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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

青電話機のキャビネット業務の委託取扱費の積算について処置を要求したもの


青電話機のキャビネット業務の委託取扱費の積算について処置を要求したもの

(昭和54年12月6日付け54検第383号 日本電信電話公社総裁あて)

 日本電信電話公社では、昭和49年3月から街頭用公衆電話の一つとして、卓上形青電話機をキャビネットに格納したうえ屋外に設置して、終日利用者の用に供し、公衆電話サービスの向上を図っているが、このキャビネットの調達、設置及び保守等の業務は部外に委託して実施しており、その対価として支払う委託取扱費の53年度中の支払額はキャビネット86,794施設分で総額19億6268万余円に上っている。
 この委託取扱費は、この業務を遂行するために必要なキャビネットの設置場所の選定費、保守に必要な労務費、設置場所提供者に支払う電灯料及び清掃料等の直接費のほか、管理間接費、減価償却費、支払利息等の経費からなっている。
 そして、上記の53年度支払額は、48年度の本件業務委託の開始に際し、51年度末までに設置する計画であった予定施設数の所要経費を積算し、これを基に算定した1施設当たりの月額をそのまま用いて、これに53年度中の各月の作業対象施設数を乗じて計算していた。
 しかして、この委託取扱費の積算内容及び委託作業の実態について検査したところ、次のとおり、積算に際し採用した作業の内容や減価償却費の計算方法などが適切でなかったため、ひいて保守作業等に要する直接労務費及び減価償却費が過大となっていて、その積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

(1) キャビネットの保守及び設置場所の選定に必要な直接労務費の積算についてみると、委託仕様書で、キャビネットの洗浄及びけい光灯、グローランプ等の照明設備その他の部分の巡回点検は1箇月ないし3箇月に1回の割合で行い、また、照明設備等の取替え修理は故障発見の都度出向くことになっているので、48年度に行った積算において、これらの作業に要する直接労務費については、洗浄、巡回点検の作業は2箇月に1回、けい光灯、グローランプの取替えは1施設当たり年間1.83回行うこととするなどし、また、キャビネットの設置場所の選定は、1人1日当たり1.35ないし2施設を行うこととして、これらの年間所要人員を算出し、これに労働省の調査によ る常用労働者1人当たりの現金給与総額を基礎として算出した1人当たりの労務費の年額を乗じて、直接労務費を総額2億2391万余円(1施設当たり月額578円)と積算しており、53年度の1施設当たりの月額もこれによっていた。したがって、この月額及び53年度末における設置見込施設数に基づいて直接労務費を計算すると、総額5億2665万余円となる。

 しかし、受託業者が53年度中に実施した巡回点検等の作業の実態についてみると、洗浄、巡回点検については、キャビネットの内外部の清掃や日常の保守点検は委託仕様書等により設置場所提供者に行わせることになっているため、受託業者はけい光灯の不点灯やキャビネットの損傷の有無の確認点検を主体に3箇月に1回程度の割 合で行っているにすぎず、また、けい光灯、グローランプの取替えについてもこの洗浄、巡回点検時に併せて行っていて、いずれも支障がない状況であるから、積算において採用した上記の作業回数等は、作業の実態からみて過大であると認められた。また、上記の現金給与総額の調査対象となった常用労働者には常勤役員等も含まれているのに対し、本件積算では役員給与等は別途管理間接費で計上しているのであるから、この現金給与総額を基礎として1人当たりの労務費の年額を算出しているのは適切でないと認められた。

 いま、仮に巡回点検等の作業は3箇月に1回行うなど適正な作業回数によることとし、また、1人当たりの労務費の年額については業務内容が類似しているボックス形公衆電話の清掃修理業務委託費の53年度労務単価を採用するなどして53年度の直接労務費を修正計算すると、総額4億4323万余円(1施設当たり月額486円)となり、前記の直接労務費総額はこれに比べて約8300万円程度過大になっていると認められた。

(2) 受託業者の負担により設置するキャビネットには、とびらのないもの(以下「A形」という。)ととびらのあるもの(以下「B形」という。)とがあるが、この減価償却費の積算についてみると、48年度に行った積算においては、いずれも48年度の見積価格を基とし、また、A形、B形の設置割合は51年度末の設置見込施設数をA形70.2%、B形29.8%として、51年度末までに設置される見込みの全施設数を償却対象に年間償却費を総額1億7749万余円(1施設当たり月額458円)と積算しており、53年度の1施設当たりの月額もこれによっていた。したがって、この月額及び53年度末における設置見込施設数に基づいて減価償却費を計算すると、総額4億1731万余円となる。

 しかし、その後のキャビネットの設置状況をみると、価格の割高なB形の53年度末における設置割合の見込みは22%程度(実績21.8%)で、積算で採用した割合(29.8%)をかなり下回っているのに、当初の見込みをそのまま採用しているのは適切でなく、また、キャビネットは年度中に逐次設置されるものであるから、当該年度に新設する分については減価償却費計算上の経過年数を半年として計算すべきであるのに、全施設について1年分の償却費を計上することとしているのは適切でないと認められた。

 いま、仮に設置割合については、53年度末の両キャビネットの設置見込みの割合により、また、53年度新設分の経過年数についてはこれを半年として53年度の減価償却費を修正計算すると、当初からすえ置いているキャビネットの価格についてその後の値上り分を考慮しても、総額3億8270万余円(1施設当たり月額420円)となり、前記の減価償却費総額はこれに比べて約3400万円程度過大になっていると認められた。

 このような事態を生じたのは、本件業務委託開始後相当年数が経過しているのに、施行の実態等を調査検討することなく、事業開始当初において採用した委託取扱費の算定の方法をそのまま踏襲していることなどによると認められる。

 ついては、この業務委託は今後も引き続き実施され、しかも、その業務量は相当の量に上っているのであるから、前記各項について早急に調査検討し、委託取扱費の算定の方法を実情に沿った内容に改めるなどして経費の節減を図る要があると認められる。