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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本国有鉄道|
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  • 工事

銅高架橋新設工事の施行に当たり、ボルト孔のリーマー加工費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの


(171) 銅高架橋新設工事の施行に当たり、ボルト孔のリーマー加工費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目 (工事勘定) (項)基幹施設増強費 (項)新幹線建設費
部局等の名称 東京第三工事局
工事名 東北幹通大宮駅271南鉄骨建方他2
工事の概要 東北新幹線の建設に伴う大宮駅鋼高架橋工事のうち、鉄骨鉄筋コンクリート基礎構造を築造する工事の一部で鋼管柱及び大梁の張出し部に鉄骨地中梁を連結するなどの工事
工事費 173,521,280円(当初契約額 141,500,000円)
請負人 佐藤工業株式会社
契約 昭和56年7月 指名競争契約
支払 昭和56年10月、12月 2回(56年度支払額127,930,000円)

 この工事は、鋼管柱等の張出し部と鉄骨地中梁とを連結するボルト孔のずれを調整するためのリーマー加工費(注1) の積算に当たって、ボルト孔のずれは場所によって一様ではないのに、誤って、ずれがほとんどない箇所のボルト孔を含めてリーマー加工の対象孔数を算出したため、契約額が約1840万円割高になったと認められる。

(説明)

 この工事は、東北新幹線大宮駅の鋼高架橋構造物(地上高23.5m、地下9.9m、幅員最大57.7m、全長371.5m、床面積19,783m2 )を建設する工事のうち、鉄骨鉄筋コンクリート基礎を築造する工事の一部で、鋼管柱(径1m、長さ26.9m)56本の張出し部(ウェブ幅230cm、フランジ幅90cm)に、大梁(ウェブ幅及びフランジ幅が鋼管柱張出し部と同一の鉄骨製地中梁)103本を、また、大梁の中間張出し部(ウェブ幅230cm、フランジ幅30cm又は60cm)に、小梁(ウェブ幅及びフランジ幅が中間張出し部と同一の鉄骨製地中梁)132本をそれぞれ連結するもので、連結箇所に添接板をあてがったうえ、これらを高カボルトで締め付けて連結する鉄骨建方工を主な内容としている。

 この工事の予定価格のうち、鉄骨建方工費(積算額115,891,779円)の内訳についてみると、大梁の連結箇所189箇所におけるボルト孔総数99,400孔のうち75%に当たる74,600孔については、地中梁で連結される鋼管柱張出し部相互間に最大16mmの高低差が生じたことから、連結箇所にあらかじめ削孔してあったボルト孔(径24.5mm、以下同じ。)と添接板のボルト孔の位置にずれが生じ、そのままではボルト(径22mm)を通すことができなくなったため、ボルト孔を拡げるリーマー加工を施す必要があるとして、その加工費を46,266,430円と積算していた。

 隣接鋼管柱張出し部相互間に高低差が生じたのは、大官駅鋼高架橋工事については、東北新幹線の開業(昭和57年6月)を控え工期を短縮する必要があったため、深礎工法(注2) で施工したくいに鋼管柱を建て込み地上部分を構築した後、基礎部分の土砂を掘削したうえ各鋼管柱を地中梁で連結して鉄骨鉄筋コンクリート基礎を築造する工程となっていて、各鋼管柱の建込み後本件工事着手時までの約1年半の間に、深礎ぐいが沈下したことに伴い鋼管柱が不等沈下したことによる。

 しかして、前記のリーマー加工孔数74,600孔(ウェブ部35,550孔、フランジ部39,050孔)の算出についてみると、1連結箇所を張出し部側と地中梁側の2箇所の締付け箇所に分け、大梁の締付け箇所を378箇所としたうえ、まず、張出し部側について仮締めしたと想定した場合、地中梁側についてはボルト孔径とボルト径との差2.5mmを基に施工上の余裕を考慮するなどして、1締付け箇所ごとに、ウェブ部における地中梁のボルト孔と添接板のボルト孔との間に0.884mm 以上のずれがあるものが1孔でもあれば、ウェブ部及び上下両フランジのすべてのボルト孔についてリーマー加工が必要であるとし、次に、ボルト孔のずれが大きくて地中梁側のリーマー加工だけでこのずれを修正しきれない場合は、対応する張出し部側にもリーマー加工をすることとしていた。そして、これに基づいて要加工箇所を求めたところ、前記締付け箇所378箇所のうち288箇所がこれに該当することとなり、両者の比率(75%に調整)を大梁のボルト孔総数99,400孔に乗じて得た74,600孔をリーマー加工の対象孔数としたものである。なお、小梁の連結箇所(締付け箇所数にして536箇所)のボルト孔については、リーマー加工の要否の検討及び要加工孔数の算出は行われていなかった。

