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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
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  • 工事

連絡設備新設工事の施行に当たり、鉄骨架設費及び覆工板敷設撤去費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの


(130) 連絡設備新設工事の施行に当たり、鉄骨架設費及び覆工板敷設撤去費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目  (工事勘定) (項)基幹施設増強費
部局等の名称  東京第三工事局
工事名  大宮駅改162鉄骨架設1工事
工事の概要  東北新幹線の建設に伴う大宮駅の改修に当たり、在来の旅客施設と新幹線の旅客施設とを結ぶ連絡設備の鉄骨を架設するなどの工事
工事費  441,955,740円(当初契約額441,000,000円)
請負人  清水建設株式会社
契約 昭和54年10月 指名競争契約
支払 昭和54年12月,55年3月 2回
(54年度支払額186,990,000円)

 この工事は、鉄骨架設費及び覆工板敷設撤去費の積算が適切でなかったため、契約額が約2520万円割高になったと認められる。

(説明)

この工事は、東北新幹線の建設に伴う大宮駅の改修に当たり、在来の旅客施設と新幹線の旅客施設とを結ぶ連絡設備とて駅構内の線路上に鉄骨構造のコンコース及び自由通路約7,100m2 を新設する工事の一部で、鋼製柱と鋼製梁(はり)等を連結して、鉄骨構造物を構築し、上部に床版用のデッキプレートを敷設するものである。そして、鋼製柱の上部に梁を架設するに当たっては、線路と並行する大梁を直接柱に架設し、線路やホームの上部にまたがる大梁及び小梁は49ブロックに分割し、うち在来線上の37ブロックは深夜に短時間で架設できるようあらかじめ鋼材を枠組みしておいたものを架設することとし、また、ホ一ムの上家上に施工する12ブロックは鋼材を個々につり上げて架設することとしている。そして、上記作業は、まず架設した大梁の上に覆工受けけたを置き、この上に覆工板を敷き並べクレーン用の仮設作業台を作り、この上に設置したクレーンにより順次に鉄骨構造の部材をつり上げて組み立てていくものである。
 しかして、この工事の予定価格の内訳についてみると、次のとおり積算が過大になっていると認められる点があった。

1 この工事で架設する鋼製柱及び鋼製梁等の鉄骨全重量1,666tの組立て費及び架設費等は187,890,595円と積算している。

(1) 上記のうち、在来線の上部にまたがって施工する37ブロックの大梁及び小梁554tの組立て費については、日本国有鉄道制定の「鉄骨現場建方積算要領」を適用して、作業1編成1日当たりの組立て重量を6.5t、1t当たりの歩掛かりを作業員1.22人として労務費12,499,109円、機械損料6,177,930円、計18,677,039円と積算している。
 しかして、上記積算要領によると対象鉄骨重量が50tを超えるものについては、重量に応じて歩掛かりの逓減を行うこととしているが、本件は1ブロックの重量が50t未満であるとして歩掛かりを逓減しなかったものである。
しかしながら、本件構造物のブロック全体の重量は554tと大量であり、各ブロックは形鋼でできた大梁と小梁を単に枠状に組み立てるものであって、各ブロックともその部材はほとんど同一で、しかも組立て作業は繰り返しとなるため慣熟により作業能率が向上することから、前記歩掛かりを逓減しないでそのまま適用することとしたのは適切とは認められない。
 いま、仮に本件ブロックの鉄骨554tについて、前記積算要領に準じて組立て歩掛かりを逓減して修正計算すると、作業1編成1日当たりの組立て重量は約10.4t、1t当たりに要する作業員は0.78人となる。

(2) 架設費については、あらかじめ組み立てた前項の37ブロックと在来ホームの上家上で組み立てる12ブロックを加えた49ブロックの架設時間を85時間と算出し、また、あらかじめ組立てをしないで個々に部材をクレーンでつり上げて組み立てながら架設することとしている鋼製柱及び大梁等1,112tの架設時間を320時間と算出し、架設費を20,612,194円と積算している。
 しかしながら、ホームの上家上で組み立てる12ブロックはあらかじめ組立てを行うものでなく部材を個々につり上げて組み立てるものであって、この鋼材重量45t鋼製柱及び大梁等の架設重量1,112tに含めて架設時間を算出しているものであるから、組み立てたブロックの架設時間に含めたのは誤りであり、ブロックの架設時間は12ブロック分が重複して計算されている。

2 鉄骨を架設するためのクレーン等の仮設作業台は、大梁に溝(みぞ)形鋼でできた受け金物を取り付けた上にけた受け梁、覆工受けけた及び覆工板を架設するもので、この敷設161,352,081円と積算している。

(1) 上記のうち、受け金物(長さ959mm)の数量の算出に当たっては、下図の大梁上

(1)上記のうち、受け金物(長さ959mm)の数量の算出に当たっては、下図の大梁上

の受けピースの箇所数を設計図面から算出し、この数量を2倍して受け金物の本数を1,624本としている。
 しかしながら、受け金物は図のように2本の大梁にまたがって設置するものであり、受けピースと受け金物の本数とは同数となるものであるから812本が過大となっている。

(2) 覆工受けけたに使用するH形鋼は594mm×302mm及び588mm×300mmの規格のもので、この損料額は日本国有鉄道制定の「共通積算要領」により1t当たりの損料18,150円に、使用1回当たりの修理費及び損耗費(以下「修損費」という。)1t当たり6,400円を加算して24,550円とし、これに総重量685tを乗じて16,816,750円と積算している。
 しかしながら、上記の修損費1t当たり6,400円は、200mm×200mm規格程度の小型のH形鋼に適用するものであって、上記積算要領に記載されている400mm×400mm規格程度の修損費1t当たり4,700円を適用して積算すべきであると認められる。
上記各項のほか、現場条件により拘束時間が4時間から4.5時間未満の短時間に作業する場合の賃金補正の率を誤ったり、けた架設のクレーンの供用日数を誤ったり、また、クレーンの誘導員等の人員数を誤ったりなどしたため積算が過大になっていた。
 いま、仮に上記により本件工事費を修正計算すると、総額416,717,740円となり、本件契約額はこれに比べ約2520万円割高であったと認められる。