林道網の整備を図るため、林道延長11,400mを開設する計画のうち清水町川合地区内に延長510mを施行したもので、林道がけい流を横断する箇所の暗きょ排水路工2箇所延長31.88mは、設計書及び図面によると現地の地盤が軟弱であるため基礎コンクリートを打設し、その上に直径1mの円形コルゲートパイプ(注) を直接布設することとなっており、設計どおり施工されていた。しかし、コルゲートパイプをコンクリート基礎の上に布設する場合には、パイプが受ける外圧を均等化するため基礎コンクリートの上に良質土を厚さ30cm以上敷きならす設計とすべきであるのに、その配慮を欠いたためコルゲートパイプは不均等な外圧を受けて著しく変形している状況である。
(注)  円形コルゲートパイプ  波形亜鉛メッキ鋼板を半円形に曲げ加工した部材を現場でボルトにより接合するパイプ。軽量で輸送が容易で施工も簡単であるため山間部等の工事で多く用いられる。

  (参考図)

(参考図)

(30) 島根県 八束郡宍道、玉湯両町上野山地区県営農地開発 島根県 115,400 75,010 115,400 75,010 補助目的の不達成
この事業は、八束郡宍道、玉湯両町所在上野山地区の丘陵地等を開発して78戸の農家がぶどう栽培を行うことを目的として、46年度から54年度までの間に畑地造成117ha、幹支線道路延長11,407m等を総事業費506,000,000円(うち国庫補助金325,675,000円)で施行する計画のもとに着工していたもので、この計画のうち畑地造成については3.8ha、幹支線道路については延長3,905mを事業費115,400,000円(うち国庫補助金75,010,000円)で施行したが、畑地造成予定地がぶどう栽培に適さなかったことなどのため、事業を廃止せざるを得ない事態となっている。しかして、この種事業の計画に当たっては、畑地造成予定地が導入作目の適地であるか、用地の取得が確実にできるかなど事業を開始する条件が充たされているかについて十分な調査検討を行う必要があるのに、本件の場合、事業の基幹となる畑地造成予定地内の相当部分が北斜面に位置し、また、一部は地すべり地帯を含んでいるなど導入作目であるぶどうの適地でなかったり、また、これら造成予定地の56%に当たる72.9haは共有林地等であるため権利者間の意見の調整ができなかったり、個人所有地の提供予定分54.9haについても事業開始後において提供を拒む受益者があったりしたことなどにより事業対象用地の確保ができなかったことが原因となって、事業計画年次の半ばである50年度において事業を休止せざるを得ない事態となったものである。そして、その後、事業を実施するための用地の確保ができず、本事業は、多額の事業費を投下した工事途中で事業を廃止せざるを得ないこととなっていて、補助の目的を達していない。
(31) 徳島県 徳島市林道婆羅尾線開設 徳島県 40,111 22,061 4,169 2,293 工事の設計不適切
この工事は、民有林における林道網の整備を図るため、林道延長13,000mを開設する計画のうち徳島市八多町地区内に延長351mを施行したもので、設計書及び図面によると、道路の土留め壁として施工するコンクリート擁壁延長315m(1.279m3 )については、擁壁の前面の床掘箇所を壁高の3分の1まで埋めもどし、これを良く締め固めることにより擁壁の背面土圧による転倒を防止する効果が十分期待できるとして、擁壁の断面が決定されていた。しかし、このうち2箇所延長35m(170m3 )は、現地についてみると、前面が急斜面であるため、擁壁の前面の床掘箇所を埋めもどすとしても極めて土量が少ないものとしかならない箇所が大部分で、擁壁の転倒を防止する効果が期待できない状況となっているのであるから、このような場合には現場条件に合わせた構造とすべきであるのに、その配慮が十分でなかったため、擁壁は上部が前方に押し出され(擁壁の上端が所定の位置より7.2cmないし2cm動いている。)ていて、不安定なものとなっている。
