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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

土地区画整理事業施行地区内で造成盛土された水田等に係る水田利用再編奨励補助金の交付について


(2) 土地区画整理事業施行地区内で造成盛土された水田等に係る水田利用再編奨励補助金の交付について

 農林水産省では、過剰基調にある米の需給を均衡させるとともに、長期的な視点に立って農産物の需要の動向に即した総合的な自給力の向上を図るため、昭和53年度以降おおむね10年間の事業として水田利用再編対策を実施してきているが、この対策の実施期間中、米の生産調整に協力して水稲から水稲以外の作物への転作、農業協同組合等への水田の預託及び土地改良事業の通年施行(以下「転作等」という。)を実施した農業者に対して、水田利用再編対策実施要綱(昭和53年53農蚕第2379号農林事務次官依命通達)及び水田利用再編対策実施要領(昭和53年53農蚕第2380号農林省農蚕園芸局長通達)に基づき、水田利用再編奨励補助金(以下「奨励補助金」という。)の交付対象となる水田等において転作等が実施されていることを市町村長が確認したものについて、転作等の実施面積、転作作物の種類等に応じた奨励補助金を交付することとしている。
 そして、上記の要綱及び要領によると、奨励補助金の交付対象となる水田等としては、前年度において水稲の耕作が行われた水田、前年度に奨励補助金の交付対象となった水田等、44年度以降水稲の作付けが行われた水田であったもので現況は普通畑、樹園地、牧草地等となっているものなどがあり、これらに該当する限り、土地区画整理法(昭和29年法律第119号)に基づき、都市計画区域内で宅地の利用の増進等市街地の開発を図るための土地区画整理事業を施行した地区内の水田等についても、工事完了後の現況のいかんにかかわらず奨励補助金が交付されることになっていた。

 しかして、本院が、54年12月から56年8月までの間に、宮城県ほか11府県(注) 管内32市町の99土地区画整理事業施行地区内の水田等に係る53年度から55年度までの奨励補助金総額3億8412万余円(水田等延べ面積7,947千余m2 )について検査したところ、次のとおり、適切でないと認められるものが見受けられた。
 すなわち、前記の土地区画整理事業は、建設省所管国庫補助事業等により市町又は土地区画整理組合が農地等の所有者等の同意を得たうえで実施したものであるが、同事業施行地区内の水田等で工事が完了したものについてみると、道路高以上に盛土、整地されたうえ、側溝、縁石が設けられていたり、道路に上・下水道管やガス管が埋設されていたりするなどしていて、容易に住宅地等に転用される状態になっているものが延べ3,793千余m2 あり、これに対しても奨励補助金1億9525万余円が交付されていた。
 しかし、土地区画整理事業の工事が完了し土地の区画形質が上記のように変更を来し水稲の作付けが不可能となった水田等は、転作等が実施されているとしても、住宅地等として転用されるまでの間における暫定的なものであると認められ、このような土地に対して奨励補助金を交付するのは水稲から他作物への転作の促進とその定着性の向上を図ることとした水田利用再編対策の本旨に沿わない不合理なものと認められるばかりでなく、市街地開発の施策との整合性を欠くことにもなり適切でないと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、56年4月に前記要領を改め、56年度以降、当該年産の水稲の作付期前に土地区画整理事業の工事が完了した土地で、当該年度に水稲の作付けが不可能なものに対しては奨励補助金を交付しないこととする処置を講じた。

 (注)  宮城県ほか11府県 宮城、福島、埼玉、新潟、岐阜、愛知、岡山、広島、高知、福岡、宮崎各県、京都府