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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路新設工事における軟弱地盤処理工費の積算について処置を要求したもの 


高速道路新設工事における軟弱地盤処理工費の積算について処置を要求したもの

 (昭和54年7月31日付け54検第289号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団では、高速自動車国道整備計画を実施するため、建設大臣の認可を受けて高速道路建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち札幌建設局ほか3建設局(注) が昭和53年度に施行している道央自動車道岩見沢西工事ほか11工事(工事費総額299億9774万余円)について検査したところ、次のとおり、軟弱地盤処理工費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各工事においては、新設高速道路の盛土箇所の基礎地盤が軟弱なものについてこれを改良するため、軟弱地盤処理工として、軟弱な地層に砂くい打込み機を使用して多数の砂柱を打ち込んで地盤を安定させるサンドコンパクションパイル工法若しくはサンドドレーン工法により、又は両工法を併用して施工している。そして、その工費の積算については、本社制定の土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)により、砂柱の根入れ深さ(4mから23.7m)に応じた砂くい打込み機の作業能力(砂柱1本当たりの打込み所要時間)を算出し、1日当たりの標準打込み本数を計算したうえで、これにより工費をサンドコンパクションパイル工13億6543万余円、サンドドレーン工10億1509万余円計23億8053余万円と算出している。

 しかして、上記の作業能力の計算式によれば、砂柱1本当たりの打込み所要時間については、打込みの開始から打ち上がりまでの純作業時間のほか、移動、建込みに要する付帯作業時間等を含めた打込みの全所要時間を算出することとなっていて、この打込み所要時間は砂柱の根入れ深さに比例して増加するものであるが、上記各工事においては、例えば、砂柱の根入れ深さがサンドコンパクションパイル工で8mの場合は27.57分、サンドドレーン工で17mの場合は24.83分と算出している。

 しかしながら、同公団がこの種工事を施工業者に実施させる際には、砂柱1本ごとの根入れ深さ及び材料投入量を連続的に記録できる装置を備え付けることを義務付けており、この記録装置によれば、砂柱の打込みの所要時間のうち主体となっている打込みの純作業時間についても読み取ることが可能であって、いま、同公団が既往年度に実施した同種工事の記録によって上記の純作業時間を調査したところ、例えば、砂柱の根入れ深さがサンドコンパクションパイル工で8mの場合は9分から12分程度、サンドドレーン工で17mの場合は5分から11分程度であって、これに付帯作業時間等(通常、純作業時間に対しサンドコンパクションパイル工の場合はその8割程度、サンドドレーン工の場合は同じく6割程度)を含めた砂柱1本当たりの打込み所要時間は、砂柱の根入れ深さがサンドコンパクションパイル工で8mの場合は19分程度、サンドドレーン工で17mの場合は17分程度を見込めば足り、前記積算要領により算出される砂柱1本当たりの打込み所要時間は作業の実態と相違したものとなっていると認められる。現に、本件各工事の施工実態をみても、打込みの純作業時間は前記の既往年度施行工事の実績と同程度となっている。したがって、本件工事費の積算に当たっては、上記の実態に即して積算すべきであったと認められる。

 いま、仮に本件サンドコンパクションパイル工等の工費について、上記の施工実態等を基とした作業能力により修正計算すると、積算額を約4億2300万円程度低減できたと認められた。

 このような事態を生じたのは、現行積算要領は、施工機械の改良及び施工技術の向上に伴い施工機械の種類については実態に合わせて定めておりながら、作業能力についてこれに即した修正を行っていなかったことによると認められる。

 ついては、同公団においては今後とも引き続き同種工事を多数施行するのであるから、前記の施工実態を早急に調査検討して、積算要領を適切なものに改定し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

 上記のとおり処置を要求したところ、日本道路公団では、54年9月に、積算要領を改定し、サンドコンパクションパイル工等の作業能力を施工の実態に適合したものに改め、同年10月以降契約する工事からこれを適用する処置を講じた。

 (注)  札幌建設局ほか3建設局 札幌、東京第一、新潟、福岡各建設局

(参考図)

(参考図)

2 サンドコンパクションパイル及びサンドドレーンの施工方法

 (1) サンドコンパクションパイル

〔1〕  パイプを地上にすえ、バイプ先端特殊刃先に刃先砂をかませる。
〔2〕  振動機を作動して、パイプを地中に貫入させる。
〔3〕  所定深さに達すると上部ホッパよりパイプ内に一定量の砂を投入する。
〔4〕  パイプを規定高まで引き上げつつ、パイプ内の砂を圧縮空気により、穿(せん)孔部に押し出す。
〔5〕  パイプを打ちもどし、押し出した砂を振動により締め固める。
〔6〕  再び、砂を投入しパイプを規定高だけ引き上げて砂を押し出して締め固める。
〔7〕  以上の操作を繰り返して、砂柱を地上まで仕上げる。

 高速道路新設工事における軟弱地盤処理工費の積算について処置を要求したものの図1 

 (2) サンドドレーン

〔1〕  } (1)のサンドコンパクションパイルの場合と同じ
〔2〕 
〔3〕  所定深さに達すると上部ホッパよりパイプ内に砂を投入する。
〔4〕  パイプを引き上げつつ、パイプ内の砂を圧縮空気により、穿孔部に押し出す。
〔5〕  パイプを完全に引き抜き打設を終了する。

高速道路新設工事における軟弱地盤処理工費の積算について処置を要求したものの図2