(32) 高知県 吾川郡春野町弘岡下北平農道51年災害復旧 春野町 3,336 3,242 2,232 2,169 工事の施工不良
この工事は、51年9月の風水害により被害を受けた春野町弘岡下地区内の農道延長40mを復旧するため、コンクリートブロック練り積み擁壁を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、うち延長6m、高さ10mの擁壁(以下「A擁壁」という。)は、下部4mを法勾配4分のコンクリート重力式擁壁とし、これを基礎として上部に高さ6m、控35cmのコンクリートブロック練り積み擁壁を法勾配4分で、背面に裏込めぐり石を十分つき固めて施工することになっており、また、他の延長14m、高さ2mの擁壁(以下「B擁壁」という。)は、A擁壁に接して上端をA擁壁とほぼ合わせ、法勾配3分、控35cmのコンクリートブロック練り積みで施工することになっている。しかし、A擁壁は、上下部とも法勾配が3.2分程度と設計に比べて急勾配に施工され、かつ、裏込めぐり石の突き固めも十分でなく背面の埋めもどし土が混入して排水効果を減殺しているなどのため、背面盛土の土圧が増大して上部のコンクリートブロック練り積み擁壁に幅1.5cm程度のき裂が斜めに生じており、また、B擁壁はA擁壁の基礎掘削の際基礎地盤が崩落したにもかかわらず、十分に盛土して突き固めないまま施工したため、延長8.5mの部分は最大(A擁壁に接する箇所)30cm程度沈下し、このため擁壁の2箇所に幅6cm程度のき裂を生じていて、いずれも不安定な状態となっている。
(33) 長崎県 大村市多良岳西部地区広域農道整備 長崎県 45,370 29,490 5,492 3,569 工事の設計過大、過大支払
この工事は、45年度から55年度完成を目標に広域営農団地の基幹となる農道計画総延長約47kmを新設又は改良している工事の一環として113mを新設したもので、設計書、図面及び仕様書によると、土工事のうち掘削した中硬岩13,273m3 については掘削ずり(注) の捨て土場所を工事現場から約6km離れた本件工事請負業者の所有地に指定しており、運搬費については1m3 当たり618円と算定していた。しかし、中硬岩の掘削ずりは指定した場所に捨土しないで掘削現場から500m付近の本件工事の下請業者である砕石業者の砕石場へ搬出していたのであるから、工事途中において設計内容及び契約金額減額の契約変更を行うべきであったのに当初契約どおり施工されたものとして処理していた。いま、中硬岩の適正な運搬費を計算すると1m3 当たり318円総額4,220,814円にすぎず、諸経費を含め5,492,000円が過大に支払われた結果となっている。
(注)  ずり  岩石を破砕、掘削する際発生する岩塊及び岩片をずりという。
(34)  同 長崎市木場第二地区農道整備 長崎県 45,050 30,033 3,104 2,069 工事の施工不良
この工事は、農業生産物の流通合理化を図るため長崎市木場第二地区内に農道延長2,160mを新設するもので、うち680mは切り取り、盛土のほか、盛土法(のり)面の安定を図るため、練り積み石垣974m2 等を施工したもので、設計書、図面及び仕様書によると、練り積み石垣延長38m(217m2 )は、高さ1.2mから7.3m、法勾配は5分とし、背面の下部には裏込めコンクリートを10cm又は20cmの厚さで施工し、更に、水抜き効果を図るなどのため天端(ば)幅30cm、背面勾配4分で裏込めぐり石を施工し、この空げきには目つぶし砂利を充てんして十分つき固めることになっている。しかし、練り積み石垣の法勾配は4分から4.5分と設計に比べて急勾配になっており、また、裏込めぐり石は目つぶし砂利の充てんが不足していて、そのつき固めも十分でなく、水抜き効果が減殺されており、これらのため背面の土圧によって練り積み石垣の4箇所にき裂を生じているほか、裏込めぐり石も50cm程度沈下している。
長崎県計 90,420 59,523 8,596 5,639
合計 427,631 255,134 149,264 95,023