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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 租税

租税債権の保全について処置当を得ないため徴収の機会を失したもの


(2) 租税債権の保全について処置当を得ないため徴収の機会を失したもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
 (項)各税受入金
部局等の名称 神戸税関
債権発生の原因となった国税の種別 酒税
滞納者及び滞納税額 株式会社安川 3,214,905,947円

 上記部局では、上記酒税の滞納処分に当たって、関係部局に対する連絡が適切でなかったため、法人税の還付請求権20,722,506円相当額を徴収する機会を失していて、処置当を得ないと認められる。

(説明)

 上記滞納税額3,214,905,947円は、上記部局が有している国税に係る債権のうち、昭和56年12月及び57年2月に徴収決定した株式会社安川(以下「滞納者」という。)に係る酒税の滞納税額である。

 すなわち、上記部局は、滞納者が54年2月から55年11月までにウイスキー類を輸入するに際して不正行為により酒税を免れていたことから、これに対し56年12月酒税2,901,819,500円を更正のうえ徴収決定し、また、56年1月から6月までに輸入したウイスキー類について57年2月酒税315,114,800円を更正のうえ徴収決定したが、これらの酒税額計3,216,934,300円のうち57年3月納付を受けた2,028,353円の残額について債権を有していた。

 そこで、上記部局では、この滞納処分のため、57年1月25日、滞納者の土地、家屋(固定資産税評価額合計81,450,018円)及び定期預金等228,066,018円を対象として差押えを行っているが、これらの財産にはいずれも国税債権に優先する抵当権により担保される債権等があるため、差押処分による国税債権の保全の効果はないに等しく、上記滞納税額の徴収は極めて困難な状況となっている。

 一方、滞納者は、57年3月に、法人税等を所掌する丸亀税務署に対して、56年1月から12月までの事業年度分法人税確定申告を行うに当たって、前記酒税2,901,819,500円を損金に計上したことから多額の欠損金を生じたため、法人税法(昭和40年法律第34号)第80条(中間納付額の還付)及び第81条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定に基づく法人税額の還付を請求しており、これに対し同税務署では、57年3月及び5月、法人税還付金8,126,900円(還付加算金219,800円を含む。)及び12,595,606円(還付金総額19,137,006円のうち55年1月から12月までの事業年度分の未納法人税額等6,541,400円に充当した残額)を支払決定し、これを還付している。

 しかしながら、上記部局では、前記差押処分に先立つ57年1月14日丸亀税務署に赴き、同税務署から滞納者の55年1月から12月までの事業年度の資産や損益の内容を聴取しており、その際、上記部局が56年12月に行った本件酒税の更正により、滞納者において56年1月から12月までの事業年度に多額の欠損金が生じ、法人税の還付金が発生することが予測できたのであるから、その後も同税務署に対する連絡を継続して行っていれば、本件滞納税額の収納に充てることができたと認められる還付請求権が発生したことを容易に確認できたと認められる。

 しかるに、徴収が著しく困難で多額な本件滞納税額について収納確保に特段の配慮を払うことなく、上記の容易に確認できこれを差し押えて滞納税額の収納に充てるべき還付請求権20,722,506円相当額を看過し、徴収の機会を失して、滞納者に還付金を取得させる結果となったのは、その処置が適切でなかったと認められる。