ページトップ
  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第9 建設省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

下水道終末処理場の機械設備の整備について処置を要求したもの


下水道終末処理場の機械設備の整備について処置を要求したもの

(昭和57年11月18日付け57検第400号 建設大臣あて)


 建設省の補助を受けて北海道ほか52事業主体が建設し、昭和50年度から54年度までの間に供用を開始した十勝川流域下水道浄化センターほか59箇所の流域下水道又は公共下水道終末処理場(建設事業費4518億4206万余円、国庫補助金2615億1158万円)の主要機械設備の利活用状況について検査したところ、供用開始後2年から7年を経過した56年度末現在において、汚水処理量が計画を大幅に下回っているため一部が稼働していなかったり著しく低い稼働状況となっていたりしていて投下事業費がその効果を十分発現するに至っておらず、このまま推移すると今後も当分の間この状態が続くことが見込まれていて適切とは認められない事態が、取手市戸頭地区終末処理場ほか13の終末処理場(注) (建設事業費1142億2154万円、国庫補助金641億4334万余円、以下「処理場」という。)において事業費相当額55億8691万余円(国庫補助金相当額34億9268万余円)見受けられた。

 すなわち、上記各処理場では、(ア) 関連する管きょ整備(以下「面整備」という。)が予算上の制約、道路や交通等の施工上の障害、工事費の増こうなどのため予定どおり進ちょくしていないこと、(イ) 処理区域内の住宅建設の遅延などのため計画人口と現在の人口に相当の開きがあること、(ウ) 市町村が単独で施行する管きょの工事や受益者が施行することになっている便所水洗化等の工事が遅延していること、(エ)現在の1人当たり汚水排出量が計画量を下回っていることなどから、供用開始以降2年から7年を経過している56年度末においても、汚水処理量が処理能力を大幅に下回っていて、このため、処理場施設のうち、最初沈殿池、エアレーションタンク及び最終沈殿池から構成されている水処理施設が十分利用されておらず、これら施設に設置されている主要機械設備である汚泥かき寄せ機、送風機、散気装置、附帯機器類等が稼働していないものや著しく低い稼働状況となっているものがあり、また、汚水(雨水)ポンプ、汚泥脱水機及び焼却炉についても同様の事態となっているものが見受けられた。しかも、前記のような原因は、いずれについてみても、その解消が当分の間見込まれないと認められる状況である。なお、処理場のうちには、補助事業で設置したポンプや送風機の能力が当分の間必要の程度を超えているので、これを使用することによる運転費用の不経済を避けるなどの理由から小型のものを事業主体独自で別途に設置して使用している箇所さえも見受けられる状況であった。

 いま、これらのうち2、3の事例を挙げると別記のとおりである。

 しかして、上記の機械設備用機器(以下「機器」という。)は、技術改良によって比較的早期に陳腐化したり、経年によって老朽劣化し易い箇所があったりしているものが多く、また、機器の設置据付けはさして長期間には亘らないものが多いのであるから、流入汚水量の増加見込みをできる限り明確にして、これに見合ったものを選定のうえ設置し、余剰となることのないよう配慮すべきであると認められるのに、前記のように供用開始後数箇年を経過してもなお未稼働又は著しく低い稼働状況のままとなっているのは国庫補助金の投資効率の観点から適切でないと認められる。

 このような事態となっているのは、機器の設置に当たって、上記のような機器の特殊性と、流入汚水量が供用開始後当分の間計画より相当に下回るという実態が反映されておらず、例えば、当初は、経常的に安定した汚水量が流入するようになった場合に妥当と考えられる容量よりも小さい容量の機械を段階的に設置することとするなどのきめ細かい配慮が払われていないことによると認められる。

 ついては、前記14処理場について面整備を促進するなどして事態の早期解消を図ることはもとより、下水道施設の整備は今後も引き続き計画的に多額の予算を投入して実施されることが見込まれるのであるから、建設省において、前記の事態にかんがみ、当面、処理場の機器の設計等について、供用開始後当分の間の汚水処理量の少ない期間に対応できるよう適切な指針を早急に作成するなどして事業主体に示すとともに的確な審査及び指導を行い、もって国庫補助金の投資効率を高める要があると認められる。

<事例1> 

 蒲郡市が建設した蒲郡市下水道浄化センターは、処理区域面積を2,054haとする全体計画の第1期計画として、計画目標年次を65年とし、処理区域面積560ha、計画人口40,100人、1日最大処理能力48,850m3 の事業計画で、48年10月に建設に着手し、52年8月に供用を開始したものである。

 しかして、本処理場の処理能力48,850m3 は当初処理人口23,900人の家庭汚水14,650m3 のほか工場排水32,200m3 等を見込んでいたところ、工場排水に水質の特に悪いものがあってこれをそのまま受け入れることが不適当と判断されたため、52年度に処理区域面積を拡大して処理人口を40,100人(家庭汚水量29,000m3 )とするとともに、工場排水を15,000m3 に減少するなど計画変更の認可を受けたものである。しかしながら、56年度末現在、面整備は工事施工上の障害や予算不足などのため、計画の560haに対し298haと大幅に遅延し、処理人口は計画の40,100人に対して12,200人、工場排水は1日当たり300m3 程度にすぎず、更に1人当たり使用水量の伸びが予想を下回っていることもあって、その汚水処理量は56年度末においても1日最大処理能力48,850m3 を著しく下回る8,920m3 (年間平均ではわずかに4,570m3 )にすぎず、今後も当分の間この状態が続くことが見込まれる状況である。

