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  • 昭和52年度|
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  • 工事

盛土工事の施行に当たり、土工機械の機種の選定等が適切でなかったため、契約額が割高になったもの


(82) 盛土工事の施行に当たり、土工機械の機種の選定等が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目 (工事勘定) (項)東北新幹線等建設費
部局等の名称 仙台新幹線工事局
工事名 仙台基地南土工(2)
工事の概要 仙台総合車両基地の新設に伴い、盛土418,700m3 等を施工する工事
工事費 220,000,000円
請負人 三井建設株式会社
契約 昭和52年12月 指名競争契約
支払 昭和53年3月 (52年度の支払額37,380,000円)

 この工事は、工事費の積算に当たり、工事に使用されると想定した土工機械が工事の規模、現場条件等に適合していなかったなどのため、契約額が約2310万円割高になったと認められる。

(説明)
 この工事は、東北新幹線の車両の修繕及び検修等を行う仙台総合車両基地を仙台市の東北方約10kmの宮城郡利府町地内に新設する工事の一環として敷地(面積約53万m2 )造成を行うもので、この工事に先立って同敷地内で施行した仙台基地南土工工事(以下「南工事」という。)で約4km離れた土取場から山土を搬入し用地内の各所に載荷(さいか)盛土(注1) を兼ねて暫定的に盛土してある土を切り取って運搬し盛土する工事であり、運搬する土量は、南工事で盛土しなかった箇所に目的とする仕上りの高さまで盛土するための182,200m3 (以下「盛土(A)」という。)、盛土後の沈下量を補足するための80,300m3 (以下「盛土(B)」という。)並びに盛土(A)、(B)の大部分及び南工事で仕上りの高さまで盛土済みの箇所に載荷盛土するための156,200m3 (以下「盛土(C)」という。)計418,700m3 である。

 しかして、この工事の予定価格の内訳についてみると、土の運搬距離(以下「運土距離」という。)については切り取る土の所在箇所(25箇所)と盛土箇所(17箇所)との距離や作業工程等を考慮して55mから1,590mとし、運土距離が100m以下の場合にはブルドーザにより押土することとし、100mを超える場合にはバックホウ及び補助ブルドーザで掘削積み込みしてダンプトラックにより運搬することとし、また、盛土後の敷き均らしにはブルドーザ、締め固めにはタイヤローラを使用することとして、1m3 当たりの単価を盛土(A)については477円、盛土(B)については439円、盛土(C)については361円と算定し、直接工事費を178,549,300円と積算している。

 しかしながら、本件工事のように、大量土工で運搬距離が55mから1,590mに及んでいて、土質が砂質土であるなど作業条件が普通の場合の土砂運搬には、短い運土距離についてはブルドーザ、中程度の運土距離についてはスクレーパ(注2) 、長い運土距離についてはダンプトラックをそれぞれ使用して経済的に施工するのが通例であって、本社制定の「土工積算要領」においても運土距離の範囲ごとにこれらの各機種の選定区分を示しているところであるから、本件工事においても、その作業条件を考慮して、運土距離70m未満のものについてはブルドーザ、70m以上240mまでのものについては被けん引式スクレーパ、240mを超えるものについてはダンプトラックをそれぞれ使用することとして積算すべきであったと認められる。

 また、本件工事のように、多数の切り取り箇所と多数の盛土箇所とが現場内に散在している場合にはできるだけ近接している箇所の間で運土することとして経済的な運搬経費を見込むべきであって、運搬する土量のうち52,350m3 については、この配慮が十分であったとすれば、当局の積算上の運土距離を短縮することができたと認められる。

 いま、仮に本件工事に使用される土工機械について前記のようにスクレーパも使用することとし、また、運土も最も経済的な箇所の間で行うこととして工事費を修正計算すると、1m3 当たり単価は盛土(A)440円、盛土(B)378円、盛土(C)298円、盛土総量418,700m3 で157,069,000円、総額196,859,600円となり、本件契約額はこれに比べで約2310万円割高であったと認められる。

(注1)  載荷盛土 軟弱な地盤及びその上に施工した盛土の沈下を促進し、速やかに安定させることを目的として盛土の上に更に行う盛土

(注2)  スクレーパ 機体の前面下部に取りつけてある刃(カッテングエッジ)で土砂を掘削して腹部に収容した後、盛土箇所に運搬し、腹部の前面を開いてまき出す土工機械で、トラクタにけん引される被けん引式のものと自走式のものとがある。

(参考図)

(参考図)