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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第9 運輸省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

防波堤築造工事における上部コンクリートの海上運搬費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(2) 防波堤築造工事における上部コンクリートの海上運搬費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費
部局等の名称 第四港湾建設局、同志布志港工事事務所
工事名 志布志港(若浜地区)防波堤(沖)工事(第4次)ほか7工事
工事の概要 防波堤を築造するためケーソン上部工用の生コンクリートを海上運搬するなどの工事
工事費 総額1,522,000,000円
請負人 株式会社森山(清)組ほか7会社
契約 昭和57年6月〜58年3月 指名競争契約

 上記の各工事において、上部コンクリートの海上運搬費の積算(積算額2億5261万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億1000万円過大となっていた。
 このように、積算額が過大となっているのは、積算基準が制定された当時に比ベケーソン(注) が大型化し、上部コンクリートの打設量が多量となることから、作業船等が大型化していて作業能力が向上しているのに、これを積算に反映していなかったことによるもので、作業の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 運輸省では、防波堤築造工事を毎年多数施行しているが、このうち、上記部局が昭和57年度に契約し施行している防波堤築造工事8工事(工事費総額15億2200万円)について検査したところ、次のとおり、上部コンクリートの海上運搬費(クレーン付台船による投入費を含む。)の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記8工事は、志布志港若浜地区の沖合に防波堤の本体とするため据え付けたケーソン(1函約1,950tから2,390t計51函。総延長721.12m)の上部コンクリート工事として、生コンクリート総計31,927m3 運搬し打設するもので、施工は台船上に置き並べたバケット内に生コンクリートを積み込み引船により現場まで運搬し、これをクレーン付台船により投入する台船バケット方式によることとしている。そして、その海上運搬費の積算についてみると、同省港湾局制定の「港湾・空港請負工事積算基準(港湾)」(以下「積算基準」という。)に基づき、1日(6時間)当たりの海上運搬量を56m3 とし、その際の作業船の組み合わせは、クレーン付台船25t吊又は35t吊を1隻、引船180馬力又は250馬力を1隻又は2隻、台船200t積を2隻又は3隻とし、台船に積載するバケットは1隻当たり1.5m3 のもの6個計12個又は18個として運搬経費を算出し、これを上記56m3 で除して、1m3 当たりの運搬単価を6,441円50から9,964円67、運搬総量31,927m3 分で2億5261万余円と算定していた。

 しかしながら、本院において上記8工事の上部コンクリートの海上運搬作業の実態を調査したところ、同港の防波堤の本体となるケーソンは、1函が約1,950tから2,390tと大型となっていて、その上部に打設するコンクリート量も多量となることから、バケットや作業船の規格が大型化していて、バケットは5m3 程度の大容量のものが台船1隻に6個程度積載されており、作業船も100t吊の旋回起重機船や500t積の台船、500馬力の引船が使用され、1日(6時間)当たりの生コンクリートの運搬量は206m3 となっていて、積算基準を大幅に上回る状況となっていた。

 したがって、本件各工事の上部コンクリートの海上運搬費について、施工の実態を考慮して積算したとすれば、積算額を約1億1000万円程度低減できたと認められる。
 なお、本件各工事については別途各工事現場までの作業船の回航等に要する経費6518万余円を見込む要があるものである。

 上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、58年11月に上部コンクリート工事費の積算に関し「上部工(大型バケット方式)暫定運用基準」を定め、上部コンクリートの運搬の歩掛かりを施工の実態に適合したものとし、同月以降契約する同種工事から適用することとする処置を講じた。
 

ケーソン 防波堤工事では、所定の個数の鉄筋コンクリートの箱をあらかじめ製作し、これを逐次現場にえい航して沈下し、中に砂などを詰めて堤の主体とする工法が一般的に用いられている。この鉄筋コンクリート箱をケーソンという。