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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本鉄道建設公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

上越新幹線におけるトンネル内照明等設備の設計及び通信用ケーブルの材料費の積算等について


上越新幹線におけるトンネル内照明等設備の設計及び通信用ケーブルの材料費の積算等について

 日本鉄道建設公団では、上越新幹線延長約269kmの建設を実施しており、そのうち電気設備工事は東京支社が担当施行している。
 しかして、このうち昭和53年度中に施行している上越新幹線塩沢トンネル(南)配電線ほか16工事(工事費合計33億9741万余円)について検査したところ、次のとおり、トンネル内火災など緊急の場合に乗客を誘導するための照明設備及び線路保守作業のための保守作業用コンセント設備の設計並びに情報通信のための通信用ケーブルの材料費の積算等が適切でないと認められる点が見受けられた。

 (トンネル内照明等設備の設計について)

 上記17工事のうち、9工事(工事費合計8億7773万余円)で設置している照明設備及び保守作業用コンセント設備の設計についてみると、照明設備(工事費1億1544万余円)はトンネル両側壁に照明灯具を15m間隔で千鳥状に取り付け、また、保守作業用コンセント設備(工事費4773万余円)は上り線の側壁に線路保守機器用のコンセント箱を45m間隔に取り付けるものである。そして、照明灯具及びコンセント箱と変圧器を結ぶ低圧配電線は電線製造工場であらかじめケーブルに15m間隔で分岐ケーブルを取り付け接続部を密封処理したもの(以下「分岐付きケーブル」という。この接続部の加工費等4409万余円)を使用しており、これは日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)で使用しているものと同様のものであるが、分岐ケーブルと灯具の接続は現場で処理することとしていて分岐ケーブル及び灯具の口出線の双方とも心線を取り出したうえ両者を接続し、また、コンセント箱の接続についても分岐ケーブル及び灯具、コンセント箱の口出線とも心線を取り出したうえ三者を接続し、これらの接続部にはビニル絶縁テープ及び自己融着テープを巻き、更にビニル絶縁テープを巻いて保護する工法によっていた。

 しかして、国鉄において、上記の分岐付きケーブルを使用することとした経緯についてみると、山陽新幹線で低圧回線に被覆電線を使用して、現場で接続処理を行ったところ、漏水等による接続不良等の不具合が多かったため、現場の接続処理で接続部を完全に密封するのは困難であると判断して、東北新幹線の建設工事以降は被覆電線に代えて上記の高価な分岐付きケーブルを使用することになったもので、これに伴い灯具及びコンセント箱についても、分岐ケーブルを直接これらに接続できるようにするなど改良している。

 しかるに、本件は密封処理について改良された分岐付きケーブルを使用していながら上記の改良された灯具を使用しないなど、その使用目的の理解が十分でなかったため、殊更接続不良などの弱点箇所となる中間接続部を設ける結果となり、本件照明設備及び保守作業用コンセント設備(照明設備、コンセント設備工事費及び分岐付きケーブルの接続部加工等工費合計2億0726万余円)は、高価な分岐付きケーブルを使用した効果が発揮されていないと認められた。

 (通信用ケーブルの材料費の積算について)

 通信用の漏えい同軸ケーブルはトンネル内側壁及び高架橋の高欄等の全線(上り、下り線とも)にわたり架設されるものである。そして、その価格については、このケーブルが大量に使用されるものであるところから、本社が調査決定することとしており、東京支社では本社から通知された価格によって材料費を算定することとしている。

 しかして、前記17工事のうち、8工事(工事費合計25億1968万余円)の積算についてみると、漏えい同軸ケーブルの価格の中には、木製ドラムを1回限り使用することとして、このドラム費を含め、1m当たり1,950円から3,725円総量202,969m総額562,714,176円と算定していた。

 しかし、近年本件のような大型ドラムは軽量で耐久性があり、かつ、3回以上反復使用ができる金属製ドラムを使用するのが通例となっているから、これを使用することとすればドラムの経費は安価となる。現に国鉄では東北新幹線の建設工事において本件と同一のケーブルに金属製ドラムを使用している状況である。

 したがって、本件各工事について金属製ドラムを3回使用することとして積算したとすれば積算額を約3000万円程度低減できたと認められた。

 上記各項についての本院の指摘に基づき、日本鉄道建設公団では、54年10月にトンネル内照明等設備工事の設計については、設計施工標準(案)を改正して接続部を設けない設計に改め、また、通信用ケーブルの材料費の積算については金属製ドラムを使用する積算に改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 上記のほか、前記17工事のうち、上越新幹線折之口〜栗崎信通線路1ほか6工事において、トンネル内側壁及び高架橋上のダクト内等の全線にわたり敷設する通信、信号用ケーブル(工事費相当額22億2955万余円)の敷設はウインチ引き工法及びトロリー引き工法によることとし、敷設工費の積算(積算額合計2億0257万余円)については国鉄が定めている積算資料等をそのまま採用していることから、別項(東北新幹線における通信・信号用ケーブルの敷設工法について) で記述したと同様台車引き工法により施工することとした場合に比べて割高なものとなっており、経済的な台車引き工法により施工することとして敷設工事費を積算したとすれば積算額を約1900万円程度低減できたと認められたが、本院の指摘に基づき、日本鉄道建設公団では54年7月「電気関係工事予定価格積算標準」にこの方法による敷設歩掛かりを取り入れて、同月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。