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  • 昭和55年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 第14 中小企業事業団|
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  • 貸付金

中小企業高度化資金等の貸付けが不当と認められるもの


(172)−(176) 中小企業高度化資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業事集団(昭和55年10月1日以前は「中小企業振興事業団」)
貸付けの根拠 中小企業振興事業団法(昭和42年法律第56号)
貸付けの内容 中小企業者等に対し中小企業高度化資金等の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
事業団の貸付先 岩手県ほか1府2県
同上貸付金額 1,947,800,000円
府県の貸付先 中小企業者等5
同上貸付金額 2,254,290,000円

 上記の中小企業高度化資金等の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果となっていて、中小企業事業団の貸付金相当額220,850,689円が不当と認められる。

(説明)
 中小企業事業団では、中小企業者が企業規模の適正化、事業の共同化、工場・店舗等の集団化等を図るための事業の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金として中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を無利子から最高年4.1%、償還期限を最高16年以内とし、都道府県はこれに自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けていて、その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%、償還期限を上記と同様としていて、極めて低利かつ長期のものとなっている。また、市町村等が工場・店舗等の集団化の事業の用に供する土地を先行取得し、これを造成して中小企業者に譲渡する事業を行う場合に、これに必要な資金として先行取得資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源のほぼ全額を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を年8.4%から6.9%(昭和49年10月から54年3月まで)、償還期限を5年以内とし、都道府県はこれと同様の条件で市町村等に貸し付けている。
 しかして、上記の貸付けについて調査したところ、貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたり、貸付け後、貸付対象施設等が貸付けの目的外に使用され又は賃貸されていたりなどしていて、貸付け及び貸付け後の管理が不当と認められるものが、次のとおり貸付金相当額288,643,146円(うち同事業団の貸付金相当額220,850,689円)見受けられた。

府県名 府県の貸付先 貸付対象 貸付昭和年月
(貸付利率)
償還期限
昭和年月
貸付金額
(同上に対する事業団貸付金相当額)
左のうち不当と認めた貸付金相当額
(同上に対する事業団貸付金租当額)
摘要
千円 千円
 (中小企業高度化資金)
(172) 岩手県 協同組合卸センター 土地  53.3
(年2.7%)
67.9 558,780
(361,050)
14,891
(9,621)
目的外使用
 この貸付けは、店舗等集団化事業の用に供する土地52,783m2 を取得するのに必要な資金859,672,848円の一部として558,780,000円を貸し付けたものであるが、借受人は、この土地の一部1,399m2 に昭和55年9月中小企業者でない卸売業者が事務所、倉庫を建設することを認めたうえ、これらが完成した56年3月に上記業者と当該土地の売買予約及び使用貸借契約を締結していた。
 したがって、上記使用貸借に係る部分の土地に対する貸付金相当額14,891,407円(事業団貸付金相当額9,621,930円)は不当な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、56年6月、繰上償還の措置が執られた。
(173) 大阪府 本通商店街振興組合 アーケード 54.8
(無利子)
66.8 91,520
(45,760)
14,017
(7,008)
低額設置

 この貸付けは、特定商店街共同施設事業の用に供するアーケードを設置するのに必要な資金114,437,149円の一部として91,520,000円を貸し付けたものであるが、実際は、値引きを受けて、貸付対象事業費より低額な96,877,549円で設置していた。
 したがって、適切な貸付金額は、実際の事業費の80%に相当する77,502,039円となり、本件貸付金額との差額14,017,961円(事業団貸付金相当額7,008,981円)は過大な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、昭和56年10月、繰上償還の措置が執られた。

(174) 岡山県 協同組合ショッピングセンター 共同店舗ほか 48.5
(年2.7%)
59.9 159,740
(103,216)
143,767 
(92,895)
貸付目的の不達成及び管理不適切
 この貸付けは、小売商業店舗共同化事業の用に供する共同店舗等を設置するのに必要な資金255,691,000円の一部として159,740,000円を貸し付けたものである。しかし、借受人は、昭和53年12月貸付対象施設の全部を家庭用電気製品販売会社に15年間賃貸する仮契約(55年2月本契約)を締結しており、したがって、この時点で小売商業店舗共同化事業としての貸付目的に沿わなくなったものであり、岡山県においても、借受人からこの報告を受けているのであるから、直ちに繰上償還請求を行い、貸付金の早期回収の措置を講ずべきであったのに、これを行わず、55年6月に至ってようやく繰上償還請求を行ったが、その後の回収については上記施設の賃貸に伴い借受人が得た賃貸料収入等から本件貸付金利息の一部を徴したにすぎず、貸付金の管理回収措置が著しく適切を欠いている。このため55年6月以降貸付金残高143,767,000円(事業団貸付金相当額92,895,000円)の全額が延滞し、早期回収が困難となっている。
(175) 大分県 衣料品小売業者 土地店舗ほか 45.3
46.3
(年2.7%)
60.3
61.3
18,300
(11,824)
13,114
(8,472)
管理不適切
 この貸付けは、商店街近代化事業の用に供する土地、店舗等を取得又は設置するのに必要な資金28,214,000円の一部として18,300,000円を貸し付けたものである。しかし、借受人は、昭和50年頃から事業の経営が悪化したため、借受人の所属する組合が約定償還金を代位弁済していたが、53年9月破産し、貸付対象施設は54年7月競売された。しかしながら、大分県は、貸付対象施設に設定していた抵当権について、上記組合から代位弁済金額を担保するため抵当権の一部譲渡を要請され、52年8月これに応じたが、その際、誤って抵当権の全部を消滅させてしまっていたため上記の競売による配当金を全く受けられず、貸付金残高13,114,000円(事業団貸付金相当額8,472,000円)が回収されていなかった。
 なお、本件事業団貸付金相当額については、56年8月、同県から償還された。 
 (先行取得資金)
(176) 岩手県 北上市 土地 49.12から
53.3まで
(年8.4%から
6.9%まで)
54.9から
57.9まで
1,425,950
(1,425,950)
102,852
(102,852)
目的外売却

 この貸付けは、工場等集団化事業のための土地195,120m2 を先行取得するのに必要な資金1,486,504,000円の一部として1,425,950,000円を貸し付けたものであるが、借受人は、昭和54年9月、上記土地のうち35,145m2 を本件事業に関係のない者に売却していた。
 したがって、上記売却部分に係る土地に対する貸付金相当額102,852,778円(事業団貸付金相当額102,852,778円)は不当な貸付けとなっている。
 なお、本件不当貸付金額については、本院の注意により、56年10月、繰上償還の措置が執られた。

2,254,290
(1,947,800)
288,643
(220,850)