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  • 昭和55年度|
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トンネル工事の施行に当たり、アーチ部の覆工コンクリートを設計と相違して施工したもの


(151) トンネル工事の施行に当たり、アーチ部の覆工コンクリートを設計と相違して施工したもの

科目 (工事勘定) (項)基幹施設増強費
部局等の名称 大阪工事局岡山工事事務所
工事名 山陰線嶋田T工事
工事の概要 山陰本線米子、安来間の線路増設工事の一環として、複線型断面のトンネル延長438m及び盛土等を施工する工事
工事費 744,883,636円(当初契約額435,000,000円)
請負人 日本国土開発株式会社
契約 昭和53年11月 指名競争契約
工期 昭和53年12月〜56年5月
(トンネル部については56年2月しゅん功検査)
支払 昭和54年6月〜56年3月 13回 支払額636,081,556円
(うちトンネル部 昭和54年9月〜56年3月 10回 542,696,449円)

 この工事は、監督及び検査が適切でなかったため、トンネル延長438mのうち330.1mのアーチ部覆工コンクリート(工事費相当額130,332,680円)の施工が設計と相違し、その強度が設計に比べて著しく低くなっていて工事の目的を達していないと認められる。

(説明)
 この工事で施工するトンネル延長438m(工事費相当額542,696,449円)は、上半先進工法(注) により施工するもので、設計図書によると、アーチ部は掘削した地山に175mm又は200mm規格の鋼製H型支保工を1m又は0.9m間隔に建て込み、アーチ部及び側壁部の覆工コンクリートの設計巻き厚(余巻き分を除いた仕上り厚さ)は、当初地質の良い箇所155mについては45cm、地質の悪い箇所283mについては60cmとしていたが、施工に際して全延長にわたり地質が悪いことが判明したため、地質の良いとしていた箇所についても60cmの設計に変更した。そして、アーチ部の覆工コンクリートは42の打設区間に分割して施工することとなっていた。
 しかるに、アーチ部の覆工コンクリートについては、その表面にき裂が相当数見受けられたので、各打設区間ごとに10箇所から20箇所、42打設区間で計585箇所をせん孔又はコアを採取して出来形を調査したところ、うち323箇所はその施工巻き厚が設計巻き厚より不足していて、これらの不足箇所は全打設区間にわたっていた。特に、上記のうち設計巻き厚を45cmから60cmに変更した14打設区間の142.7mを含む32打設区間の延長330.1mについては、調査した465箇所のうち施工巻き厚が45cm以下となっている箇所が118箇所もあり、なかには設計巻き厚の2分の1以下となっているものもあった。
 また、覆工コンクリートの背面については、余掘り部分の空げきにはできるだけコンクリートをてん充して空げきが残らないように施工することになっているのに、余掘り部分へのコンクリートのてん充が十分でなかったり、前記のとおり施工巻き厚が不足していたりしていたため、アーチ部の覆工コンクリートと地山との間に10cmから82cmの空げきを生じている箇所が前記585調査箇所のうち352箇所あった。
 このため、上記トンネル延長330.1mのアーチ部の覆工コンクリート(工事費相当額130,332,680円)は、強度が設計に比べて著しく低くなっていて工事の目的を達していないと認められる。

 (注)  上半先進工法 トンネルの上部半断面の掘削及びコンクリートの巻き立てを施工し、その後に下部半断面の掘削及びコンクリートの巻き立てを施工する工法