ページトップ
  • 昭和54年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 森林開発公団|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

大規模林業圏開発林道事業の施行について


大規模林業圏開発林道事業の施行について

 森林開発公団では、林野庁が昭和47年7月に策定した大規模林業圏開発基本計画(以下「基本計画」という。)に基づき、48年度から大規模林業圏開発林道(以下「大規模林道」という。)事業を実施している。
 この基本計画においては、利用度の低い広葉樹林が広範囲に存在する全国7地域の大規模林業圏(注1) において、48年度から65年度までの18年間に国、県道等と有機的に連絡する大規摸林道29路線(注2) (計画総延長4,155km。 このうち同公団が施行する路線延長2,372km(道路の構造設計は幅員7m2 車線、アスファルトコンクリート又はセメントコンクリート舗装)、公道の利用延長1,783km)の開設及び改良工事を実施し、これを骨格として中核林道、その他林道を配置し林道網を形成することにより林業の振興を図るとともに農業、畜産業等の発展に寄与することとしている。
 そして、同公団では、大規模林道の各路線ごとに実施計画を定めて着工することとしており、48年度から54年度までに18路線(計画延長1,548km、計画事業費4832億6720万余円)について逐次着工し、残りの11路線については55年度以降着工を予定している。この間に要する事業費については、国の補助金(原則として事業費に調整率(注3) を乗じた額に3分の2を乗じて得た額)と資金運用部資金からの借入金によって支弁することとしていて、この借入金は道、県及び受益者が各年度の事業費の確定後4年を超えない範囲内で農林水産大臣が定めるすえ置き期間を経た後21年の元利均等半年賦支払の方法により負担することとなっている。

 しかして、上記18路線の工事の実施状況についてみると、54年度末における施行延長は実施計画の1,548kmに対して122m(事業費総額354億8063万余円、完成延長32km)程度となっている。そして、このうち、遅くとも63年度までに完成することを 目途として48、49両年度に着工した11路線(計画延長1,015km、計画事業費2951億8400万余円)については、既に工事の平均実施予定期間12年間の約2分の1を経過しているが、54年度末までの施行延長は100km(事業費総額289億0475万余円、完成延長28km)程度にすぎないのに、50年度から54年度までの間に新たに7路線(計画延長532km、計画事業費1880億8319万余円)を追加して着工しており、この7路線の54年度末までの施行延長は22km(事業費総額65億7588万円、完成延長4km)程度となっている。しかして、これらの施行状況についてみると、本件林道について各地域の住民の要望が強いことなどにより、これら路線を多数の箇所にわたって部分的に施行したり、車両等の通行に当面支障のない既設の林道について、幅員7m等の構造にするための改良工事を先行したりしていて、当該地域の林業の振興等に貢献する効果の大きい国、県道等と連絡する区間の開設工事を優先して施行していない。したがって、早期に着工した前記11路線の施行部分における利用状況をみても、主として山村地域の住民の生活道として10箇所、延長22km程度が暫定的に利用されているにすぎず、大規模林道に引き続き実施することとしている中核林道の開設には全く着手しておらず、林業の振興等にほとんど寄与していない。

 このような状況からみて、大規模林道事業について基本計画策定後の諸情勢の変化を勘案して総合的な見直しを行うとともに、林業の振興等に対する事業効果の発現の度合いの高い区間の開設工事を先行して施行するなど再検討を行う要があると認められる。
 しかして、本事業について、各地域の受益者の要望が強いなどのため、大規模林業圏域間の均衡を図りながら実施せざるを得ない事情があり、また、実施計画の変更は他省庁及び関係地方公共団体との調整を要することや受益者との関連などもあって困難な状況もあるが、上記のような諸問題に対する対策を講じないまま推移すると、投下した多額の事業費が長期間休眠し、事業効果の発現が著しく遅延することとなる。

(注1)  7地域の大規模林業圏 北海道大規模林業圏(北海道)、北上山地(青森県、岩手県)、最上・会津山地(山形県、福島県)、飛越山地(富山県、岐阜県)、中国山地(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)、四国西南山地(愛媛県、高知県)、祖母・椎葉・五木山地(熊本県、大分県、宮崎県)

(注2)  大規模林道29路線

(1) 48、49両年度に着工した11路線 八戸・川内線(岩手県)、若桜(わかさ)・江府(こうふ)線(鳥取県)、日野・金城(かなぎ)線(鳥取県、島根県)、粟倉・木屋原(こやはら)線(岡山県、広島県)、東津野・城川線(愛媛県、高知県)、真室川・小国線(山形県)、飯豊(いいで)・桧枝岐(ひのえまた)線(山形県、福島県)、高山・大山線(岐阜県、富山県)、小田・池川線(愛媛県、高知県)、宇目・小国線(大分県)、宇目・須木線(宮崎県)

(2) 50年度以降に着工した7路線  波佐・阿武線(島根県、山口県)、菊池・人吉線(熊本県)、川井・住田線(岩手県)、大朝・鹿野(かの)線(広島県、山口県)、八幡・高山線(岐阜県)、清水・東津野線(高知県)、滝雄(たきゆう)・厚和線(北海道)

(3) 来着工の11路線  置戸(おけと)・雄別線(北海道)、平取(ひらとり)・目黒線(北海道)、米沢・下郷線(山形県、福島県)、関ヶ原・八幡線(岐阜県)、朝日・大山線(富山県)、大山・福光線(富山県)、比和・新庄線(広島県)、狐原・豊田線(山口県)、日吉・松野線(愛媛県)、広見・篠山(ささやま)線(愛媛県)、池川・吾北線(高知県)

(注3)  調整率  農林水産大臣が大規模林道の単位延長当たりの事業費の額等を勘案して定める国の負担額を算定するための係数で、1.11、1.08、1.05の三種類がある。