 しかしながら、本件リーマー加工は、前記張出し部相互間の高低差に伴い、下図のとおり地中梁の両端と張出し部との間の離れが上下不均一となり、このため、これらにあらかじめ削孔してあったボルト孔と添接板のボルト孔との位置にずれが生ずることにより必要となったもので、その離れは、ウェブ上部の開きが大きい締付け箇所では下部の開きが小さく、逆にウェブ上部の開きが小さい場合は下部の開きが大きくなるため、地中梁のボルト孔と添接板のボルト孔とのずれは、ウェブ部についてはボルト孔の全数において、また、フランジ部については上フランジと下フランジとの間でそれぞれ異なっているのに、これに対する配慮を欠いて上記のように締付け箇所ごとに一律にリーマー加工の要否を決定したのは適切とは認められない。

銅高架橋新設工事の施行に当たり、ボルト孔のリーマー加工費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったものの図1

 すなわち、日本国有鉄道規格等によると、径22mmのボルトは製作許容誤差を見込むと最大22.8mmの径となり、一方、径24.5mmのボルト孔に添接板を組み合わせる場合は最小23mmの孔径を確保することになっているので、前記張出し部相互間の高低差に伴いボルト孔にリーマー加工が必要となるのは、最大に見積ったとしても地中梁及び張出し部のボルト孔と添接板のボルト孔のずれが0.2mm以上となるボルト孔の場合であるから、このことを前提として、本件大梁及び小梁の連結箇所におけるボルト孔数それぞれ99,400孔及び60,654孔計160,054孔についてリーマー加工の要否を検討し、要加工孔数を再計算すると次のとおりとなるものである。

(1)  大梁のウェブ部については、前記のとおりウェブの上部と下部のボルト孔ではずれの大きさが異なり、1締付け箇所当たり105孔から318孔に及ぶボルト孔のうち、ずれの小さい方のボルト孔の中には、ずれの大きさが0.2mm以内のものも相当数あるので、これらはリーマー加工の対象から除外すべきであり、そのようにして締付け箇所ごとの要加工孔数を集計すると20,685孔となり、前記の積算孔数35,550孔は14,865孔過大となっている。
(2)  大梁のフランジ部については、ボルト孔のずれはウェブ部のボルト孔のずれが大きい上下いずれかのフランジだけに生ずるのであるから、ウェブ部においてリーマー加工を要する締付け箇所については、上下両フランジのすべてのボルト孔についてもリーマー加工を要するとしたのは誤りであって、上下フランジのいずれか一方のボルト孔についてはリーマー加工対象から除外すべきであり、更にウェブ部の場合と同様に、ずれの大きさが0.2mm未満のボルト孔についても除外することとして要加工孔数を集計すると13,368孔となり、前記の積算孔数39,050孔は25,682孔過大となっている。
(3)  小梁のボルト孔については、前記のとおりリーマー加工孔数の算出を行っていなかったが、これについても大梁の中間張出し部の高低差に伴いリーマー加工を必要とするボルト孔が生ずるもので、その要加工孔数を上記同様の方法により計算するとウェブ部11,120孔、フランジ部3,880孔計15,000孔となる。

 したがって、上記(1)、(2)、(3)によりリーマー加工を必要とするボルト孔は49,053孔、そのリーマー加工費は30,362,710円となるから、仮にこれにより工事費を修正計算すると総額155,079,040円となり、本件契約額はこれに比べて約1840万円割高であったと認められる。

(注1) リーマー加工 ボルト孔の周囲を削り取り拡大する整孔作業
(注2)

深礎工法 地盤中に丸い穴を人力で掘削し、山止めをしながら掘り下げて行く工法で、この穴にコンクリートをてん充して築造された基礎構造物を深礎ぐいという。

(参考図)

(参考図)