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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費等の積算について


住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費等の積算について

 住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)が施行している住宅建築工事について検査したところ、次のとおり、予定価格の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

1 現場打ち鉄筋コンクリートぐいの施工費の積算について

 東京支社ほか2支社(注1) が昭和56年度中に施行している葛西沖団地第21住宅建築工事ほか33工事(工事費総額465億2130万円)は、中層又は高層の住宅を建設するもので、その基礎ぐいについてはいずれもリバースサーキュレーションドリル工法(注2) による現場打ち鉄筋コンクリートぐい(以下「リバースぐい」という。)を施工する設計となっており、公団が制定した「建築工事積算要領」(以下「積算要領」という。)により、上記34工事のリバースぐい合計1、668本分の施工費(穿(せん)孔掘削費、鉄筋加工組立費及びコンクリート打設費等)を総額22億9315万余円と積算していた。

 しかして、上記の積算についてみると、

(1)

 リバースぐい築造の作業日数の算定方法については、1本のくい築造が終了してから次のくい築造作業を開始するものと想定して、スタンドパイプ打込みから穿孔掘削、鉄筋かご建込み、コンクリート打設を経てスタンドパイプ引抜きまでのくい築造工程の各所要時間をそれぞれ算出し、これらを単純に合計した延べ時間を1日当たり作業時間で除して1本当たりの築造所要日数を算出し、これにくい本数を乗ずるなどして総作業日数を算定していた。そして、これを労務費及び機械供用損料等の積算の基礎としていた。

 しかし、公団の住宅建築工事現場においては、リバース掘削機1組に対し複数のクローラクレーン(うち1基はリバース掘削機による掘削の際掘削器具を支持するために使用される。)を使用し、リバース掘削機による掘削作業が施工されている間にリバース掘削機を使用しない鉄筋かご建込みなどの他の工程の作業が並行して実施されており、更に、近年ではクローラクレーンに比べて損料が安いリバース掘削機用の鋼製やぐらも使用されるようになっていることなどから、施工の実態を調査したところ、実績総作業時間に占める並行作業時間の割合は14%から36%(平均24%)となっていた。

(2)

 リバースぐい本体の鉄筋となる鉄筋かごは工事現場で棒鋼を溶接するなどして円筒形のかご状に製作するもので、その製作費については1t当たりの加工組立歩掛かりを鉄筋工3人とし、これに労務単価を乗ずるなどして積算していた。

 しかし、公団の住宅建築工事現場は、他団体の工事現場に比べて比較的広く、かつ、平たんで、鉄筋の加工組立てをくい築造箇所直近の、しかもゆとりのある場所で集中的に行うことができるなど施工条件が有利であり、能率的な施工ができることから、施工の実態を調査したところ、鉄筋工の歩掛かりは積算の歩掛かりの3分の1を下回っている状況となってた。

(3)

 リバース掘削機による穿孔掘削に先立って行うスタンドパイプ内の掘削は、ハンマグラブ(注3) によって施工することとし、その損料については、積算要領では建設省制定の「建設機械等損料算定表」を準用することになっており、これによって積算していた。

 しかし、上記ハンマグラブの損料は1日当たり標準運転時間5.5時間を基礎として算出されたもので、リバース工法におけるハンマグラブは打ち込まれた深さ5m程度のスタンドパイプ内の掘削だけに使用されるものであることから、施工の実態を調査したところ、1日当たり稼働時間は1時間に満たない状況であった。

上記(1)、(2)、(3)のほかリバースぐい築造工程における各作業時間及び作業の編成人員の積算等が施工の実態を上回っていたり、一方、コンクリート打設の際排除される泥水の処理に使用されている機械装置の損料及び運転経費等については積算要領に定めがないため積算漏れとなっていたりしていた。

 したがって、本件各工事のリバースぐいの施工費について、施工の実態に適合するよう積算したとすれば、積算額を約3億2900万円程度低減できたと認められた。

2 鉄骨の工場溶接費の積算について

 東京支社ほか4支社(注4) が56年度中に施行している葛西沖団地第2住宅建築工事ほか74工事(工事費総額711億4480万円)は、いずれも柱、梁(はり)等に鉄骨を使用して鉄骨・鉄筋コンクリート構造の高層住宅を建設するもので、その鉄骨についてはいずれも工場で溶接加工することになっており、積算要領により、使用鉄骨1t当たりの溶接延長に応じて定められた1m当たりの溶接工工数(主として0.025人から0.027人を適用)に地区ごとの溶接工の労務単価を秉ずるなどして溶接延長1m当たりの溶接単価を算定し、上記75工事の溶接総延長1,332,088.3mの工場溶接費を総額11億6874万余円と積算していた。

 しかして、鉄骨加工工場における溶接は電弧溶接(注5) により行われ、その作業形態は大別して手溶接、半自動溶接、自動溶接の3種であるが、積算要領に定められている溶接工数はおおむね手溶接80%、半自動溶接15%、自動溶接5%程度の作業割合の実績を集約した手溶接主体のものとなっていた。

 しかし、近年、この種の工場溶接作業は、従来の手溶接機に比べて高能率で経済的な半自動溶接機及び自動溶接機によるものが大部分を占めるようになっており、前記工事の作業形態について調査したところ、平均で手溶接15%、半自動溶接60%、自動溶接25%程度となっていて、他機関の建築工事積算資料においてもこれと同程度となっており、これらを総合した工数は前記積算の工数を相当下回っている状況であった。

 したがって、本件各工事の鉄骨の工場溶接費について、施工の実態に適合するよう積算したとすれば、積算額を約3億3300万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、57年11月に従前の積算要領を廃止し新たに建築工事積算基準及び同標準を制定して、リバースぐいの施工費及び鉄骨の工場溶接費の積算に関する部分を施工の実態に適合したものとし、同月以降契約する工事からこれらを適用することとする処置を講じた。

(注1) 東京支社ほか2支社 東京、関東、関西各支社
(注2) リバースサーキュレーションドリル工法 大口径掘削機による基礎ぐい工法の一種。掘削孔中の土砂を水とともにポンプで搬出し水を還流することにより円筒形の孔を掘削する工法で、かご状の鉄筋を建て込んでコンクリートを打設してくいを築造する。

(参考図)

(参考図)

(注3) ハンマグラブ  円筒形の孔を掘削する機具の一種で、重錘(おもり)と先端の細長いバケットが組み合わされており、ワイヤロープで吊り上げ、落下させることによって掘削する。
(注4) 東京支社ほか4支社  東京、関東、中部、関西、九州各支社
(注5)

電弧溶接  電気のアーク放電の際発する熱を利用して金属を溶接する方法で、使用する機械により手溶接、半自動溶接、自動溶接の3種に大別される。

(ア)  手溶接 溶接棒をホルダ−で保持して行う。
(イ)  半自動溶接 トーチを保持して行い、溶着金属はワイヤー状で自動供給される。
(ウ)  自動溶接 トーチ及びワイヤー供給装置が台車に取り付けられていて、この走行により行う。