ページトップ
  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本道路公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

潜函工事用コンプレッサ運転電気料の積算について処置を要求したもの


 潜函工事用コンプレッサ運転電気料の積算について処置を要求したもの

(昭和57年11月18日付け57検第401号 日本道路公団総裁あて)

 日本道路公団では、高速道路の建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち、東京第一建設局ほか5建設局(注) が昭和56年度に施行している常磐自動車道久慈川橋(下部工)工事ほか14工事(工事費総額264億2700万円)について検査したところ、次のとおり、潜函工事用コンプレッサの運転に要する電気料(以下「電気料」という。)の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事においては、橋台又は橋脚の基礎を潜函工法により築造するため、コンプレッサを運転して潜函作業室(以下「函内」という。)に送気しているが、その電気料の積算についてみると、同公団本社制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づき所要空気量を計算し、これに必要なコンプレッサとして吐出圧力7kg/cm2 のもの(以下「高圧コンプレッサ」という。)を使用することとして、総使用電力量を2087万キロワット時と算出し、これに1キロワット時当たりの電気料金を乗じて総額4億9656万余円と算定していた。

 しかして、高圧コンプレッサの空気吐出量及び所要空気量に基づく使用電力量の算定についてみると、

(1) 潜函工事における函内送気用として必要なコンプレッサの使用電力量は、積算要領において定められている上記高圧コンプレッサの1馬力1時間当たりの空気吐出量が6m3 であることから、この空気吐出量を基に算定していた。

 しかしながら、高圧コンプレッサは一般に削岩機等の動力源として使用されるもので、これを函内送気用に使用するのは経済的でないことから、施工の実態を調査したところ、本件各工事においては吐出圧力が4kg/cm2 以下の低圧コンプレッサが使用されていて、その主な機種の平均空気吐出量は1馬力1時間当たり11m3 程度となっていた。また、他団体の積算基準においても、潜函工事用コンプレッサの空気吐出量は1馬力1時間当たり9m3 程度とされていて、これに比べても本件積算に適用した空気吐出量6m3 は3分の2程度となっており、ひいて使用電力量が3分の1程度過大に算定されていた。

(2) 函内の所要空気量は、掘削作業日と掘削休止日(潜函の躯(く)体構築等の作業日と休日とから成る。)とに区分して計算することとし、掘削作業日は掘削土砂搬出等のため気閘(こう)を開閉するので、その所要空気量は掘削休止日のおおむね1.5倍から8.6倍としていた。そして、掘削作業日の所要空気量は1日24時間連続して掘削を行うこととして計算していた。

 しかしながら、函内での掘削作業は最大3kg/cm2 程度の圧力の下で行われ、労働安全上、関係法規により作業時間が制約されるため、掘削作業時間は加圧の度合に応じて1日(3交替の場合)7.5時間ないし20.1時間となっているのに一律に24時間連続して掘削するものとして所要空気量を計算するのは適切とは認められず、掘削作業を行わない16.5時間ないし3.9時間については掘削休止日と同様に所要空気量を計算すべきであり、このようにしたとすれば使用電力量を相当程度低減することができたと認められる。

 いま、仮に上記(1)、(2)により修正計算すると、総使用電力量は1154万キロワット時で足り、電気料を約1億9000万円程度低減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、潜函工事に使用する函内送気用コンプレッサの機種の選定に対する検討が十分でなかったことや、この種コンプレッサの運転を伴う函内作業の実態等を積算要領に反映させていなかったことによると認められる。

 しかして、本院が上記について見解をただしたところ、日本道路公団では、今後実態調査を行い適正な積算要領を作成するまでの経過措置として、57年11月に取りあえず使用電力量をある程度低減することを各建設局等の関係課長に指示してはいるが、この種工事は今後も引き続き多数施行することが見込まれるので、速やかに調査検討を行い、積算要領を適切なものに改定し、もって予定価格積算の適正を期する要があると認められる。

 (注)  東京第一建設局ほか5建設局  東京第一、東京第二、新潟、名古屋、広島及び福岡各建設局

(参考図)

(参考図)