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  • 昭和52年度|
  • 第3章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

東北新幹線高架橋工事における排水設備の設計及び鉄筋加工組立費の積算について


東北新幹線高架橋工事における排水設備の設計及び鉄筋加工組立費の積算について

 日本国有鉄道が実施することとしている東北新幹線(全延長約496km)では、高架橋が全延長の約56%(延長約279km)を占めていて、昭和53年10月までに延長約230kmの高架橋工事を施行しており、約120kmを完了している。
 しかして、盛岡工事局ほか4工事局等(注) が52年度中に施行している高架橋工事415工事(工事費合計2750億8117万余円)について検査したところ、次のとおり、排水設備の設計及び鉄筋加工組立費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(排水設備の設計について)

 高架橋には、雨水を地表に流下させて排除するための排水設備が設置されるが、東北新幹線日詰地区高架橋その他工事ほか120工事(工事費合計733億7167万余円)で設置している排水設備(工事費相当額合計8億8790万余円)の設計についてみると、仙台新幹線工事局が、51年11月に作成した「東北新幹線排水設備標準図」に示されているところに従って日本国有鉄道規格品である硬質塩化ビニル角型管(主に寸法110mm×70mm、肉厚4.5mm、断面積61.6cm2 )及び集水ます等の附属品をつり金具及び止め金具等を使用して高架橋の脚部等に取り付けることとしており、また、予定価格の積算の内訳について、この硬質塩化ビニル角型管の価格をみると硬質塩化ビニル管製造業者のうち日本国有鉄道規格品を製造している3会社から各単価について見積書を徴し、そのうち最低のものを採用して資材価格を決定し、上記の121工事で総額5億2916万余円と算定していた。

 しかして、高架橋の排水設備として上記の角型管を使用することになった経緯についてみると、東海道新幹線の高架橋の排水設備として住宅設備の排水用に使用する丸型薄肉管(JIS規格K6741、VU管、主に呼び径100mm、肉厚3.1mm)を使用していたところ破損が多く発生したことから、山陽新幹線の建設に際しては高架橋の脚部等に密着するように取り付けて管を安定させることを理由に上記の特別規格品の角型管を使用する設計に改め、その後の新幹線高架橋の排水設備にはこれを使用しているものである。

 しかし、排水設備のうち、その主要な資材である硬質塩化ビニル管としては、従来から一般配管用に使用し高架橋の排水設備としても使用できる丸型の一般管(JIS規格K6741、VP管、以下「丸型管」という。)が市販されていて、この丸型管は高架橋の脚部等に設置するに際して止め金具等を工夫することにより十分密着性、安定性が得られるもので、上記各工事で使用している前掲の角型管と類似規格の丸型管(呼び径100mm、肉厚6.6mm、断面積78.5cm2 )とを比較してみると、丸型管は角型管に比べ排水機能、強度とも優れており、両者の価格も山陽新幹線(岡山・博多間)建設当時(48年から50年まで)はほぼ同程度であったものが、50年ごろから丸型管が著しく値下がりしたことから、角型管との間に相当の開差が生じて現在に至っており、その結果、附属品等を含めた価格で比較しても丸型管の方が約10%から18%程度低額となり、また、両者の取り付け歩掛かりにもほとんど開差がないから、丸型管を使用して経済的な設計をすべきであったと認められた。

 したがって、本件各工事について、丸型管を使用することとして設計したとすれば、工事費を約7600万円程度節減できたと認められた。

(鉄筋加工組立費の積算について)

 高架橋は鉄筋コンクリートの構造物であるが、東北新幹線古館地区高架橋その他工事ほか347工事(工事費合計2372億4334万余円)で施工している高架橋の鉄筋加工組立費(鉄筋総量427,148t分、積算額248億9163万余円)の積算についてみると、これに要する労務費については、日本国有鉄道が47年1月に制定した「コンクリート工積算要領(案)」(以下「コンクリート工積算要領」という。)及び51年4月に制定した「新幹線標準高架橋積算要領(案)」(以下「高架橋積算要領」という。)の鉄筋加工組立て歩掛かりを適用して算定していた。

 しかして、コンクリート工積算要領の歩掛かりは在来線の高架橋等の工事施工の実態を調査して定めたものであり、また、高架橋積算要領の歩掛かりは、コンクリート工積算要領に定めている歩掛かりをそのまま採用したものである。

 しかし、本院が鉄筋加工組立ての作業の実態を調査したところ、本件高架橋構造物については、設計が標準化されているため、同一寸法のものを多数使用したり、定尺物を切断することなく使用しており、また、構造物が大きいため、29mm、32mmと太径の鉄筋が大量に使用されていて機械使用による作業の効率化が著しいなど、鉄筋の加工組立作業の実態は大幅に変化していて、その歩掛かりは前記の歩掛かりを相当下回っていると認められた。更に、日本国有鉄道が51年1月に新幹線の高架橋等の工事における鉄筋加工組立て作業の実態を調査した際の資料を分析してみても、前記の歩掛かりを相当程度下回る結果が得られた。

 したがって、本件各工事について、施工の実態を考慮して積算したとすれば、積算額を約21億7500万円程度低減できたと認められた。

 上記各項についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では53年10月に排水設備については東北新幹線排水設備標準図を改正して丸型管を使用する設計に改め、また、鉄筋加工組立ての歩掛かりについては高架橋積算要領の鉄筋加工組立て歩掛かりを施工の実態に適合したものに改め、それぞれ同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  盛岡工事局ほか4工事局等 盛岡、仙台新幹線、東京第二、東京第三各工事局及び仙台新幹線工事局福島工事事務所

(注)盛岡工事局ほか4工事局等盛岡、仙台新幹線、東京第二、東京第三各工事局及び仙台新幹線工事局福島工事事務所