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  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

高速道路等の新設工事における岩石土工工事費の積算について処置を要求したもの


高速道路等の新設工事における岩石土工工事費の積算について処置を要求したもの

(昭和55年11月5日付け55検第534号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち、札幌建設局ほか4建設局(注) が昭和54年度に施行している道央自動車道岩見沢東工事ほか25工事(工事費総額775億8700万円)について検査したところ、これらの工事においては、いずれもリッパ付きブルドーザにより軟岩掘削を施工しており、また、そのうち山陽自動車道相生工事ほか17工事においては、爆破作業により硬岩掘削を施工しているが、次のとおり、岩石土工工事費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

1 軟岩掘削における機械損料の割増しについて

 上記26工事の軟岩掘削6,485,972m2 の積算についてみると、破砕後の積込み、運搬等の作業に使用するトラクタショベル、ブルドーザ、ダンプトラック及びスクレーパの機械損料については、本社制定の土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)により積算していて、このうち運転時間当たり損料(以下「損料」という。)は25%の割増しをして、総額18億7243万余円と算定している。このように、損料を割増ししたのは、建設省で、岩石掘削作業の場合の建設機械の維持修理費は土砂掘削作業に比べて増加することから、これを損料に換算して割増率を25%以内と定めているのを、同公団が岩石の種類にかかわらず一律に25%として積算の基準としたことによるものである。

 しかしながら、同公団が軟岩としている岩石の掘削作業は、爆破を行うことなくリッパ付きブルドーザにより破砕するものであって、破砕後の状態は大部分が小塊となったり、土砂状となったりしているのであるから、これを積込み、運搬するなどの作業に使用する機械の損料に硬岩の場合と同一の割増率を適用するのは適切でなく、岩石の状態に応じて定めるべきであると認められる。ちなみに、建設省ではこの種岩石の場合は低率の割増率を定めており、他団体においても割増率を一律に規定してはいない。いま、仮に軟岩掘削における機械の損料の割増率を他機関と同率にして修正計算すると、前記の積算額を約2億2300万円程度低減できたと認められる。

2 硬岩掘削における爆破経費等の積算について

 上記の山陽自動車道相生工事ほか17工事においては、軟岩掘削のほか爆破作業により硬岩掘削を施工しているが、これらの工事の硬岩1,821,135m2 の爆破経費等については、積算要領により総額17億0240万余円と算定している。この積算の内容についてみると、同公団が過去に行った爆破作業の調査結果に基づき、材料所要量は、岩石爆破100m3 当たりダイナマイト8kg、アンホ(硝安油剤爆薬)16kg、工業雷管80個及び導火線80mとし、爆破作業の編成人員及び1日当たりの作業量は、機械工0.5人、坑夫8人、土工4人で246m3 を施工することとし、また、爆破後の処理作業として集積作業にはブルドーザを、小割作業にはピックハンマを使用することとしている。

 しかしながら、近年、高速道路の建設は、大部分が山間部の人家から離れた箇所で施工されており、岩石の掘削量も多く、その爆破作業も比較的大規模なものになっていて、従来使用されていた工業雷管は電気雷管に代わり、また、ダイナマイトより安価なアンホが多量に使用されている。
 しかして、既往年度契約のものを含め爆破作業の実態について調査したところ、爆薬装てんのための1孔当たり穿(せん)孔長は、前記同公団の調査当時1m程度であったものが、平均3m程度と長くなったため起砕範囲が広がり、その結果、岩石爆破100m3 当たりの穿孔数及び延べ穿孔長は当時それぞれ80孔、80m程度であったものが8孔、23m程度と少なくなって、穿孔数が減少した分だけ雷管の使用量は減少し、1孔当たり穿孔長が長くなったことによる爆薬使用量の増加分にはほとんどアンホが使用されており、また、延べ穿孔長が短かくなった分だけ穿孔時間も短縮され、作業が効率的に行われている。更に、爆破後の岩石処理も大幅に機械化されていて、岩石の掘り起こし及び集積作業にはリッパ付きブルドーザが、小割作業には大型ブレーカが使用されている状況であった。

 以上のように、施工の実態は、過去に比べて、岩石爆破の材料費は2分の1程度、編成人員は3分の2程度と少なくなっているばかりでなく、1日当たり作業量は大幅に増加していて、このため、爆破後の岩石処理に大型の機械等を使用するようになっていることによる経費増を考慮しても、前記の積算額は、施工の実態に合わない過大なものとなっている。
 いま、仮に硬岩掘削における爆破経費等を、上記の施工実態に適合した方法によって修正計算すると、前記の積算額を約3億0500万円程度低減できたと認められる。
 このような事態を生じたのは、岩石掘削作業における機械の運転時間当たり損料の割増しの内容の検討が十分でなかったこと、また、硬岩掘削における爆破作業等の施工の実態を積算要領に反映させていなかったことによるものと認められる。
 ついては、日本道路公団においては、今後も引き続き同種工事を多数施行するものであるから、前記各項について、その実態等を早急に調査検討して、積算要領を適切なものに改定し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

(注)  札幌建設局ほか4建設局  札幌、新潟、大阪、広島、福岡各建設局