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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

トンネル工事における労務費の積算について


トンネル工事における労務費の積算について

 日本道路公団では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、そのうち札幌建設局ほか6建設局(注1) が昭和56年度中に契約している道央自動車道虎杖浜トンネル工事ほか22工事(工事費総額722億0350万円)について検査したところ、次のとおり、トンネル工事における仮設備運転保守労務費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

1 コンプレッサの運転保守労務費について

 上記の23工事はいずれもトンネル工事を施工するもので、トンネルの掘削に使用する削岩機等の動力用に圧縮空気を供給するためトンネルの坑外にコンプレッサ室を設けて、定置式コンプレッサを配置することとしている。そして、その運転保守労務費の積算についてみると、コンプレッサの運転状態を常時監視する必要があるとして、同公団本社制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)により、1方(ひとかた)当たり(注2) 機械工1人と補助者として土工0.5人を見込んで、23工事で総額4億4650万余円と算定していた。

 しかしながら、近年、トンネル工事で使用されているコンプレッサは自動制御ができるものがほとんどであって、機械損料の算定に当たってもこの機種が対象となっているものであり、従来のコンプレッサに比べて運転保守に人手を必要とせず、現に、施工の実態を調査した結果でもコンプレッサの始動後は点検、巡回の作業程度であるから、補助者としての土工を積算する要はないと認められた。

 したがって、本件各工事についてコンプレッサの運転保守は1方当たり機械工1人によることとしてコンプレッサの運転保守労務費を積算したとすれば、積算額を約1億2500万円程度低減できたと認められた。

2 ずり鋼車転倒装置の運転保守労務費について

 上記23工事のうち道央自動車道虎杖浜トンネル工事ほか4工事(工事費総額124億3500万円)は、いずれもトンネルの掘削ずりをずり積込機によりずり鋼車に積み込み、これを機関車でけん引して坑外のずり置場まで運搬し、自走式又は固定式のずり鋼車転倒装置を用いて、ずりを取り卸すこととしている。そして、ずり鋼車転倒装置の運転保守労務費は積算要領により、1方当たり機械工1人を見込んで、5工事で総額3851万余円と算定していた。

 しかし、これらの工事に使用されるずり鋼車転倒装置を操作するには、特に免許等の資格を必要とせず、その操作は簡単であるばかりでなく、操作時間もわずかなものであり、一方、ずり鋼車をけん引する機関車の運転には運転手としてトンネル特殊工1人、助手としてトンネル作業員1人を充てることとしており、しかも、ずり鋼車を転倒するときは機関車を停車させるものであるから、機関車の運転手又は助手が転倒装置の運転を行うこととすれば、ずり鋼車転倒装置の運転に機械工(1方当たり1人)を見込む要はないと認められた。現に、転倒装置の操作の実態を調査したところ、機関車の助手が行っている状況であった。

 したがって、本件各工事についてずり鋼車転倒装置の運転操作は機関車の助手が行うこととすれば、前記ずり鋼車転倒装置の運転保守労務費約3800万円は積算の要がなかったと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では57年11月に積算要領を施工の実態に適合したものに改め、同月以降契約する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注1)  札幌建設局ほか6建設局 札幌、仙台、東京第一、東京第二、名古屋、大阪、広島各建設局

 (注2)  1方 トンネル工事のように掘削作業を1日当たり2交替又は3交替で連続して施工するときの1勤務単位のこと