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  • 昭和53年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第16 公害防止事業団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

中小企業者に対する公害防止施設の譲渡に係る債権の保全措置について処置を要求したもの


 中小企業者に対する公害防止施設の譲渡に係る債権の保全措置について処置を要求したもの

(昭和54年11月2日付け54検第361号 公害防止事業団理事長あて)

 公害防止事業団では、公害防止事業団法(昭和40年法律第95号)に基づき、工場及び事業場が集中し、かつ、産業公害が著しく又は著しくなるおそれがある地域において、産業公害を防止するための共同公害防止施設、共同利用建物、工場移転用地及び共同福利施設(以下これらを合わせて「公害防止施設」という。)を必要としている中小企業者及び地方公共団体等に対し、これらの施設を設置して譲渡するなどの業務を行っており、昭和42事業年度から53事業年度までの間に設置し譲渡した施設(以下「譲渡施設」という。)は163件総額1207億3585万余円に上っている。

 上記の譲渡施設のうち中小企業者に対する譲渡施設については、中小企業者が設立した協同組合等(以下「組合」という。)を譲受申込入とする譲受申込書及び添担保差入れに関する念書(以下「念書」という。)が同事業団に提出されると、これに基づき同事業団が組合及び組合員の信用調査等を行ったうえで組合との間に建設(又は造成)業務受託及び譲渡契約を締結することとしている。この契約条項により譲渡の予定価格に基づき内金としての頭金を納入させた後、同事業団が土地を取得し又は建物を建築するなどして公害防止施設を建設し、こられに要した費用等が確定したとき、更に、譲渡の確定価格及びその割賦支払に関する割賦金総額確定契約(以下「確定契約」という。)を組合との間に締結することとしている。そして、この確定契約の内容をみると、確定価格のうち納付された頭金を差し引いた残額を、譲渡施設の種類により定めた長期の割賦で組合から支払をさせることとしている。一方、この債権の保全を図るため組合から譲渡施設を担保として徴し、このうち土地及び建物については所有権移転登記等を行った後第1順位の抵当権設定登記を行い、機械等の動産については譲渡担保設定契約を締結することとしているが、これらの譲渡施設を担保として評価した場合取得価格よりも低額となり割賦金に達しないため追加して添担保を徴することとしており、これについても譲渡施設の場合と同様に抵当権設定登記を行うなどの措置を講ずることとしている。

 しかして、本院において、54年度中、前記の譲渡施設のうち中小企業者に譲渡したもの115件総額769億4199万余円(割賦金722億0062万余円)について検査したところ、譲渡施設について抵当権設定登記を行っていなかったり、添担保を徴していなかったりしていて、その保全措置が適切でないものが、17組合に対する契約20件の譲渡において次のように見受けられた。

1 譲渡施設について抵当権設定登記を怠っているもの
11件(被担保債権額) 80億8115万余円
2 担保額が不足しているのに添担保を徴することを怠っているもの
(ア) 添担保を全く徴していないもの
16件(担保不足額) 21億4907万余円
(イ) 添担保の一部を徴していないもの
4件(担保不足額) 1億0282万余円

20件(担保不足額) 22億5189万余円

 なお、上記のうちには、既に支払条件を変更して割賦金の支払を繰り延べているものが4件1億1504万余円、延滞しているものが1件1479万円ある状況である。
 このような事態を生じたのは、同事業団の債権の保全措置のための事務処理体制において次のような不十分な点があることによると認められた。

(1) 譲渡施設は確定契約の締結と同時に組合に引き渡したうえ所有権を移転しているのであるから、直ちにその所有権移転登記又は所有権保存登記を行うとともに抵当権設定登記も行うべきであるのに、譲渡施設についての抵当権を添担保と合わせ登記することとしているため、次項(2)の事情により添担保の提供が得られない場合には抵当権設定登記も行われないこととなること。

(2) 組合が提供を予定している添担保の確保を目的として念書を徴しているが、この念書には権利関係や担保価値等を明らかにする登記簿謄本や不動産鑑定評価書の添付を義務づけていないばかりでなく、所有者名、評価額等の記載さえないものがあり、また、担保についての実地調査も行われていないなどのため、念書が実効を有するものとなっておらず、このため、添担保の提供が得られないことがあること。

 ついては、同事業団においては、今後も引き続き多数の公害防止施設の建設譲渡業務を実施することが見込まれるものであり、その債権の保全には特に留意する要があると認められるから、譲渡施設の抵当権設定登記については、所有権移転と同時にこれを行うよう改め、また添担保の確保については、その目的のため提出させる念書に登記簿謄本や不動産鑑定評価書の添付を義務づけるとともに、担保についての実地調査を行うなどして念書を実効あるものとするよう関係諸規程を整備し、関係職員に対する指導を徹底して譲渡施設に係る債権の保全措置を適切にする要があると認められる。