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  • 昭和53年度|
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  • 工事

スラブ軌道工事の施行に当たり、レール敷設工事費の積算を誤ったなどのため、契約額が割高になったもの


(131) スラブ軌道工事の施行に当たり、レール敷設工事費の積算を誤ったなどのため、契約額が割高になったもの

科目 (工事勘定) (項)東北新幹線等建設費
部局等の名称 仙台新幹線工事局
工事名 東北幹愛島地区スラブ軌道
工事の概要 東北新幹線建設工事の一環として、軌道総延長約24.5kmにわたり軌道スラブ及びロングレールを敷設するなどの工事
工事費 679,000,000円
請負人 大鉄工業株式会社
契約 昭和54年1月 指名競争契約
支払 昭和54年3月 1回(53年度支払額17,320,000円)

 この工事は、レール敷設工事費等の積算に当たり、レール締結箇所に使用するレール調節パッキンの数量計算を誤ったなどのため、契約額が約7170万円割高になったと認められる。

(説明)
 この工事は、東北新幹線の東京起点298.2kmから305.7km及び308.1kmから312.8kmの工事区間の軌道総延長24,503mにわたり、既に建設済みのトンネル及び高架橋の路盤鉄筋コンクリート上にスラブ軌道を施工するもので、工場で製作した鉄筋コンクリート製の軌道スラブ(以下「スラブ」という。)を軌道の長さ5mに1枚ずつ敷き並べ、このスラブの上にロングレールを敷設するものである。このロングレール(長さ約800mから約5,000m)は、温度変化によるレールの伸縮に対応するため温度変化によっても伸縮しない不動区間と温度変化によって伸縮する両端各150mの可動区間とからなっており、この可動区間は15mの伸縮継ぎ目区間を介して次のロングレールの可動区間と接続しているもので、本件工事における各区間の延長は、不動区間21,353m、可動区間3,000m、伸縮継ぎ目区間150mとなっている。
 そして、このロングレールは、不動区間及び可動区間ではスラブ1枚当たり16組の締結装置を、伸縮継ぎ目区間ではスラブ1枚当たり18組の締結装置を使用してスラブに締結し、この締結箇所のレールとスラブとの間に調節パッキンを1枚ずつそう入することにより精度のよい軌道に調整することとしており、不動区間の締結箇所には樹脂注入式調節パッキン(注1) (以下「注入式パッキン」という。)を、また、可動区間及び伸縮継ぎ目区間の締結箇所にはこれよりも耐久性のよい電熱式調節パッキン(注2) (以下「電熱式パッキン」という。)をそれぞれ使用することとしている。
 しかして、この工事の予定価格の内訳についてみると、次のとおり積算が過大になっていると認められる点があった。

1 レール調節パッキン(積算額115,448,600円)については、

 (1) 電熱式パッキンの所要枚数は、可動区間3,000m、伸縮継ぎ目区間150mを対象とし、この区間にスラブ1枚当たり可動区間では16枚、伸縮継ぎ目区間では18枚を使用するから、ロス率2%分を加算しても可動区間では9,790枚、伸縮継ぎ目区間では551枚計10,341枚となるのに、誤って軌道総延長24,503mを対象として計算した締結装置の数を用いるなどして、可動区間で80,300枚(単価970円)、伸縮継ぎ目区間で620枚(単価3,700円)計80,920枚と算出し、その価額を80,185,000円と算定したため、可動区間で70,510枚68,394,700円、伸縮継ぎ目区間で69枚255,300円、計70,579枚68,650,000円が過大となっていた。

 (2) 注入式パッキンの所要枚数は、不動区間21,353mを対象とし、スラブ1枚当たり16枚を使用するから、ロス率2%分を加算しても所要枚数は69,700枚となるのに、誤って軌道総延長24,503mを対象として81,020枚(単価210円又は215円)と算出し、その価格を17,221,200円と算定したばかりでなく、これに伸縮継ぎ目区間の分490枚(単価850円)416,500円を加算して計81,510枚17,637,700円と算定したため、11,810枚2,794,200円が過大となっていた。
 また、注入式パッキン69,700枚に注入する樹脂は、16,110kg 15,224,000円となるのに、上記のように注入式パッキンの枚数を81,510枚と誤ったため18,651kg 17,625,900円と算定しており、差し引き2,541kg 2,401,900円が過大となっていた。

2 本件工事の資材搬入等に使用する軌道モータカーは請負人に無償で貸与することとしているが、この運転時間当たり機械経費の積算についてみると、本社が定めている「軌道工事用機械損料算定表(案)」にある請負人に定期整備と現場整備とを併せ行わせる場合の1時間当たり経費2,310円を適用し、これに延べ運転時間2,557.74時間を乗じて計5,908,380円と算定していた。
 しかし、契約上は、請負人に定期整備を行わせることとしていないのであるから、上記の算定表にある現場整備のみを行う場合の1時間当たり経費374円を適用して積算すべきであったと認められ、これによれば、機械経費は956,595円となり、4,951,785円が過大となっていた。

3 以上のほか、前記の電熱式パッキンの施工区間の延長を誤ったことにより、その電源として使用する発動発電機の機械損料805,527円が過大に積算されていたことなどのため計1,916,022円が過大となっていた。
 いま、仮に上記各項により本件工事費を修正計算すると、当局の積算において積算漏れとなっていたスラブの締結部に注入する止水油の材料費等の経費計17,395,000円を考慮しても総額607,255,520円となり、本件契約額はこれに比べて約7170万円割高であったと認められる。

 (注1)  樹脂注入式調節パッキン ナイロン、ポリエチレンラミネートフィルム製の平たい袋状のもので、レールの高さを調整するため、これを締結部のレール下にそう入したのち、ビニルエステル系樹脂を注入して硬化させて使用するもの

 (注2)  電熱式調節パッキン ポリエステル系樹脂製の板状のもので、レールの高さを調整するため、これを締結部のレール下にそう入したのち、通電加熱して変形させ使用するもの

(参考図)

(参考図)