 上記のように汚水処理量が計画を著しく下回っているため、最初沈殿池、最終沈殿池各2池、エアレーションタンク1池から構成されている水処理施設2系列のうち1系列に設置されている汚泥かき寄せ機及び散気装置191,930,000円(国庫補助金相当額127,953,333円)は全く稼働しておらず、また、汚水ポンプ(吐出能力毎分25m3 )3台及び送風機(送風能力毎分95m3 2台、190m3 1台)3台のうち各1台84,000,000円(国庫補助金相当額54,648,533円)も全く稼働しておらず、更に、汚泥脱水機(脱水能力毎時10m3 )2台76,991,000円(国庫補助金相当額51,327,333円)についても汚泥発生量が少ないため56年度中1台当たりわずかに31時間程度稼働したにすぎない状況である。

<事例2>

 三島市が建設した三島終末処理場は、処理区域面積を466.8haとする全体計画の第1期計画として、計画目標年次を65年とし、処理区域面積290ha、計画人口34,200人、1日最大処理能力31,000m3 の事業計画で、46年4月に建設に着手し、51年11月に供用を開始したものである。

 しかして、本処理場の処理対象区域に係る面整備については処理場が供用開始された51年度末においては計画の290haに対してわずか28ha の進ちょく状況となっており、その後引き続き整備を進めてはいるが、工事施工上の障害等のため56年度末現在においてもなお193haと大幅に遅延し、処理人口は計画の34,200人に対して11,600人程度にすぎず、更に1人当たり使用水量の伸びが予想を下回っていることもあって、その汚水処理量は56年度末においても1日最大処理能力31,000m3 を著しく下回る14,529m3 (年間平均ではわずかに6,969m3 )にすぎず、今後も当分の間この状態が続くことが見込まれる状況である。

 上記のように汚水処理量が計画を著しく下回っているため、最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池各3池から構成されている水処理施設2系列のうち1系列各3池(最終沈殿池はこのほかに1池)に設置されている汚泥かき寄せ機及び散気装置166,443,000円(国庫補助金相当額,110,962,000円)は全く稼働しておらず、更に、大型送風機(送風能力毎分96m3 )2台110,530,000円(国庫補助金相当額73,686,666円)は、汚水処理量が少ないことから、同市では維持管理費の節減を図って、その負担で小型の送風機(送風能力毎分27m3 )2台を設置し使用しているため、1台は全く稼働しておらず、他の1台についても56年度中わずかに10時間程度稼働したにすぎない状況である。

<事例3>

 新南陽市が建設した新南陽市終末処理場は、処理区域面積を1,219haとする全体計画の第1期計画として、計画目標年次を65年とし、処理区域面積264ha、処理人口21,300人、1日最大処理能力15,616m3 の事業計画で、50年8月に建設に着手し、54年12月に供用を開始したものである。

 しかして、本処理場の処理対象区域に係る面整備については計画の264haに対して250haと進ちょくしているものの、人口の増加が見込みを大幅に下回ったこと、便所水洗化工事が遅延していることなどから、56年度末現在で処理人口は計画の21,300人に対して6,200人程度にすぎず、更に1人当たり使用水量の伸びが予想を下回っていることもあって、その汚水処理量は56年度末においても異状降雨時の流入水を含めても1日最大処理能力15,616m3 を著しく下回る8,430m3 (年間平均ではわずかに2,028m3 )となっているにすぎず、今後も当分の間この状態が続くことが見込まれる状況である。

 上記のように汚水処理量が計画を著しく下回っているため、最初沈殿池、エアレーションタンク、最終沈殿池各2池のうち、各1池に設置されている汚泥かき寄せ機及び散気装置121,646,000円(国庫補助金相当額81,097,333円)は全く稼働しておらず、更に、送風機(送風能力毎分110m3 )2台137,000,000円(国庫補助金相当額91,333,333円)は、汚水処理量が少ないことから、同市では維持管理費の節減を図って、その負担で小型の送風機(送風能力毎分30m3 )1台を設置し使用しているため全く稼働していない状況である。

(注)  取手市戸頭地区終末処理場ほか13の終末処理場 取手市戸頭地区終末処理場、伊勢崎市羽黒終末処理場、横浜市金沢下水処理場、三島市三島終末処理場、富士市西部浄化センター、名古屋市宝神処理場、蒲郡市下水道浄化センタ−、兵庫県武庫川下流処理場、岡山市芳賀佐山浄化センター、新南陽市終末処理場、丸亀市浄化センター、観音寺市終末処理場、牟礼町浄化苑、北九州市曽根終末処理場