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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 医療金融公庫|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

業務委託手数料の算定について処置を要求したもの


業務委託手数料の算定について処置を要求したもの

(昭和54年11月20日付け54検第365号 医療金融公庫総裁あて)

 医療金融公庫では、病院等の設置、整備又は運営に必要な資金として昭和53事業年度中に1084億9750万円を貸し付けているが、そのうち853億5990万円は株式会社富士銀行ほか340の金融機関(以下「代理店」という。)に委託して貸し付けている。

 しかして、業務委託に伴い代理店に支払う手数料(53事業年度中の支払額26億1306万余円)の算定について検査したところ、次のとおり、その算定方法が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の業務委託は、同公庫が総合病院、大学病院等の特定病院等に対し直接に貸し付けるもの以外のものについて行っており、代理店に対する委託業務の内容は、借入申込みの受理及び審査、資金の貸付け(貸付決定を除く。)、貸付金の管理回収並びにこれらの付帯業務であり、貸付けの対象としている資金は、病院、診療所等の新築資金、増改築資金、機械購入資金及び長期運転資金の4種類に区分されているが、このうち機械購入資金及び長期運転資金は、単独で貸し付けられている例は少なく、そのほとんどは新築資金又は増改築資金と合わせて貸し付けられている。そして、代理店に支払う手数料は、当該代理店の貸付金に係る償還完了までの実収利息に、1件の貸付金額が、2000万円以下の場合は16%、2000万円を超え5000万円以下の場合は12%、5000万円を超える場合は9%の料率をそれぞれ乗じて得た額とされ、同一の借入申込者が同一の借入申込書により上記4種類の資金のうち2種類以上の資金の貸付けを受ける場合にも、資金の種類別にそれぞれ1件の貸付金として金銭消費貸借契約証書が作成されることになっているところから、手数料もこの1件ごとの貸付金額を基に上記の料率を適用して算定している。

 しかして、同一人に2種類以上の資金を貸し付ける場合の代理店における委託業務処理の実態をみると、貸付契約の締結、担保権の設定等一部の業務については資金の種類ごとに事務を処理しているが、事業計画の当否、申込者の資産、信用等の審査や融資事業完成の確認等委託業務の大部分の業務については、資金の種類により貸付時期が異なる場合でも、同一申込者に係る一事業として一括処理しており、その結果作成される意見書、借入申込者調査書、融資事業完成確認報告書等の書類も各資金ごとに別個に作成しているわけではなく、各資金に共通する書類として1回限り作成しているにすぎない状況である。

 このような委託業務の実態からみて、手数料の算定に当たり、資金の種類が異なるからといって、各資金ごとの貸付金額に対応して異なる手数料率を適用するのは、実態に即しているとは認められず、同一人に対し2種類以上の資金を貸し付ける場合には、各資金の合計額に対応する手数料率により手数料を算定するのが妥当であると認められる。

 いま、仮に現行の計算方法に代えて、同一人に2種類以上の資金を貸し付けている場合は、その貸付合計額に対し現行の手数料率を適用することとして、53事業年度の代理店における新規貸付けに係るものについて手数料を修正計算すると、初年度分についてみても支払額約2億4650万円は約2億2060万円となり、その差額約2580万円が節減できたと認められる。なお、上記の53事業年度の新規貸付額に係る償還完了までの支払手数料について、償還期限をそれぞれ新築資金及び増改築資金では18年、機械購入資金では5年、長期運転資金では3年として、同様の方法により手数料の節減見込額を計算すると総額約1億2000万円となる。

 このような事態を生じたのは、委託業務の内容の実態は握及び他公庫等における同種事例についての検討等が十分でなかったことによると認められる。

 ついては、同公庫においては、代理店に対する業務委託を今後も引き続き実施することとしており、過去の実績からみて手数料支払額は累増することが見込まれるのであるから、早急に業務の実態に適合した手数料算定の方法を採用し、もって経費の節減を図る要があると認められる。